気をつけよう
「藤山一族の子供って聖域で出来るだけ時間を過ごして魔素を沢山吸収する様にしたりしてるの?」
霊泉をじっくり楽しみ、聖子さんが兄貴達(と言うか、兄貴はオマケでメインは怜子さん)を諏訪にいる藤山一族や親しい術師に紹介しに行ったので、私たちは自分たちの部屋に戻った。その際に、ふと気になって碧に尋ねる。
「能力が発現して、最初に基本的な術を習う時期は聖域に来る事が多いかな〜。
やっぱ聖域で鍛錬すると何とは無しに術をやり易いし、霊力の回復も早い気がするからね。
それに、自然現象系の術だったら家でやると色々と問題が起きる事もあるし」
碧が応じた。
確かに。
白魔術と黒魔術は物理的には目立つ問題は起きないにしても、元素系の術は普通の家の中でやったらかなりまずいだろう。
今時の日本の家や庭じゃあそれほど空いたスペースはないだろうし。
弟子を何人も取る様な旧家だったらお屋敷みたいなところに住んでいて、練習用の道場(?)みたいな場所があるかもだが、藤山一族はそこそこ普通に暮らしているからね。
道場持ちの家は少ない(皆無?)だろう。
本家である神社の裏の家はそれなりに大きいけど、氏子さん達がちょくちょく来るから退魔の術の練習には向いていないだろうし。
「確かに。
つうか、旧家じゃない普通の術師が弟子を取る場合ってどうするの?」
黒魔術師や白魔術師系は良いけど、元素系魔術師の場合、最終的には魔力をほぼ無駄遣いせず(つまり炎や風といった現象を起こすのに浪費せず)悪霊を消せるらしいが、最初は自然現象的な効果が出まくる筈。
基本的に退魔師って前世の魔術師と同じで、元素系術師は自然現象を起こすのが一番簡単な魔力の使い方でしょう。鍛錬を重ねれば、悪霊退治に特化した魔力の使い方を覚えるようだけど。
「退魔協会の建物に訓練用の部屋があるし、同じ元素系の術師だったら弟子のうっかりをちゃんとコントロールして打ち消せるんだって。
まあ、一々打ち消さない方が楽だから、ウチの一族なんかは力の使い方が全然ダメダメな初期の頃は聖域で鍛錬する事が多いんだけど。
諏訪からじゃあ甲府の退魔協会支部はちょっと遠いからね〜」
碧が言った。
おや。甲府に退魔協会の支部があるんだ? この近辺の依頼でも東京の遠藤氏から電話がくるから、東京、大阪と京都ぐらいしか支部が無いのかと思っていた。
それよりも!
「え、じゃあ私らが草刈りに聖域を使っているのって誰かの迷惑になってる??」
誰とも会って無いって事は、白龍さまの愛し子の碧の為の皆が遠慮してるの?
私らは実質月に数日しか聖域を使ってないから日程調整はそれ程難しくは無いとは思うけど、そんな話は来てない。
「う〜ん、今ってちょうど鍛錬を始めたばかりな年齢の子が居ないんだよね。
それに私たちは週末は諏訪に居ない事が多いでしょ?
もう少し年がいった半人前ぐらいの子が思い立ってちょっと練習したくなった時も、聖域に来るのは学校がない週末が多いから、バッティングする事がなかったんじゃ無いかな?
草を刈ってるのは、多分歩き易くなったって感謝されると思うし」
碧が言った。
なるほど。
確かに従兄弟や従姉妹とかの年齢層って、それなりに纏まるよね。
翔くんなんかは碧の世代の子供では一番若い年齢層なのかも。
考えてみたら、今まで会った碧の親戚って私らよりもう少し年上な人が多かったから。
「そっか。
まあ、聖域を使う人だったら私が使い魔に頼んで塵取りと熊手を動かして草を集めててもそれほど驚かないよね」
一般人は白龍さまの結界があって入れない筈だし。
「いや、驚くとは思うよ?
使い魔の技術なんて日本の退魔師業界でほぼ失われてるから。
でもまあ、話を広めたりはしないだろうから、大丈夫でしょ」
碧が言った。
そっかぁ。
やっぱ藤山一族でも使い魔に手伝いを頼むのは普通じゃ無いか。まあ、前にもそんなことを聞いた気はする。
聖域で使い魔に手伝いを頼む時は、入り口に探知結界を張って人が来たら分かる様にしようかな。
碧のご両親に遭難者探し用の使い魔を紹介するのは良いけど、珍しい技術として他の一族の人にも色々と頼まれたら面倒だし、そのうち話が漏れて退魔協会から変に目を付けられても困る。
今でもそれなりに碧の相棒で、推定黒魔術師として注目されてそうなのに、更に失われた技術(と言うか異世界の技術なんだけどね〜)を持っているなんて知られたら、面倒この上ないだろう。
気をつけよう。
自衛は重要だね。




