懲りるつもりがないのか。
『やはり幽霊屋敷でのパーティを行ったあと、参加者のほぼ全員が体調を崩して寝込みました。
屋敷と参加者の除霊をお願い出来ますでしょうか』
ハロウィンの当日、遠藤氏から連絡が入った。
幽霊屋敷でハロウィンパーティを! なんてアホな事を計画したおぼっちゃまは、参加者と一緒に見事に祟られたらしい。
と言うか、やはり遠藤氏(と言うか退魔協会自体?)はアホを事前的に助けるのでは無く、痛い目に遭わせてから事後的に助けることにしたんだねぇ。
考えてみたら、家だけで無く祟られた連中も除霊することになったら、最初の幽霊屋敷だけの依頼よりも報酬は高くなりそうだしね。
もしかしたら退魔協会側はそれを考えて『急な話すぎて、退魔師を見つけられませんでした』と対応したのかも。
まあ、ワンチャン、社会に出る前に甘ったれたおぼっちゃまの親に『経済的打撃のない失敗を一度味あわせる方が本人の為では?』と正面から説得した可能性もあるが。
以前の下半身がだらし無い息子に呪詛を掛けた政治家のおっさんみたいな親だったら、呪詛を掛けるよりお手軽な上(しかも適法!)、露骨に自業自得で痛い教訓がある愚行は学ぶモノが多いだろうと判断したのかもだし。
「幽霊屋敷の除霊は構いませんが、参加者のお祓いは全員をどこかに集めて下さいよ?
都内中をあちこち回って祓うのだったら他の人に頼んで下さい」
碧が応じる。
『……そうですね。
明日までにどこか一つの病院に纏めて収容するよう話しておきますから、今日は先に屋敷の方の除霊をお願い出来ますか?』
遠藤氏が言った。
「良いですよ。詳細を送って下さい」
どうやらこの依頼は2日掛かりになりそうだ。
「そう言えばさ、退魔協会にこれだけ大掛かりな依頼をする相手なら、依頼主は呪詛を知っていそうだけど。考えてみたらそう言う相手に『呪詛は実在します』って言い聞かせておいたら最初の一回はフリーパスっていうのを無くせないの?」
遠藤氏から送られてくるメールを待ちながら碧に尋ねる。
退魔協会へ依頼を頼むなら、その段階で『私は呪詛の存在を信じます』って誓約書を書かせても良いと思うんだが。
「残念ながら、除霊や呪詛返しを頼む時って『体調が最悪だった』とか、『体調が最悪な家族の心配で居ても立っても居られない状態だった』から呪詛が本当だなんて話はちゃんと聞いてなかったって抜け道があるのよ〜」
碧がちょっと残念そうに言った。
「あぁ、そう。
じゃあさ、一度呪詛を掛けられた人は呪詛が実在するって分かっているんだから、せめて呪詛返しの依頼をした人はフリーパス無しっていうのは?」
まあ、加害者は最初の一回はフリーパスでお咎め無しなのに、被害者になったらやり返せなくなるのってちょっと可哀想な気もするけど。
「呪詛だって言われたけど、本当は毒や病気なのに退魔師っていう名称の詐欺師が適当に腕を振ってよく効く解毒剤か抗生物質を知らぬ間に投与しただけだと思っていたって主張する人もいるらしいわ。
と言うか、非公開であろうと法律を作るようなお偉いさんは、折角法規制にねじ込んだ1回フリーパスな攻撃権を何があろうと失う気はないからね。
びっくりするような屁理屈をこねくり回してくるから無理よ。
他の連中だって、自分や自分の子がフリーパスを無くすのは嫌だからフリーパスの条件を狭めるのには断固として反対するらしいし」
アプリに届いた遠藤氏からのメールを開きながら碧が言った。
なるほど〜。
つまり国の上層部は呪詛でお互いを攻撃し合い、退魔協会はそれをキャンセルするために報酬をがっぽり貰いってことで、誰も真面目に呪詛を完全禁止する方向に動くつもりはないのか。
まあ、どうしようもないしある意味私の知った事じゃないから、良いけど。
取り敢えず、今日はその幽霊屋敷だね。
どうやら依頼主の先祖が愛人を囲っていた古い屋敷らしいが。
複数の悪霊がいまだに居るって一体何人そこに囲って死なせたんだろ??




