夢とハロウィン
諏訪から帰ってきて、玄関を開けようとしたら中から開いて、大きなキャリーケースを持った若い女性が二人、出てきた。
「え?!
あんた達、誰??
ウチで何をしていたの!?」
一瞬呆気に取られた後、問い詰める。
「え〜、ワタシ達、ミンシュクでここに泊まったあるよ〜。
ちゃんとオカネは払ったアルネ」
前の女性が訛りのある口調で答える。
「ふざけないで、ウチを民宿として貸し出すなんて合意してないわよ!
業者を捕まえるの、協力しなさい!!」
「イイよ〜。警察……」
ビー! ビー! ビー!
目が覚めた。
「夢か……」
マジで驚いた。
何か目が覚めても夢のびっくり仰天した思いがまだ残っている感じだ。最近はアラームが鳴る前に目覚めることが多いんだけど、昨晩ちょっと夜更かししたせいか今日は目覚ましで起こされた。お陰で夢がめっちゃ生々しく記憶に残っている。
ふらふらと台所の方へ水を取りに行ったら、碧が既に起きていた。
「どしたの?
なんか変な顔してるけど」
碧が聞いてきた。
「いやぁ、諏訪に行っている間にこの部屋が民宿業者に合鍵を作られて勝手に貸されてる夢をみて、ちょっとそのびっくりが残ってる感じで。
いつもはもっとずっと非現実的な夢だから、寝ている最中も夢だと分かっていて自分である程度内容の方向性を修正しながら夢みているんだけどねぇ。
今日のは突拍子がないけどちょっと現実的だったから、夢だと思ってなくてマジでびっくりした」
考えてみたら、部屋には留守番として白龍さまの眷属の炎華に、碧の使い魔のシロちゃんと私の使い魔のチュー助がいるんだから、変な人が家に入ってきたら即座に分かるし撃退される筈なんだけどね〜。
シロちゃんもチュー助も源之助の遊び相手として作った使い魔だが、もう源之助も子供でもなくなって落ち着いてきたので諏訪まで連れて行かなくてもいいかなということで留守番を任せているんだよね。
東京から諏訪じゃあ私らに念話で連絡するのは無理だろうが、少なくとも侵入者の撃退に協力はするだろうし、家に近づけば連絡出来る。
しかも炎華なら少なくとも白龍さまには連絡できるだろうし。
確認したことはないけど。本体は巨大な火の鳥(多分)な炎華だったら、侵入者の撃退も問題なく出来る筈。
あとで大騒ぎになるかもだけど。
「え〜? 家を勝手に民宿として使われていたって言うのだって十分非現実的じゃない??」
碧が首を傾げながら言った。
「いやぁ、普段はファンタジー物ばかり読んでいるせいか、基本的に私の夢ってファンタジーかSFっぽくて、絶対に現実ではあり得ない内容なんだよねぇ。
それが昨日は現代離婚がらみのざまぁ小説を何話か読んでたせいで、夢が現実路線になったっぽい?」
読んでいる話があそこまで夢に影響するとは思わなかったわ〜。
「現実の離婚モノのざまぁ小説を読んで、なんで部屋が乗っ取られて民宿利用される夢になるの??」
碧が首を傾げる。
「それは知らない。
夢だから、何か引っ掛かったことを呼び起こしていたんかもね〜」
ざまぁモノで、結婚生活の妻の地位を浮気相手の女に乗っ取られたっていうイメージから民宿利用で家を乗っ取られるって変換されたのかね?
自分が結婚していて夫を寝取られるって夢にはならないところが私らしいかも。
「そう言えば、凛って前世の夢とかってみるの?」
碧が冷蔵庫からパンを取り出しながら聞いてきた
「みないねぇ。
夢って脳の中に溜まった日中の考えの断片をクリアするような機能だって話だから、前世の行動や考えは今の脳ではしていないから夢にみないのかも?」
そう考えると、前世の記憶ってどこに残っているの??と言う話になるけど。
魂って記憶的な情報も記録しておけるんだねぇ。
突き詰めて考えると、不思議だわ。
まあ、それを言うなら脳の中でどうやって過去の考えや経験が記録されているのかも、十分ミステリーだけど。
「へぇぇ。
不思議〜。
そう言えば、もう直ぐハロウィンだけど。また何かそれ関係の仕事が来ると思う?」
取り出したパンをトースターに放り込みながら碧が聞いてきた。
「流石に呪師の連中も今更もう一度渋谷で集まったりはしないと思うけど。
まあ、『それを確認するために渋谷を歩き回ってくれ』ぐらいの事は退魔協会が言ってくるかもね〜」
誰も何も祓わないとなると、どの程度の報酬は出るのか疑問だが。
「今の時期の渋谷なんて、歩きたくないなぁ」
顔を顰めながら碧が言ったところで、電話が鳴った。
おっと。
またもや遠藤氏っぽいね。
ちょっと今日は早くない??
まだ朝食前だよ?




