これもストレスだった。
「ジェットコースターに乗りに行かない?」
ストレス緩和に修正した魔法陣を和紙に書き出した私は、まずは自分で効果を試してみることにした。
精神的なストレスは現在の生活ではほぼ感じてないけど、恐怖軽減の効果が出るかをジェットコースターで試したら良いんじゃないかと思うんだよね。
一応、恐怖を多少軽減できたらストレスにも多少は効くのではと言う事で。ストレスに関しては別途テストするにしてもさ。
「ジェットコースター?」
碧が目を丸くした。
「一応恐怖がベースなストレスを軽減する符になった筈だから、恐怖自体も少しは減らす事である程度は実効性を試せると思うんだよね。
バンジージャンプよりはジェットコースターの方がお手軽だと思わない?」
考えてみたらジェットコースターってあまり好きじゃないから、乗りに行くと考えるだけで私にとってはストレスだから、符の本来の効果も確認できるかも?
「お手軽だけど、私は別にジェットコースターってそれ程怖くはないんだよね〜。
でもまあ、ドキドキするのは事実だけど。
あのドキドキ感が無くなっちゃうなら、ちょっと残念かも?」
碧が少し首を傾げながら言った。
今までああ言うのに誘われるたびに、ジェットコースターが好きな人って理解を超える〜と密かに思っていたんだけど、碧も実はそう言う連中の一人だったの?!
「恐怖でもストレスでもないスリルも、恐怖扱いで軽減されるのか実験の一環として試してみよう。
一応ドキドキだって落下への恐怖に基づく筈だし。
水道橋のそばのあそこでいい?」
本格的な遊園地に行こうと思ったら入園料やら電車賃やら掛かるからね。
水道橋までの電車賃とアトラクション利用料だけで済むあそこが一番お手軽だろう。
適当に美味しそうなレストランに行きか帰りかに行っても良いし。
ついでにあそこの温泉に入るのもありかも?
「そうね。
だけど考えてみたら、符の効果が1ヶ月間程度続くか確認するために、30日間連続でジェットコースターに乗りに行くの?」
碧がちょっと微妙な表情で聞いてきた。
「面倒だしそれは嫌だね〜。
第一、1ヶ月間毎日ストレス軽減が必要な会社なんて、絶対に辞めるべきだと思うし」
パワハラに遭っていて、毎日魔法陣を使うストレス軽減が必要なんだったら……そんな職場は辞めるか、少なくとも人事にチクるかはするべきだろう。
元々、突発的なプレゼンとか資格試験とかの本番用のと考えていた符なのだ。
継続的に1ヶ月使える様にするのはなんか違う気がする。
この紋様に聖域の雑草を付けて、本当に1ヶ月効果が持続するのかも不明だし。
元々の使用にしたって、戦闘時に使うものだった。前世の魔法陣は自力で魔力を流す形だったから魔力切れは起きにくかったが。
まあ、盾や剣の素材強化と一緒にどさくさ紛れに恐怖軽減もやっていただけなので、どの程度の魔力を消費していたのかは不明なんだよね。
アイピローや不眠用の符の様に、眠りたい時に眠らせ、睡眠による疲労回復の補助と言う体の自然の働きを促進するだけの機能とは違うのだ。
必要な魔力が多くなっていても不思議はない。
それはさておき。
どうやって恐怖軽減機能を連日確認するか。
どこか、人目につかない屋上で柵の上にでも登ろうとしてみるかな?
実際に登らなくても、多分恐怖で手足が強張るのでそれの軽減の確認は出来るだろう。
中学の時に友達と忍び込んだ校舎の屋上では、手足が恐怖で強張ってどうしても柵には登れなかった。今でも似た様な効果はあると思うが、どこの屋上に出られるかが問題かな。
「そう言えば、かなり前に呪師を探す依頼でそいつの家に忍び込んだ時、碧がチャチャっと鍵を開けていた気がするけど、このマンションの屋上にもこっそり出られるかな?」
ここだって5階建てなのだ。
中学の時の校舎とほぼ同じぐらいの高さがあるよね?
「あ〜。
まあ、こう言うところの屋上に出る鍵なんて適当な安物だろうから、可能かな?
大家さんに出会っちゃったら気不味いけど」
碧がちょっと考えてから答えた。
「大丈夫!
そっちは私に任せて!」
大家さん夫婦の動きはクルミに見張らせておけばわかるし、どうしても避けられなければ認識阻害なり意思誘導なりでどうとでもなる。
「オッケー。
じゃあ、ジェットコースターは無し?」
碧がちょっと残念そうに聞いた。
「……取り敢えず、まずは一回ジェットコースターで使ってみよう」
碧にこれから暫く屋上へ出るのに協力して貰うんだし。
先に楽しみがあっても良いよね〜。




