怖いよねぇ
「そう言えば、先日の黒井さんたち。
呪師の連絡先を辿ったけどやっぱ辿り着けなかったんだって」
午後の符作成を終え、運動を兼ねてウォーキングとクレープのキッチンカーへ行って帰宅した私に碧が教えてくれた。
最初に来た頃はあのクレープ屋のキッチンカーはかなりの行列だったのに、最近はあまり並んで無いんだよなぁ。
近所の人たちは飽きてしまったのだろうか?
今でもそれなりに買っている人はいる事はいるんだけどねぇ。でも、誰も並んでいない時も見かけるようになった。
場所を変えると最初の頃の様に行列が出来るなら、近いうちにここら辺に来なくなるかも。
また半年後ぐらいに戻ってきてくれると良いんだけど。
それはさておき。
「あ、やっぱダメだったんだ?
まあ、いかにも捨て垢っぽいメールアドレスで相談して、合意したら現金と対象者の髪の毛や爪を私書箱へ送るなんて、あの菜穂子さんも良くぞやったね?
確かにダメ元な詐欺かもと藁でも縋る思いで依頼したって言えそうな感じではあるよね〜」
もっと金持ちな歴史がある後ろ暗い家系だったらしっかりとした呪師との繋がりがあるのかもだけど、そこそこ成功しているとは言え一般人寄りな黒井さんのところは追跡予防にかなりブラックボックス化してあると言うか、呪師との距離がある取引だった。
依頼のキャンセル手続きをした後、次にやったら重犯罪扱いだし、呪師自身は捜査対象になるから接触する手伝いを捜査当局から求められると言った時に依頼方法を聞いたのだが、ある意味良くぞこれでお金を払ったね??と呆れた。
「なんかね〜。
最近、呪師が減ったからあれで嫌なら仕事はいくらでも他にもあるって強気に言われたらしいよ。
田端さん曰く最近の呪詛はそんなのが多くて、呪詛返しする前に辿っても呪師に辿りつかないケースが殆どになったんだって」
碧が言った。
そう言えば、最初の頃は呪詛を辿って呪師を探すって依頼もあったよね?
だけど考えてみたら、最近は辿ると毎回実際に依頼した人に辿り着くようになってるわ、確かに。
「何年か前に、ハロウィンでの業界集会モドキの時に碧が一網打尽しちゃったから、完全に売り手市場になってるんかも?」
あれで呪詛が日本から無くなるかと思ったらそれは無かったが、呪師達の自己防衛本能がオーバードライブ状態になって、絶対に捕まらないようにめっちゃ用心深くなったのかな?
まあ、以前ネットでプリントできる呪詛を売り出すなんて言う薄利多売をやらかした連中は弱いけど膨大な数の呪詛返しを受けて全滅したらしいけど。
ネットで金を払ったらできる呪詛なんて斬新な試みだったけど、販売した自分が呪詛返しの対象になるんじゃあ、やらない方が無難だよね。
「日本の呪師が減っても、それこそ大陸からどんどん流れ込んでくるかと思ったけど、折角の売り手市場だからって事でかなり強気に呪師側が自分の身を守る方向で商談してるみたいね。
まあ、注文している側も下手に警察に聞かれて答えたせいで後で報復を受けるような情報は知りたく無いだろうし。呪詛返しの対象を自分の代わりに呪師にやってもらうのを受け入れて貰えないレベルじゃあねぇ。
情報を当局側に出したらどんな報復を受けるか分かったもんじゃないんだから、『現在の連絡先を知らない』と言える状況は依頼主側に取っても都合が良いんでしょう」
碧が言った。
「それに今の世の中だったら呪詛じゃなくてもネットでの中傷とか、人を傷付ける手段はいくらでもあるからねぇ。
AIを使ってウィルスを作ったりするのも簡単になったらしいし。
お陰でパスワードは絶対に使い回しちゃいけないんだろうけど、一々覚えてらんね〜って事で適当にタブレットに難しいの生成させてそれに覚えさせているんだけど、あれってタブレットのパスワードアプリから情報漏洩したら、終わってるよねぇ」
怖すぎる。
タブレットや携帯のパスワードキーパーって指紋でロックしているけど、冬なんかに指紋が擦り切れた時用に暗証番号でも開けられるんだよねぇ。
そうしたら、恋人とか家族だったら暗証番号を全部盗めちゃう可能性はかなり高い。
家族はまだしも、恋人なんか下手したら別れる時にごっそり報復でネット注文されるとか、銀行からお金を抜き出されるとかされちゃいかねなくて、恐怖だわ〜。
携帯を1日確保できたら、やれちゃう悪事は途轍もない規模になりそう。
紙に書いたパスワードを引き出しに入れておくのも典型的なダメダメアクションだけど、携帯に覚えさせておくのだってかなりリスキーだよねぇ。
どうすりゃ良いんだろ?




