新婚旅行祝い
「なんかさぁ、AI用のデータセンターを作るために世界中で投資が集中し過ぎててAIがポシャったらヤバいって前から新聞に出てたけど、更に最近はデータセンターを作ると電気代が上がるから住民が建設に反対するんだって〜。
そう考えると、AIって電気代は高くなるし、ホワイトカラーの労働者の仕事は奪うし、下手したら世界が破滅するかもだしで、メリットよりデメリットの方が多くない??」
符作りにちょっと飽きて手に取ったタブレットで新聞の記事を読んで、思わず溜め息が漏れた。
私達は東京にいる分には炎華のおかげでエアコン無しで部屋の温度が快適に保たれるのでまだマシだけど、それでも電気代が上がるとテレビとかを見るのも微妙な心境になる。
CMやっている間、テレビ消したいけど消したらCMがいつ終わるのか分からない〜みたいなケチな事をつい考えちゃう。
普通の家庭だったらエアコンの電気代がマジでのし掛かってくるだろうから、データセンター建設に反対したくなる気持ちもわかるわ〜。
「だねぇ。
AIを開発した人って、『出来たら便利そう』って事で考え始めたんだろうけど、突き詰めたら人類を破滅に追い込むとか、そうじゃなくても失業率を上げるだろうぐらいな事は簡単に想像できただろうに、なんで開発しちゃったんだろうね?」
碧がちょっと溜め息を吐きながら応じる。
退魔師業界は絶対にAIに駆逐される事は無いけど、大学の同期なんかは就職活動中も悲壮なぐらいマジで『どの業界なら、どんなスキルなら、AIのせいでクビになる心配をしなくて済むか』って真剣に議論してたからねぇ。
まあ、10年前ですらAIがこうも普通の職場の人員削減に繋がるなんて想像されてなかったのだ。だから今から色々と考えても、20年後にどうなっているかの予想が当たるかどうかなんて……サイコロを転がすのと同じかそれ以下な確率だろうね〜。
「ある意味、核兵器の開発と同じなんじゃない?
開発できる理論が発表された、開発出来そう、ちょっと考えるだけ。
そのうち実際にスポンサーが付いて理論だけじゃ無くなってきて、『これが実現したら人が大量に死ぬかも』となっても、『自分達が開発しなくても敵対的な陣営が開発するかもだから一方的にやられない為にもこっちでも開発しなきゃ』ってことで開発競争に突入して、世界を何十回も滅ぼせるだけの核兵器を作っちゃう結果になったんでしょ」
前世の場合はヤバい死霊使いや悪の魔術師なんかが世界とまで言わなくても国を滅ぼしそうになった事(実際に滅ぼした事も)が何度かあったみたいだけど、少なくともそんな危険な技術を複数の国が競って開発なんかはしていなかった。
一国を滅ぼせそうなぐらい危険な魔術師って基本的に黒魔術師か白魔術師だったんだけど、何故か黒魔術師だけ厳しく制約を科されることになったんだよね〜。
そんでもって、属人的な脅威だから暗殺という手段がかなり効果があったお陰で、国は滅びても世界は滅びなかったのは歴史的にも証明されてた。
その点、核兵器もAIも、一人誰かを殺せば危険が消える話じゃ無いからねぇ。
なんとも怖い。
核兵器はまだしも、AIは便利ではあるんだけどさ。
「本当に、現時点ぐらいの機能で止めてくれれば良いんだけど。
中国とアメリカで競っている限り、止まらないだろうね」
碧が溜め息を吐きながら言った。
「と言うか、たとえ中国とアメリカがもっと仲良くしていたとしても。軍事利用出来ちゃう時点で、『開発はここまでにしましょう』って世界中の国で合意しようがどこもかしこもこっそり影では開発を続けるよね」
表立って大々的にやらなければデータセンターの数は極端には増えず、電気代が上がらないかもだけど。
まあ、どうしようもない人類のチキンレースのことは、考えてもしょうがない。
「そう言えば話は変わるけど、浮腫解消のお守りってあるんだっけ?」
来月に向けた今月分のアイピロー用の符を描き終えているので、不眠用のお守りを描こうとタブレットを置いて和紙に手を伸ばしながらふと碧に尋ねる。
「あるよ〜。
そうだね、お守りだったら郵便でも送れるし、取り敢えず一つ怜子さんに渡して、3ヶ月後ぐらいにもう一つ郵送しようか」
碧が言った。
「ありがとね。
黒魔術系だとあまり妊婦や赤ちゃんに使うに良さげなのって、残念ながら思い浮かばないんだよねぇ」
夜泣きで疲れたらアイピローでぐっと一休みすれば良いだろう。
もしも怜子さんが諏訪神社で気付いて買うなら止めないけど、不眠用のお守りを渡すのは微妙に危険そうだからね。
ついつい、泣き止まない子供に使おうなんてなっちゃったら不味いでしょう。
アイピローだったらサイズの問題もあるから、赤ちゃんには使えないと思うんだよね。
まあ、実際には顔の上に載せれば起動はすると思うけど。
固定できないから、載せてふっと寝ついてくれたら外すって事ならそれはそれで良いのかも?
まあ、兄貴と二人がかりなのだ。
どちらかが面倒を見ている間にもう一方がアイピローを使ってパワーナップすれば良いでしょう。
取り敢えず、新婚旅行祝い(?)は碧の浮腫解消のお守りってことにしよう。
幸い雨も止んだし、今晩兄貴達と夕食を食べて、明日は普通に東京に帰れそうだ。
これで取り敢えず幕間的なこの章は終わりにします。
明日はお休みにしますが、明後日からまた宜しくお願いします!




