そう言えば?
「浄化の風かぁ。
格好いいよねぇ」
碧がちょっと羨ましそうに言った。
「でしょ〜?
白骨化した遺体に残っていて絶対に動かない霊を相手するなら浄化の炎もありかもだけど、川辺みたいな限られたところじゃ無いと炎系は実質使えないからね〜。
やっぱ風が一番よ!」
聖子さんが胸を張りながら言った。
「水だって、準備しておいた水を水筒にでも入れて持っていけば、浄化の雨っぽいのが出来るわよ〜。
まあ、広範囲をカバーするのは無理だけど」
美帆さんが口を出す。
確認してなかったけど、美帆さんは水系の元素への適性が高い術師なのかな?
「アホな幹部なんかは炎術が一番攻撃力が高いとか言って風を馬鹿にするけど、実用性は風が一番なのよ」
聖子さんが怜子さんに言って聞かせた。
前世でも、戦闘だったら炎系が一番攻撃力が高いって事で炎系の術が得意な魔術師が何かと大きな顔をしてたなぁ。
風は索敵や暗殺に向いているって事でそこそこ重宝されていたし、土と水はそれこそ日常生活や農業に有効だったから華はないにしてもそれなりに大切にされていた。
白魔術は回復師として何よりも重視されていたし。
結局、考えてみると実質黒魔術師以外はそれなりに大切にされていたんだよね。
現世じゃあ白魔術師は回復師として活躍し難い上の微妙に退魔協会から退魔に関しては舐められているっぽい。退魔協会の上層部がアホな規制に合意しちゃったせいで、白魔術師の活躍の場は大分と減ってしまった。
反対に、黒魔術師は転嫁付き呪詛の返しで需要がぐっと増えて、下手したら今ではどの適性よりも退魔協会的には欲しがられているかも?
まあ、他の使い道でも便利だから、昔から魔術師は見つかれば時の権力者に活用されていただろうけど。
「浄化の風って範囲指定なしで流して除霊するの?
凄く疲れない?」
碧が聖子さんに尋ねる。
「範囲指定はするわよ?
だけど、結界を張ってその中をきっちり浄化するのよりも緩い感じにやるから、より広い範囲を少ない魔力で霊的存在を探しつつ清められるの。
ただまあ、風に乗せて力を広げるから、封鎖された壁の中とかはアクセス出来ないんで、建物の中とかでは使い難いわね」
聖子さんが説明した。
昔風な隙間風満載な家だったらまだしも、現代式の気密性が高い家屋じゃ使い勝手が悪いんだろうね。
一応どれだけ気密性が高い建物でも24時間換気の換気口はあるだろうけど。あれって元々外からの空気は入れても冷たい風を通さない仕組みになっているだろうから、いざとなればある程度は使えても、細心の注意なり力技的に膨大な魔力なりが必要になりそう。
でも、大抵の部屋は必要最低限の換気はしているだろうから、風系魔術師だったらこっそり盗聴するのに向いてそう。
まあ、現代だったら魔術師を使うよりも盗聴器を中に仕込む方が楽で安上がりだろうけど。
「今まで習ってきた除霊の術とか、実際に見習いとしてやってきたのは悪霊が誰かに取り憑いているとか慰霊碑の中に居るとかだったんですけど、動き回っている悪霊の除霊なんて言うのもあるんですね」
怜子さんが感心した様に言った。
「まあ、そう言うのは滅多には居ないわよ〜?
霊って体というか何かに宿っていないと離散しちゃいやすいから。
体から抜け出してきている生き霊ならまだしも、既に亡くなってしまっていて体との繋がりが切れている死霊だったら、大抵は何かに宿っていないとそのうち存在を維持できなくなるのか消えちゃうらしいから。
だからこそ、霊的に質量の少ない猫やネズミに取り憑いているとかそのままふわふわ浮遊している霊だったら、浄化の風で清められるんだけど」
聖子さんがあっさりと怜子さんのコメントを否定した。
そう言えば、そうだよねぇ。
あの贄役の人たちは離れと言う物理的存在に縛られていたのが、その拘束が緩んだから出ていってしまったが、フラフラしていたらそのうち消えちゃうよね。
そう考えると、あの霊たちはそのうち水源地の側の岩とか大木にでも取り憑くのかな?
選り好みしすぎて消えちゃったら、それはそれで哀しいけど解決策と言えなくは無い。
どのくらい時間が掛かるかは不明だけど。
とばっちりを喰らった醸造所が潰れる前に物事が解決すると良いんだけどねぇ。
給水車からの水じゃあ色々と不都合はありそう。




