残念〜
通り魔的生霊を目撃してから2日後の朝。碧のカリスマ祈祷師の日だったので受付役として飼い主に詳細を書いて貰っていたところで、ハネナガから念話が届いた。
『何やら変な生霊が現れた』
おっと。
「こちらの記入をお願いします」
カードを渡して頼む。
まあ、名前と電話番号とペットの名前・種類程度なんだけどね。
もっと詳しい情報はネットで申し込む際に入力させているから。
単に、こちらは何かがあってカリスマ祈祷師の活動情報をどこかに提出しなきゃいけなくなった時に渡す用のダミーと言うかおまけだ。
ウェブサイトの方で管理している詳細情報は誰にも何処にも出す予定はない。
ただまあ、ネット上の書き込みなんてオンラインの支払いも電話への確認連絡もないので、やろうと思ったらいくらでも情報をでっち上げられる。
支払いはニコニコ現金払いだから、こちらに自分の情報を正直に伝える気がないならそれはそれで勝手にすれば〜ってところだからね。
そうなるともしも何かの調査が入った場合(ないとは思うけど)に私らが適当にデータをでっち上げたと言われる可能性もあるかも?と心配になったので、実在を証明するためにせめて実筆で名前を書かせることにしているのだ。
ついでに、碧が治療している間の時間稼ぎになるし。
最初はノートを使っていたのだが、他の飼い主の名前や連絡先が見えてしまうので、一々上に厚紙を留めて読めないようにするよりも、最初から別々のカードに書かせてバインダーにでもあいうえお順でファイルすればいいだろうとやり方を変えた。
と言う事で、飼い主がカードに書き込んでいる間にハネナガに尋ねる。
『どんな感じ?』
『ウロウロしていて……あ、若い子供を突き飛ばしたな』
げ?!
慌てて視界を共有して状況を確認する。
何やら小さな子供が地面に倒れて泣いている。
側に母親らしき女性がいるから、手を繋いでいたか、母親が飛び出さないように注意していたかで子供が車道に出る前に止められたようだ。
良かった〜。
これって軽い子供なら弱い力でも押しやすいということで殺意マシマシのやったのか、母親が見張っているから怖い思いをしても多分死なないだろうと言う考えに基づくのか。
微妙だなぁ。
ハネナガが見ている間に、生霊(若い女の子っぽい)が子供に向かって舌を出してあっかんべーをしていたと思ったら、突風を吹かせて丁寧に横分けにしていた中年男性の髪の毛を反対向きに掻き上げて禿げている部分を露出させ、飛んでいった。
ハネナガが徐に飛び立って後をつけていく。
生霊の年齢があの姿通りだとしたら、入院患者かなぁ。
まあ、授業中に爆睡している可能性もゼロではないが、
授業だったら先生に指されて目覚めるなんて事もあるから、入院患者の方が本人を探しやすいんだけど。
「これで良いですか?」
ハネナガが追跡している生霊を視ていたら、飼い主から声を掛けられてカードを渡された。
おっと。
さっと見直して、名前がネットでの申し込みと同じなのを確認してからそのままケースにしまって引き出しにしまう。
「はい、これで結構です。
もう直ぐ祈祷も終わると思います」
不安なのか、色々と猫の可愛さや健康問題の心労などを話し始めた飼い主の言葉に相槌をうっていく。
う〜ん、生霊追跡がどうなったのか確認できない。
だけどまあ、後で分かるし。今は猫の肉球と尻尾の愛らしさに関する議論に参加しておくか。
「確かにご機嫌にピンと立っている尻尾の先がふりっと丸くなるのは愛らしいですけど、肉球とあの脚の先の可愛さには負けますよ〜」
「確かにあの肉球も可愛いんだけど、屈んで靴紐を結んでいる時なんかに尻尾ですりっと顔を撫でられると、もう感無量じゃないですか!」
飼い主が反論する。
「あ〜、確かにすりっとやられると可愛いですよねぇ。
でも、あの脚でフミフミされるのも、なんかこう震えがくるぐらい可愛いし」
もっとも、源之助がフミフミするのは基本的に碧だけどね。
私は餌を出す時にちょっとお愛想程度に尻尾ですりっと撫でられる程度かな〜。
『あ、逃げられた』
猫の何が一番可愛いかを話していたら、ハネナガの念話が届いた。
ちっ。
残念〜。
何処で見失ったのか、後で確認しよう。




