プロローグ II
15歳で記憶と能力が覚醒した後も、私は普通の一般家庭に生まれたのだとずっと思っていた。
が。兄貴がうっかりスノボの最中に悪霊化した霊を鎮めるための慰霊碑を壊して祟られた時に、実は母方の曽祖母が京都の退魔師の旧家の庶子だったらしいと判明。
幼稚園児ぐらいの時に一度言われたらしいのだが、私は覚えていなかった。
もっと大きくなってから言ってくれれば良かったのに!と母に文句を言ったら、本当は中学生ぐらいの時にもう一度言うつもりだったのだが、兄貴の厨二病があまりにも酷かったので、言うのを躊躇ったそうだ。様子を見て、私が何か霊が視えるのに悩まされている様子でもあったら言う事にしていたらしい。
私は前世の記憶ごと覚醒したので悪霊に悩む様子を見せなかったから、先祖の特殊能力に関して言われず。お陰で、一般家庭の両親に自分が魔術師であるとは言えないよな〜とそっちをちょっと悩んでいた。
覚醒後にちょっと様子が変わったのは気付いていたらしいが、反抗期の一種だと思っていたそうだ。
その退魔師に憧れまくって痛々しい厨二病患者だったらしき兄貴だが、本人ではなく一緒にスノボで慰霊碑を壊してしまった彼女(と言うか、怜子さんが壊して祟られ、それが兄貴にも伝播したらしい)はそれで退魔師の才能が覚醒した。
碧の親戚で、兄貴や怜子さんと同じくウィンタースポーツ馬鹿で北海道に住む聖子さんに弟子入りしたので、近いうちに彼女も退魔師として働き始める筈。
ちなみに碧の一族は白龍さまを戦国時代の前から祀ってきた神官の一族で、碧パパは諏訪湖脇にある諏訪神社の宮司として働いている。
碧が退魔師として独り立ちする前は碧パパも頑張って退魔師として働いて神社の修繕費等を稼いでいたらしい。
その氏神神な白龍さまは、実は幻想界出身の龍種だ。
前世でも龍や竜が幻想界から異なる世界に繋がる境界門を通って姿を現す事があったが、地球は魔素が薄いので定期的に白龍さまの様な強力な存在が魔力を注いでメンテしないと境界門は消えてしまうらしい。お陰で最近では昔の様な人間社会から妖怪や妖精と見做される魔物や幻獣もほぼ地球には居なくなったとのこと。
龍の言う『最近』がどの程度の年数なのかは不明だが。
白龍さまは人間を遥かに超越した力を持つ龍ではあったものの神とは違う存在だったのだが、長年『氏神様』として人間から祀られる事で氏神としての権能が身に付き、今では己や自分が気に入った愛し子である碧を害そうとする相手には天罰として魔術や龍の力とは違った反撃を行える様になったらしい。
お陰で強力な白魔術師である碧に政府も退魔協会も手を出せないし、一緒に相棒として働く私もかなり守られている。
白龍さまが居なかったら、黒魔術師の能力を便利に使いたい退魔協会や政治家と対立して私はそのうち姿を隠して裏社会に暮らす羽目になった可能性が高いと思う。マジで碧との出会いはラッキーだった。
白龍さまが維持している境界門のある谷間は藤山家が神社の敷地の一部として守っており、白龍さまの結界で関係者以外が入れない様にしてある。
そしてその谷間(聖域と藤山家は呼んでいる)の雑草や石は魔素が濃厚に含まれるので、その雑草を使って不眠用の睡眠導入お守りや肩凝り用のお守りを私と碧が作って藤山家の諏訪神社で売ってもらっている。
ちなみに聖域の草を使った和紙は符用の紙として超一流だし、よもぎを前世の回復薬作成と同じ形で加工をすると劣化回復薬が出来上がった。
まあ、怪我の回復は碧に頼む方が早いし確実なので、基本的に劣化ポーションはスキン・ローションとして使っているが。
碧と私は税金対策も兼ねて退魔師の事務所として、『快適生活ラボ』と言う会社を設立している。
今、私と碧とでシェアしている元事故物件の部屋の家賃も一部は快適生活ラボの経費としている。更に、新しく開発した高級路線で1ヶ月ごとのサブスク契約で提供するアイピローや腰痛用クッションの材料集めや出荷の作業をするために月のうち1〜2週間ほど諏訪で過ごす際の費用もほぼ全て経費とする予定だ。
聖域の雑草は他にも念話の魔道具カードや変な人間を昏倒させる自衛用魔道具カード、虫除け用魔道具カードなどにも活用している。
一応マジックバッグもどきも白龍さまの爪の破片の一部を使わせて貰って完成させたのだが、自分の亜空間収納の方が使い勝手はいいので、マジックバッグもどきは殆ど使っていない。
ちなみに亜空間収納は、転生した事で時空魔術の適性が生えたのか、転生後に使える様になっていた。
まあ、収納量を増やすのにひたすら魔力を注ぎ込まなければいけないので、寒村時代からの全人生と今世で15歳で覚醒してからの10年弱を掛けてやっと旅行用大型トランクぐらいのサイズになった程度だ。
そんなこんなが私の背景とここ四年間の成果だ。先日ちょっとしたハプニングがあったものの無事に大学も卒業したので、これからは社会人としてフルタイムで働く。
まあ、出来るだけのんびりやっていくつもりだけどね〜。
ここまでが前作の纏めです。
次話から、退魔師・凛の活躍の話になる……筈!




