憎まれっ子世に憚る
多少は雨が降ったものの、特に問題なく東京に帰れた私たちは真面目に符を描きながら1日を過ごしていた。
社会人になったしと言うことで、依頼が入っていない時は朝は9時から2時間、午後も2時から2時間は基本的に符を描くのに費やす事にしている。
流石に9時5時でフルに働かなくても良いよねってことで、必要な分だけ符を作れそうだったら基本的に1日4時間で済ませることに決めた。
その際には既存の符を描くのだけではなく、新しい符の開発をしてもいいよねと言う話にもなっている。
取り敢えず毎日そこそこ真面目に符を描いていた場合、どのくらい快適生活ラボで売るアイピローやクッションの数を増やせそうかも今年1年掛けて確認するつもりだ。
聖域の雑草を入れてラミネートしなければ、符自体は聖域の石とかと一緒に箱へ入れておけばそれなりに保つし、なんだったら溜まったのを聖域に置いておけば良いしね。
と言う事で今日も頑張って符を描いていたのだが、ちょっと飽きてきたので先日怜子さんに渡したお守りのサブスク版は可能なのか、気になったので碧に聞いてみた。
「そう言えばさ、むくみ解消のお守りって少し効果を強めて快適生活ラボで売り出せないかな?
むくみもデスクワーカーの仇敵じゃん?
気のせいでなく、本当に対処できるグッズが入手できたら喜ぶ人も多いと思うんだよね〜」
「う〜ん、むくみ解消のお守りは少し血流とリンパの流れをよくする紋様なんだよね。
ご先祖様の誰かが見つけたらしくて藤山家に伝わっていたんだけど、これをどうやったら効果をあげられるか微妙に不明だし、効果を上げたにしても、一般人が納得いくような形で売り出すのが難しくない?
マッサージ機に付けて売るなんて事にしたら、なんで3ヶ月しか効果が続かないのか説明がつかないし」
碧が指摘した。
確かに?
「お守りなら論理的説明がなくても『なんとなく効いてるかも』程度で受け入れられるけど、確かに普通の健康グッズを買ったらむくみが見事に消えるのに原因が不明だと怪しまれるか。
クッションの上の足を乗せたらむくみが解消されますっていうのでも、それこそ同じサイズのクッションを使ってなんで同じ効果が出ないんだって突っ込みが来そうだね」
腰痛や肩こりでも、1ヶ月ごとに買い換えるサブスクスタイルなのもある意味かなり苦しいもんねぇ。
名目上は中に入れている、意識できないぐらいに仄かだけど体にしっかり働きかけるハーブの香りのお陰って事にしてあるけど、足のむくみが鼻から吸う香りにどう影響されるの??ってちょっと突っ込みどころ満載過ぎるかな?
まあそれを言うなら、肩こりはまだしも腰痛だって怪しいところだけど。
「それに、サブスクはやっぱ色々と手間がかかるから、お守り程度の方が楽で良いっしょ。
サブスク用の製造にどの位余裕があるか、微妙に不明だしね。
特級になったせいか思ったよりも退魔協会からの依頼が来てないけど、そのうち増えるかも?」
碧が指摘した。
「確かにねぇ。
呪師の数がかなり減ったことで呪詛が減ったんだろうと考えると、そのうちまた増えてくるよねぇ」
憎い相手や都合の悪い競争相手へ呪詛を掛けたいと言う需要は、いつの世になっても減らないだろう。
そうなると……現存の呪師が弟子を取るなり、他の国の裏社会から『金になる仕事が沢山ある』と呪師が渡航してくるなり、なんらかの流れで呪詛をかける人数はそのうち増えるだろう。
「って言うかさぁ。
変な呪詛を掛けるなら、誰かアメリカや中国やロシアのトップを呪い殺してくれればいいのに。
いや、殺さなくていいから、公務に就けなくなるようにしてくれれば人類のために多大な貢献をした事になるんじゃない?」
まあ、中国のトップはまだ現時点では直接はそれほど多数の人が死ぬ原因にはなってないかもだけど。
ロシアもアメリカも、どっちのトップもでっち上げな理由で戦争を始めて、思うように戦況が進まなくても諦めずにひたすら自国と相手国の兵士や一般市民を殺しまくっているんだから、マジで迷惑。
お陰で燃料や食材や化学製品等がどんどん値上がりしているんだから、マジでやめて欲しい。
中国も数年以内に戦争を始めそうだから、予防的にアレを排除する方が後から振り返ったら世のため人のためって事になりそう。
「憎まれっ子世に憚るっていうからねぇ。
今まで裏で手を回してライバルとか邪魔な政治家とかを排除してきた人たちだから、自衛には人並外れて注意を払ってるんじゃない?」
碧が溜め息を吐きながら言った。
確かにねぇ。
「おっと」
電話が鳴った。




