プロローグ
私の名前は長谷川 凛。
異世界の記憶を持つ、黒魔術師だ。
と言うか、正確には黒魔導師だった。
『魔導師』とは脳裏で魔力を込めて、何を求めるかに集中するだけで時間と魔力を掛ければ新しい魔法陣を作り上げられる知識と魔力のある魔術師。
魔法を活用して大陸一の国になった王国では世襲貴族と匹敵するようなエリートだった。
黒魔術師以外は。
黒魔術師と言うと語感は悪いが、別に悪事を働く魔術師という訳ではない。
魂や精神へ干渉する術に特化した適性があるのが黒魔術師。体への干渉や治療に特化した適性があるのが白魔術師。火や水、風や大地へ干渉する術に適性があるのが元素系魔術師と呼ばれたのだ。
そして残念な事に、黒魔術師は精神や死霊を含む魂への干渉が出来るためにその力は悪用しやすく、また悪用した時の被害も大きかった。
過去には小国を滅ぼしたような黒魔術師も存在したらしく『黒魔術師』と言えば『悪の魔術師』と言う印象があるぐらいだった。
つまり、社会として黒魔術師は危険であるという認識が一般的であり。そして黒魔術師の能力は制御できていれば権力者にとって便利だった。
結果として。過去に私が生まれた王国では全ての子供の適性を10歳までに確認し、黒魔術師の適性持ちには制約魔術を掛けた上で国の魔術学院で教育し、卒業した時点でさらに強い隷属に近いような自殺すら禁じる程の制約魔術で縛って王宮魔術師として王族にために働かせる仕組みになっていたのだ。
勿論、10歳になるより前に能力が発現した場合はその段階で家族から離されて制約魔術を掛けられた上で国の施設に入って国へ尽くすように育てられる。
つまり。
黒魔術師は『王宮魔術師』という名称の奴隷。
私が奴隷としてクソッタレな王族に命じられて色々と悪事をさせられたうちの一つが、古代文明の遺跡から発掘した古代文書を冒険者から『自発的に』献上させる事だった。そしてその研究も命じられていたのだが、その中にあった魔法陣の一つに刻まれていたのが、魂をリセットをせずに次の人生へと続けさせる転生の術だった。
古代文明の記憶を持つなどと主張する人間の話は王宮魔術師だった私も私の上司である筆頭王宮魔術師も聞いたこともなかったが。
命じられたのを良い事に時間と魔力を注ぎ込んで解読した魔法陣が完全な物かも不明だったが、次の人生である。つまりは今世を終わらせられるのだ。
なのでクソッタレな王族に命じられて弱者を踏み躙る手伝いをさせられるのに疲れ果てていた私は、『術を試すことは命じられた研究の範疇である』と自らに暗示することでまんまと自殺することに成功した。
実際に記憶を持って転生している事に気付いた時は驚いたが。
この魔法陣の効果の一つとして、15歳で前世の記憶が覚醒するのだが。なんと、これが1度ではなかった。
最初の転生はゴブリン。次はどこぞの辺境にある寒村。
そして今回は、現代日本。
魔力の元になる魔素が今までの人(?)生とは段違いに薄い世界なので、15歳までの常識として魔術師が存在しない世界なのだと思っていた。だから大学で退魔師で氏神である白龍さまの愛し子である藤山碧に出会ったのはとんでもなくラッキーなことだった。
あれがなければ、一生魔術師の力を隠して普通のOLをやっていたか、黒魔術師の力を活用して探偵でもやる事になっていたと思う。
碧に会ったことで退魔師と退魔協会が存在することが分かり、ちょうど一緒に仕事する相棒がいなくて不便な思いをしていた碧と組むことで良い感じに働けるようにもなった。
まあ、大学時代は学業優先ということで退魔協会からの依頼は主に週末とか長期休暇の時期だけに受けてたけど。
ちなみに、今世で悪霊や魔術師が存在しないと世間一般に信じられているのは、明治維新で欧米人に笑われてしまうような『迷信じみた古い体制の一部』と見做された退魔師の社会的地位が下がった事が大きい。
その上、第二次世界大戦後に日本を占領したGHQがキリスト教の布教を有利にするために退魔師や退魔協会の事を公にするのを強く抑止したのが追い討ちになり、戦後の混乱の中でいつの間にか退魔師の存在が社会の表から消えたらしい。
もっとも、キリスト教やイスラム教やユダヤ教のような海外のメジャーな一神教はどれも魔術師を弾圧する傾向が強く、一神教の国ではほぼ何処でも魔術師の存在は基本的に秘されているから、キリスト教布教の狙いは穿ち過ぎなのかも?
と言うことで15歳に覚醒するまでは魔術なんて無いと思っていた私だが、実は魔術はある。
でもあまり使い道がないよな〜とちょっと頭を抱えていたのだが、実は人の憎しみや絶望と言った穢れと恨みはいつの世も存在し、悪霊や呪詛と言った問題はそこそこ多いことが判明。
お陰で、大学を卒業したこれからは碧と2人で退魔師事務所を経営して社会人として生きていくことが出来そうだ。
上手くいくといいんだけどね〜。
新しいスタートだ!
前世の記憶持ちな凛と氏神さまな白龍さまの愛し子な碧の退魔師としての毎日を描く話です。
タイトルから想像できる様に、前作がございますので良かったら読んでみて下さい。
(一応今話と次話でざっと説明をするので読まなくても楽しめると思います)




