車は凶器
煽り運転男の記憶を読んでみたところ。私たちの車に対して執拗に煽り運転をやりまくったこの男は、最後は運転席から出てくるところだった私の真横に敢えて車を近距離で停めて扉をぶつけさせ、イチャモンをつけて被害者面をして更に絡みまくった上で賠償金を搾れるだけ搾り取るつもりだったらしい。
後ろからシートベルトを外しているのを確認してドアに手を掛けたところでがっとアクセルを踏んで真横に車を滑り込ませようとしていたのだが、何故かそのまま車が斜め前の方に暴走して塀に突っ込んだが。
タイミングがズレたら私が乗っている車のドアを引きちぎり、下手をしたら私が大怪我したかも知れなかったが、そうなったらさっさと逃げるつもりで、どこかの防犯カメラに写っていても問題ないように態々ナンバープレートも加工して数字を変えてある準備万端振りだった。
まあ、『何故か』は白龍さまが尻尾で車をペシっと打ち払ったからだけど。
流石白龍さま。
車体にも殆ど傷を付けず、運転手も死なない程度の勢いで車を払い除けられるなんて凄いな〜。
車相手の対処なんて練習する機会があったとも思えないが。まあ幻想界には車サイズの幻獣や魔物が多数居るらしいから、そう言うをあしらってきた経験が生きたのかね?
更に、ロクデナシのここ数分ではなくもっと前の記憶を読んでいったところ。なんとこの男、慰霊碑を壊したとかで悪霊に祟られたのではなく、過去に煽り運転とかで何人か死なせている。
ドライブレコーダーがない車を狙い、周囲の車もあまり居ない様な道を選んで煽りまくり、相手が車から降りる様子を見せたら今回やったみたいに態とドアにぶつかる位置に車を停めてイチャモンをつけまくって賠償金を踏んだくり、車から降りない場合は場所によっては相手が自損事故を起こす様に仕向けてきている。
元々はレーサー希望だったのが目が出なくて諦め、今はトラックの運転手をやっているのだが、仕事がない日はあちこち回っている間に見つけた目撃者や防犯カメラの少ない地域で被害者を選んで人生の不満に対する鬱憤を晴らしていたらしい。
当然のことながら、被害者の中には単に車が破損するだけではなく亡くなった人もいた。
そう言う死霊の何人かに祟られて更に判断力が劣化して、とうとう人目もそれなりにありそうな高速でまで煽り運転をやるようになったようだ。
クソだね。
取り敢えず。
今回の事故でむち打ち症になり、右腕の神経に支障が出たって事にしてこれ以上凶器である車の運転が出来ない様にしよう。神経に直接干渉するのだったら、意思誘導よりも恒久的に運動機能を阻害できる。精神を操れる黒魔術師って、その延長上なのか神経への干渉は出来るんだよねぇ。
それでも認知症を治したりは出来ないのだが。魂から記憶を読み取るのなら可能だけど、物理的に劣化した脳は治せない。
壊せても治せない、相変わらず残念な黒魔術師仕様だ。
それはさておき。
ついでに私らへの煽り運転は危険運転だったって事で通報して、警察がこいつのドライブレコーダーを確認する様に仕向けよう。
そう、このクソッタレ、自分のドライブレコーダーで今まで痛い目に合わせてきた人間の事故の場面とかを録画して、家で再生して相手の恐怖や絶望に満ちた顔を見て悦に浸っていたのだ。
家に保管してあるドライブレコーダーのSDカードの記録を警察が調べれば、過去の死亡事故に関して殺人として起訴出来るんじゃないかな?
今のSDカードに変えた後にも何件か自損事故を起こさせているから家宅捜索に踏み切る事由になると期待したい。
『碧〜。
こいつの首にむち打ち症っぽい症状と痣とかをつけてくれる?』
助手席から降りてこっちに寄ってきた碧に念話で頼む。
『いいよ〜。
適当に痣をつければ首の後遺症なんて交通事故のあるあるだからね。
ついでに頭痛持ちにしておく?』
こいつが私を殺そうとしたと思ったのか、碧もノリノリに応じてきた。
『だね。
白龍さま、天罰としてこいつが今まで車で起こしてきた悪事に関して隠せない様にして頂けます?
自分の腕を自慢したくなる様に意思誘導しておきますので、それで警察から色々と聞かれて過去の悪行がバレる流れになると思いますので』
『良かろう』
小さなサイズに戻った白龍さまが現れて応じた。
碧も運転席のそばに来て男の首筋に触れている。
さて。
私は碧が終わったら意思誘導を埋め込むのと、右腕の神経への干渉をしておこう。右腕が完全に動かなくして障害年金を貰えるようになったら業腹なので、そこまでではなく『神経での命令の伝達が不定期に上手くいかなくなる』程度に部分的に破損にしておく。これで運転はしにくくなるし、少なくともデリケートにハンドルを動かして煽り運転をしたり狙った相手が自損事故を起こすように仕向けるのは無理になる筈。
「この男を祟っている霊はどうする?
このままじゃあ調査の為に側に寄ってきた警官とかにも悪影響があるかも?」
碧が聞いてきた。
「あ〜。
一応恨んで祟っている相手は自分を害したこいつだってわかっている霊が多いと思うけど、ちょっと記憶や思考能力が劣化してきちゃってる霊も多いかぁ。
祓って昇天させてあげる方がいいかな」
こいつが墓穴掘りまくって自爆する姿を見るのは悪霊化した被害者の霊達にとって慰めになると思うけど、キリがいいところでちゃんと自力で昇天出来ない可能性の方が高そう。
後でこの男を態々探しにいって憑いている霊を昇天させるよりは、今ここでやっちゃう方が楽だよね。
「じゃあ、チャチャっとやっちゃうから、凛は警察とここの職員さんに連絡しておいてくれる?」
碧が頼んできた。
「了解」
まずは警察に連絡しよう。
サービスエリアの職員は警察の方から連絡してくれないかな?
お土産屋の人に通報しても、施設の責任者まで辿り着くのに時間が掛かりそうだからね。
警察から敷地内での事故に対処する人へ直接連絡してくれたら楽なんだけどな〜。




