世襲かぁ。
『お世話になっております、退魔協会の遠藤です』
毎度お馴染みの遠藤氏の声が電話から流れてきた。
「こんにちは〜」
碧が軽い感じで答える。
『実はとある県議会議員が呪詛に掛けられまして。
以前にも呪われて、有名な神社で厄祓いをしたら呪詛は返せたものの、親しい人間にそれが転嫁されたようでして。
先日、再度似たような呪詛を受けたので調べて欲しいと退魔協会へ調査依頼が来て確認したところ、転嫁付きでした。なので今回こそはしっかり大元の方へ返すのと、2度目なので誰が呪っているかを調べて欲しいと言う依頼が来ているのですが、お受け願えますか?』
遠藤氏が言ってきた。
「政治家で2度も呪われる程恨まれているなら、そのまま返さずにおく方が世のためなのでは?」
碧がドライに提案した。
まあ、政治家だからこそ金があってウチらが断っても別の退魔師が受けるまで依頼報酬を釣り上げそうだが。
政治家だと聞くと悪徳政治家なんだろうな〜と思うが、もしかしたら清廉で裏金で既存権益側に味方しないから呪われた可能性もあるしね。
『どちらにせよ、頑として呪詛を放置するつもりは無いそうですから』
遠藤氏が碧のコメントに直接は応じずに答えた。
「ちなみに、どんな呪詛なんです?」
症状だけでも聞いておきたいかな。
『……男性機能に障害が出る呪いです』
遠藤氏が一瞬躊躇してから、答えた。
もしかして、時間が空いていて都合のつく黒魔術師が他に居ないのかな?
あまり依頼主の情報を教えてくれない事が多いんだけど、妙に今回はあっさり教えたね。ちょっと女性退魔師に頼むのもどうかと思われる内容だけど。
まあ、政治家って聞いた時点でこちらがちょっと引いちゃって、出来れば断りたいと思っているのが伝わったのかもだけど。
なんかこう、世襲政治家なんて居ない方がいいと庶民出身な私としては思うから、男性機能が死んだままでも良くない?
どうしても子供が欲しい年代だったら、外科手術的に精子を取り出して体外受精させればと提案したい。
政治家なんて下が元気だと変に浮気をするとか、セクハラするのが多そう。
考えてみたら、不能になるとセクハラも止めるのかな?
それとも女性も尻とか肩に触れたくなるのは男の本能で、それを最終的な活動まで追求出来なくても辞めないのだろうか。
『どうする?』
碧が念話で聞いてきた。
『政治家なんて接触しても碌なことはない気がするんだけど。
まともな政治家だったら。男性機能がダメになっちゃっても平気じゃない?』
呪われるぐらい何かをやっているか成し遂げているなら、既に子供はいる年齢じゃない?
だとしたら、不能のままでも良さげな気はするね〜。
まあ、女性の更年期障害と同じように男性も急に不能になったら男性ホルモンが狂って更年期障害もどきになるかも?
でもそれだったら最近は中々いい漢方薬もあるらしいし。
ちょっと可哀想かもだけど、浮気とかして雑誌にすっぱ抜かれた不祥事に関して無駄に議会とかの時間が潰されるより、呪われたままの方が良くない?
幸い、日常生活や寿命には支障がない呪いっぽいし。
『まあねぇ。
ただ、断ったのが後でどこからか情報が漏れて恨まれたら面倒かも?』
碧が指摘した。
天罰ディフェンスがあるんだから実際に私らに物理的な害が及ぶような報復は出来ないだろうけど、嫌がらせはできるかもだね。
『まあ、政治家だからって悪人であるとは限らないし、一応被害者な筈だから依頼は受けるか。
変に碧にちょっかい出したら天罰を受けるよって警告しないでおいたら、ヤバいタイプの政治家だったらそんなのが一人脱落するのは世の為になるかもだし』
私の返事に碧が頷いた。
「分かりました、受けましょう。
ちなみにどなたです?
どうせ会えば分かるので、今のうちに教えて下さい」
碧が遠藤氏に告げた。
『浅谷裕嗣県議員です』
聞いた事ないな。
碧が遠藤氏と依頼の詳細を話し合っている間にタブレットで調べたところ、世襲政治家で親は国会議員で閣僚もやった事がある大物。
そこそこの数の記事や掲示板の書き込みで、今までに何度も浮気やセクハラを揉み消してきたのではないかと書かれている。
過去に弄んで捨てた女から呪われてるのかな?
あっさり2回も呪われる程ガードが甘いんじゃあ、親が引退した後に国会議員としてやっていけるのか不明だけどね〜。




