どうなんだろ?
「そう言えば、除霊って妊娠何ヶ月ぐらいまでやっていました?」
怜子さんが美帆さんに尋ねた。
そこら辺は事前に聖子さんにも相談しているだろうけど、やっぱ実体験をした先輩に確認したいんだろうね。
前世では魔術師の戦闘は物理的な暴力も伴うことが多かったから妊娠初期は大事を取っていたが、ある程度は胎児が育ったらちょっとの怪我だったら白魔術師に何とかしてもらえるので、安定期に入ってからはそこまで神経質になっていなかった気がする。
まあ、平民出身と貴族家の魔術師で扱いがかなり違うという話で、私が知っていたのは平時に戦闘的なことを任されていた平民寄りな魔術師の状況だったが。
こちらの世界では白魔術師による回復はそう簡単に受けられるものじゃないし、退魔師が戦う相手は悪霊なので前世の戦いとはまた違う。
そこら辺、どうなるんだろ?
自分で結婚して子供を産む事になるとはあまり想定していないが、知っておいて損はないので怜子さんと美帆さんの会話に耳を澄ませる。
「悪霊は無垢な赤子が苦手らしくて、除霊をしに行っても危険を感じたことはないし、体が問題なく動く間は妊娠していても依頼を受けるのに問題はほぼ無いわ。
勿論、慰霊碑とかにたどり着く為に山歩きをしなきゃいけない様な依頼は当然ダメだけど。
ただ、妊娠中もだし生まれた後もだけど、ホルモンバランスの変化のせいか精神的に不安定になる時があるから、そう言う時期は依頼は受けない方が良いわね」
美帆さんが応じる。
あ〜。
産後鬱って夜泣きによる睡眠不足や肉体的な疲労や赤子がいる為に出掛けにくくなることによる孤立感とかいった原因があるんだろうと思っていたが、ホルモンバランスのブレのせいもあるのか。
あれって妊娠中もなんだね。
妊婦や授乳中だとホルモンバランスをどうにかする薬も安易に飲めないだろうから、問題が起きても耐えるしかないのか〜。
そんな時に変に不幸な悪霊の除霊なんてしようとしたら、精神的に引き摺られて危険かもだね。
だから美帆さんはそれなりにゆったりと産休と育休的な依頼ストップをしていたのかな?
単にお金に困らないから長めに休んでいただけじゃ無いんだね。
「ちなみに、樹くんは霊力持ちっぽい?
この霊泉に浸かって育つと霊力が上がるとか、あるのかな?」
聖子さんが興味深げに美帆さんに尋ねた。
魔力が多いところで妊婦が過ごしたり、年少時を過ごすと魔術師の才能が発現しやすいかって議論は前世でも良くあったね〜。
魔術師同士の子供だと魔術師が生まれる確率が高いと言われていたけど、魔術師の家系と言われるほど有名な家だと、不自然なほどに子供の死亡や養子としての受け入れや除籍が多かった。
涙ぐましい(?)そんな努力の一環として、魔力の多い地域に住むって言うのもあったが……でも、一番魔力が濃厚なのって魔物が多い辺境地帯だからねぇ。
そんなところに住むのは流石に嫌なのか、それよりは愛人を無闇矢鱈と増やして庶子を産ませ、才能持ちと分かったら正妻の子としてしれっと才能が無かった子と入れ替えるなんて事をよくやっていると聞いた。
現世でも愛人を増やすのは旧家でやっている様だが、現世に魔素が多い地域なんて殆どないから、育つ際の環境が子供の才能に関係あるかの議論はあまり無かったんだろうなぁ。
とは言え、藤山一族だったら聖域で遊んでいればかなり魔素に晒されるけど。
一族の中に術師が多いのってそのせいなのか、それとも術師が生まれやすい一族で性格が良いから白龍さまに好かれているのか。
卵と鶏問題かも?
「まだ分からないわね〜。
でも、霊泉とは言ってもそこまで霊気が強い訳でも無いし、なる様になるんじゃない?」
美帆さんがのほほんと答える。
私はともかく、怜子さんがいるから聖域の話はしないのかな?
弟子で将来的には聖子さんの相棒になる予定とは言え、やっぱ藤山家の聖域と白龍さまの事はまだ言ってない様だね。
ま、言う必要も特には無いしね〜。
考えてみたら、藤山家って一族の子供を聖域に定期的に連れていってるのかな?
私らが草刈りさせて貰う時には特に誰とも会わないけど。




