どうするかねぇ
「ダイエット効果のある何かを作ったらめっちゃ売れるかもだけど、変な使い方されたら危険だからねぇ」
来年の新商品を考えようと碧と話し合っていて、碧が溜め息を吐きながら一番売れそうな商品に関してあっさりダメ出しした。
「やっぱ危険?」
まあ、体の新陳代謝を上げるとか、栄養分の吸収力を下げるとか、どちらもやり過ぎたらちょっと危険そうではあるよねぇ。
「繰り返し何度も何度も使うのを止める機能の付け方が分からないから。
確実に毎日使っても1ヶ月保つようにしようと思ったら、やっぱ合計60回ぐらいは使えるぐらいの聖域の雑草を入れなきゃでしょ?
そうなると、それこそ毎回食事のたびに使って3週間近く使えちゃうから、使い始めるタイミング次第では6週間連続で使えるかもじゃない。
6週間、極端に栄養分を吸収しないとか、新陳代謝を上げたままにするって絶対体に良くないわよ」
碧が指摘した。
栄養過多なライフスタイルな人が新陳代謝を上げるだけなら大丈夫かなって気もするけど。だが、りんごダイエットとかしてちゃんと栄養のある食事を摂っていない人がやったら、体が脂肪だけでなく筋肉まで栄養分として燃やして最後には飢餓状態になりかねないよねぇ。
「紹介制だから一人紹介して、その人からも符をゲットしたらマジで餓死するところまでやれちゃう可能性もあるから、やめた方がいいか」
単にちょっと痩せ過ぎる程度で済むならいいけど、拒食症的な病的に痩せなきゃと思い込んでいる人が、『効果がある』とどこかから聞きつけてなんとか紹介する人を見つけて会員になってダイエット用の品を入手したら、マジで危険だよね。
もっとも、拒食症の人は下手したら普通に死んでしまうらしいから、亡くなったとしても碧の符が原因とは限らないけどさ。それでも誰か使用者が亡くなったなんて知ったら碧は気に病むだろう。
「ある意味、碧謹製のダイエット用品を購入するには私と定期的の面談して危険なほどの強迫観念がないことを確認するぐらいな流れにしないと、ダメだよねぇ。
だけどそんな面倒な事をするのはごめんだから、やっぱボツだね〜」
そこまで手間暇かける意味はない。
ある意味、拒食症な人の家族から私が雇われて『痩せなきゃいけない』と言う強迫観念を意思誘導で緩和させる方が世のため人の為になると思うが、普通の大卒じゃあそんな事をやりますと言っても客が来ないだろう。何らかの理由で頼まれて上手くいったとしても、それが口コミで変に話が広まって全国から客が来ても困る。
「それこそ、凛の方こそ食欲を軽減させる符とかないの?
もしくは食べ始めたら比較的すぐに満腹感を感じやすくなるとか」
碧が提案してくる。
「面と向かって会うんだったら満腹中枢を刺激するのは難しくないけど、そんな事をする符は知らないんだよねぇ」
現代みたいに食事に困らないけど太るのはみっともないという社会的通念のある社会じゃなかったからなぁ。
魔術師だったら魔力を使えば十分カロリーを消費できたし、魔力がないような庶民は日々の食事を満足できるレベルで食べるだけで精一杯なのが大多数で、過食で太るのは至難の業というか、そこまでいったら成功の証って感じだったし。
何もベースがないところから魔法陣を作ろうと思ったらかなりの魔力と時間が必要となるから、費用対効果的にやる価値はないと思うし、面倒。
「中々難しいね」
碧が溜め息を吐く。
「こう、モフモフで符を中に挟めるようなレッグウォーマーを使って、それに血流アップな符を入れたらどうかな?
多少は浮腫解消効果があるだろうし、足先の冷えとかにも効くと思わない?」
浮腫解消も足の冷え対策も、喜ぶ人は多いと思う。
「そうねぇ。
ちょっと試してみるかな?
藤山家に伝わるちょっと血流が良くなる符とモフモフで暖かいレッグウォーマーを組み合わせたら実際に効果があるか、適当に妊娠中な知り合いに試してもらおうか。
怜子さんにも送ってみても良いかもね」
碧が頷きながら言った。
確かに。
「それこそ、美帆さんに産婦人科の知り合いを紹介して貰って、テスターになっても貰ったらどう?」
「そんな事したら、今後ずっとその産婦人科の患者に提供し続けなきゃいけなくなるわよ。
親戚で妊娠している人がいないか探す方が無難だと思う」
碧が顔を顰めて指摘した。
確かに。
『テスターになって貰う』という借りを作ったら、金を出すから売ってくれと頼まれた際に断りにくいよね。
「私の方はどうするかなぁ〜。
単に収入が欲しいって話だったら、それこそ亜空間収納の符を退魔協会経由で売っても良いけど、お金の問題じゃあないからねぇ」
そもそも、符を描いて売るより、普通に依頼をガンガン受ける方がお金になるだろう。
退魔協会から独立した収入源をもしもの時の為に欲しいのに、退魔協会経由で売るんじゃああまり意味がないんだよねぇ。
悩ましい。




