緊張は適度な方が良いよね
大学時代の初年度にそこそこ楽しくワイワイガヤガヤしていたサークルの先輩である八幡先輩に久しぶりに会う事になった。
「久しぶりです!
最近は会社とか、私生活とか、どうですか?」
ラノベ生活クラブはラノベの世界の技術の検証とか再現をしてみようと言うようなラノベ好きが集まるサークルだったが、設立から年数が経っていると検証できる実験も数が限られてきたし、サークル活動に何を求めるかも大分と人によって違ってくるようになって、結局三年目ぐらいからは殆ど顔を出さなくなったが。
初年度が一番楽しかったなぁ。
あそこで碧に会ったので、私のライフイベント的にはめっちゃ大きな変革点と言っていいだろう。
あのサークルに入った頃に色々と親切にしてくれた八幡先輩が何やらウチの近くの会社に訪問する予定があるとかで、その前にランチを一緒に食べないかと今日は誘われたのだ。
「長谷川さんも藤山さんもお久しぶり〜!
二人で会社を始めたんだって〜?
凄いわね。
私の方もやっとクライアントに訪問して色々と提案したり意見を聞いたり出来るようになったのよ〜。
今日はクライアントのお偉いさんの前でプレゼンすることになっているから、緊張で昼食を食べられるか少し自信がないけど」
八幡さんが私らに手を振って近付いて来ながら言った。
「あれ、お偉いさん相手に重要なプレゼンを一人でするんですか?」
言った言わないとかやらかし防止の為に、こう言う時って最低でも2人1組で動くのかと思っていたけど。
それともICレコーダーで言動を全部記録しておくのかね?
でも、録音するのって相手に承諾を得なくちゃいけないんじゃなかったっけ?
まあ、言った言わないで争う場合なんかは相手が嘘をついた事の証明になるから、何も言わずに録音しても極端に問題はないのかもだけど。
「一緒に訪問する先輩は午前中は別のクライアントのところに行かなきゃいけなくてね。
午後一にクライアントの建物のそばで落ち合う約束をしているの」
八幡先輩が言った。
うわ〜。
それ、午前中の予定がずれ込んでないと良いけど。
なんか八幡先輩の顔がちょっと緊張で青白い感じだし、手先も少し震えてるっぽい。これでその職場の先輩が遅れるとか、遅れそうになるって連絡が入るような想定外な事態になったらますます緊張が酷いことになりそう。
「そう言う緊張するようなプレゼンとかって多いんですか?」
予約しておいた店に入りながら、碧が八幡先輩に尋ねる。
「う〜ん、なんかこう、最初はクライアントと話すだけでも緊張して、それに慣れたと思ったらあっちの課長と話したりすることになってやっぱ緊張する様になり、やっとそれにもそれなりに慣れてきたと思ったら今度は本社で部長クラスの本当のお偉いさんにプレゼンしなきゃいけないって事で緊張する羽目になり。
毎日頑張って働いて経験を積んで成長している筈なのに、どんどんハードルが上がっている印象でいつまで経っても緊張と縁が切れない感じね」
ちょっと溜め息を吐きながら席に座り、八幡先輩がメニューを開いた。
「まあ、ある程度は緊張がある方がピシッとして更に成長するのかも?」
八幡先輩がこうもお偉いさんに緊張するタイプだったとは驚きだが。
サークルでワイワイ楽しむ時とは状況が違うからかな。
「そうねぇ。
そうだと良いんだけど」
ちょっと溜め息を吐きながら八幡先輩がメニューをテーブルに置いた
どうやらオーダーが決まったかな?
まあ、緊張するとそれだけアドレナリンとか色んなホルモンが出て能力アップする……かもだから、緊張し過ぎてパニックにさえならなければ、適度な緊張は仕事のパフォーマンスにプラスな効果があるでしょう。
多分。
緊張し過ぎて声が上ずったり人の話が耳に入って来なかったりしたら、ダメだけど。
昼食を食べて、気軽な雑談でも緊張が緩和されなくて手が震え続けるようだったら、別れる前に少し意思誘導で緊張を緩和させておくかな〜。
……考えてみたら、新商品として緊張緩和の符を作れたらそれなりに需要があるかも。
兵士用の恐怖緩和の魔法陣は知っているので、あれを少し改造したらマイルドな緊張を含めたストレス緩和な符にならないかな?
帰ったら作れないか、試してみよう。
どうやってそれをテストするかは微妙に不明だけど。




