ハロウィンパーティですか
『朝早くからすいません、退魔協会の遠藤です。
実は至急で今日中に除霊が必要な依頼があるのですが、お願いする事は可能でしょうか?』
電話を受けた途端に、遠藤氏の声が流れてきた。
普段よりも余裕がないと言うか急いでいる感じだね〜。
まあ、何がなんでも今日中に除霊しなきゃいけないとなったら、私らがダメだったら他に誰かやれる退魔師を見つけなきゃだから、時間的制約は厳しいんだろう。
「え〜と、まずは依頼を教えて貰えます?」
碧が尋ねる。
今日中にって事はハロウィン関係じゃなさそうだね。
今年のハロウィンは週末だから、渋谷でまた何かやってくれと頼まれるにしてもまだ数日はある。
『実はとある御令息が大学の友人達と一緒にハロウィンのイベントとして、実家が所有している本物の幽霊屋敷でパーティを開こうとしているらしく。
週末では無く金曜日の晩に集まることになっているので、その前に屋敷を至急で除霊して欲しいと御令息の家から依頼を受けました。
昨晩のうちに調査員を派遣したところ、危険なレベルの悪霊が複数いる事が確認できたので、除霊をお願い出来ますか?』
遠藤氏が言った。
おいおい。
ハロウィンパーティをするから緊急依頼?
「折角本物でしかも不法侵入しなくて済む幽霊屋敷を使うことにしたのですから、そこでパーティをして悪霊の祟りを実地体験させる方が良くありませんか?
御令息と言われるような将来日本の経済界を動かすかも知れない人が、安全第一で愚行が及ぼす危険を知らずに成人してしまう方が不味いでしょう」
碧が指摘した。
だよね〜。
と言うか、親も甘やかしすぎじゃない?
殴ってでもやめさせるか、痛い目に遭わせるべきでしょう。
『……依頼を受けて頂けませんか?』
遠藤氏が溜め息を吐きながら確認してきた。
碧がこちらを見て頷いたので、私の方で断る。
「そうですね、ちょっと今日明日は忙しいので。
でも、なんでしたら金曜日の夜にパーティをして、翌日の土曜日の午後か日曜日に祟られた人を除霊しても構いませんよ?
なんだったら、そのパーティを手配している人にパーティ後に全員の宿泊場所を提供するよう説得しておいたら翌日全員直ぐに除霊出来ますし」
どんな悪霊でも、それこそ発狂して憑かれた本人が周囲の人間を包丁で切り付けたりしない限り誰も1日では死んだりしないだろう。
流石にヤバい悪霊がいると分かっているところに刃物は持って行かないよね?
退魔師を事前に雇うほど過保護な親だったら、そこら辺の管理も出来るだろうし。
『……そうですね、祟られてから祓う方が、後日の更なる愚行を防げるかも知れませんね。
とは言え、依頼は来ているので、もう少し対応出来る術師が居ないか、探してみますが。
もしも、誰も見つからなかった場合。本人達と幽霊屋敷の除霊を今週末にお願いしてもいいですか?』
遠藤氏がなにやら吹っ切れたような口調で聞いてきた。
「当然依頼の条件は確認しますが、一応今週末は空けておきますね」
碧が応じた。
『お願いします。
では失礼します』
あっさりそう言って、遠藤氏が電話を切った。
「自分ちの息子がアホで危険な事をやろうとしているのに、それを止めるのではなく先に祓っておこうとするなんて、親の教育方針がめっちゃ不味くない??」
そんなのが将来大企業の大株主とか取締役とかになったら、益々日本の将来が暗くなるじゃん。
と言うか、そんなアホな親だったら、子供が財産を受け継ぐ前に資産を食い潰しているかもだけど。
「だね〜。
まあ、遠藤さんが愛の鞭っぽいのを施す気になったみたいだから、これで少なくとも一つのアホ集団が悪霊の危険性を理解するようになるかも」
碧が笑いながら言った。
「だね〜。
遠藤氏も、馬鹿なお偉いさんの自業自得な緊急事態で依頼を押し込まれるのは、ウンザリしているみたいだったね」
もしかして、今回のアホなハロウィンパーティをやろうとしているのが世襲政治家のガキだったら……マジで痛い目に遭って世の中を舐めるのをやめてくれるといいなぁ。




