形をどうするか
「ストレス緩和用の符……と言うか、そう言う符を忍ばせた何かを快適生活ラボの私からの新商品とするのってどうかな?」
昼食後に八幡先輩と別れて家に戻りながら、碧に相談してみた。
「ストレス緩和できる符なんてあるの?!
あったら現代日本でめっちゃ需要がありそう」
碧が目を丸くして聞き返して来た。
「まあ、ちょっと恐怖を薄める事でリラックスと言うか緊張を和らげる程度なんで、嫌がらせとかから来るストレスにはあまり効果はないかも」
元々、戦場で恐怖に我を忘れて暴走したり逃げ出したりしないようにするための魔法陣だったのだ。
全く恐怖を感じずにアホな突撃とかをされても困るので、効果はそれほど強くはされていない。
ちゃんと落ち着いて敵の弱点を観察できるようになるとか、敵前逃亡したら後で捕まって縛り首だと理解できるだけの思考力を取り戻すとか言った程度の効果であって、恐怖そのものを打ち消す訳ではないと聞いている。
「ストレスって恐怖なのかな?」
碧がちょっと首を傾げながら聞き返す。
「こう、偉い人の前でプレゼンするのに緊張するのは、失敗する事への恐怖が大元じゃない?
パワハラ上司に無茶振りされた場合も、その上司が怖いから人事部にチクれないんだと思うし。
まあ、企業内でパワハラを通報したら上から報復人事を喰らう可能性もあるみたいだから、本人に対する恐怖というよりも会社組織の理不尽さに対する恐怖なのかもだけど」
というか、パワハラ上司の肩を持つような会社だったらさっさと辞めて別の会社に転職した方が良いだろう。
パワハラに付き合って身体を壊すとか鬱病になるとかする方が、会社を辞めて転職するよりも最終的な結果は悲惨になる。
だけど転職という未知な将来への恐れも、会社を見切る動きを止める効果があるんだろうねぇ。
まあ、そうは言っても恐れっていうのは人間の生存本能の一部であって、場合によっては無謀な行動を思いとどまらせてくれる効果もあるんだけどさ。
ただまあ、ブラック企業に留まっても明るい将来は無いんじゃないかな?
「でもさ、そんなストレス解消というか恐怖緩和なグッズなんてサブスクで必要?
ずっとそんなのが必要な状況に留まっている事自体が間違いだと思うけど」
碧が指摘した。
「確かに。
まあ、プレゼンとか資格試験とか、何かストレスが跳ね上がるイベントがある時に単発で買えばという感じでラインナップに足したらどうかな?
大体1ヶ月で効果が薄れるから、毎月のように緊張するプレゼンがあるなら定期購入を、年に一度の資格試験とか用だったらその時に単発でってことで」
こう、ストレス解消用のお守りもどきっぽい感じに作り上げられたら、知り合いで資格試験を受けるとかストレス過多な状況で働いている人にあげてもいいかもだし。
「まあ、そうだね、
ちなみに、どんな形にするの?
プレゼンとか試験に持っていける形にしようと思ったら、クッションはダメだよね」
碧が指摘する。
「そうなんだよねぇ。
それが問題。
汗拭きタオルっぽいのも符を中に入れるのが難しいし、クッションは絶対に持っていけないし、どうするかなぁ」
ポケットに入れておけるとか、服に留められる程度のサイズじゃないと、厳しいよねぇ。
「それって身に付けてなきゃダメなの?」
碧が尋ねる。
「どうだろう。
前世のは、兵士が持っている盾や剣に魔力を通して強化すると効果が出るようなタイプが多かったから、手元にない状態で効果が持続するという設計では無かったんじゃないかなぁ?」
単純に恐怖を打ち消すという効果を、もう少し普通のストレスも若干緩和する効果に変えたいから多少は魔法陣を改造してみるつもりだけど、手に握ってなくても効果が感じられるような形で長い持続時間はなかなか厳しいなぁ。
「う〜ん、だったら、小さなボールみたいなので握って緊張緩和するストレスボールとか言うのがあるじゃん?
あんな感じに偽装したら?」
碧が提案した。
確かに?
ストラップに出来るサイズにしたら、普段から持ち歩けるし、良いかも?




