効き過ぎるのも問題かなぁ
「ひゃっほ〜〜!!」
ジェットコースターが下に向かって落ちて行くのをワクワクしながら覗き込み、思わず歓声をあげて楽しむ。
ストレス緩和の符を使わなかった最初の一回は……かなりガチガチに体が固くなるぐらい嫌だった。だが符に魔力を通したらもう一度ジェットコースターに乗るのが特に嫌ではなくなり、乗っている最中に高スピードで動き回っているのも純粋に楽しい!
世の中のジェットコースター好きな連中って、こんな感覚でやっていたのか〜。
マジで理解できないと思っていたが、日常生活には無いスリルとスピード感を楽しめて、確かにお金を払って乗る価値がありそう。
これだったら、バンジージャンプでも楽しめそうだ。
……やり始めたら、そのうちプロに頼まずに自分で適当にロープを足に結びつけてジャンプするとか言ったアホな事をやりかねない気も薄っすらするので、手を出す気は無いけど。
恐怖心なしにアドレナリンの分泌を楽しめる符なんて、アドレナリンジャンキーを作り出しちゃう精神的な麻薬に近いかも。
ヤバイね〜。
「どうだった?」
二周目のジェットコースターライドを終わり、降りたところで碧が尋ねてきた。
「いやぁ、自分で作った符ながら、効果が凄いわ〜。
あれだけ怖くて金の無駄だと思ったジェットコースターが、符を使うとスリル満載のレジャーになった!」
とは言え、最初の緊張で背中とか首の周りが緊張でガチガチになったし冷や汗もかいたので、現時点ではちょっと不快だけど。
「そんなに違うんだ?
凄いね。
子供とか友人に付き合ってジェットコースターに乗る羽目になる高所恐怖症な人に提供出来たら、凄く喜ばれそう」
碧が笑いながらコメントした。
「ジェットコースター乗り場の横で、『恐怖を忘れて純粋に楽しめる様になれます!』って看板を出して一回千円でやったりしてね〜。
まあ、ジェットコースターの値段が5割増しになっちゃうし、恐怖を感じていることを認めなきゃだし、誰も買わないだろうけど。
それに、買われて効果があるなんてバレたらヤバイ」
本当に恐怖を消す符があるなんて情報がネットで拡散したりしたら、自爆テロを考える様な組織や、兵士を数字とだけ考えて使い捨てする様な専横国家の権力者による誘拐・監禁・強制労働へマジで一直線だよね。
白龍さまの天罰ディフェンスがあるにしても、無意味なリスクを犯す必要はない。
私が強制労働されなくても、遊園地で売った符が転売されてテロに悪用されたりしたら悔やんでも悔やみきれないし。
「予定通り温泉の方にも行く?」
碧が聞いてきた。
「行こう!!」
涼しくなってきたから、冷や汗で濡れたシャツが肌寒く感じるから着替えたいし。
「でも真面目な話、考えてみたらこれってちょっと効果が劇的すぎて危険かも。
それこそ自爆テロをやり易くなるレベルで効果がある符なんて、会員制のサイトだろうと売り出したら危険だよね」
基本的に快適生活ラボの商品を買っているのは、仕事が忙し過ぎるちょっと社畜傾向のあるオフィスワーカーが多いと思う。でも、そんな人達だって恐怖が無くなったら、キレた時に何をするかは微妙に不明だからね。
別に倫理観とか価値観が狂うわけじゃあないから、悪事がバレる事に関する恐怖感がなくなっても犯罪に突っ走るってことはない筈だけど、善意でストレス満載な人に譲ってあげて、その人が司法の対する恐怖が無くなったからと誰かを刺したりしたら困る。
刺さなくても、うっかりネットとかで話題にされてもヤバイし。
「そうだねぇ。
プラセボだなんて言えない、露骨に分かるレベルで精神に働き掛けて効果がある符って言うのは麻薬扱いされそう。そんでもって、調べても薬効成分なんか無いって分かったら今度はそれはそれで危険だって事で問題視されそうだし。
プラセボよりほんの少しマシって程度まで、効果を絞った方がいいかも」
碧が頷きながら、エレベーターのボタンを押した。
温泉なのに上の方のあるってちょっと不思議だよね〜。
まあ、地下じゃあちょっと雰囲気が悪いし、1階は普通の店や遊園地の施設で場所を取られているから、上の方の階までパイプでお湯を運ぶ方が経済的なんだろうけど。
考えてみたら、どうせ何百か何千メートルも下の地下から温泉の湯を汲み出しているのだ。
6階分ぐらい更に引き上げても、誤差の範囲内だよね。
さて。
温泉はさておき。どうやって符の効果を下げるかな〜。




