浄化の風?!
「そう言えば、悪霊が嫌がらせに徹している様な案件って出くわした事ある?
直接人間を祟るんじゃなくて、ネズミや野良猫的な小動物に取り憑いて嫌がらせをさせたりする様な感じで」
雑談が一旦切れたところで、碧がふと尋ねた。
聖子さんも美帆さんも、私らより何年か年上だ。その分、色々違うタイプの依頼を経験しているかもだから、あの水源地問題の悪霊がやっている様なことを見たことがあるの聞いてみることにしたのかな?
「あ〜、野良猫に繰り返し毎朝玄関の前でオシッコさせるだけでもかなり迷惑よねぇ。
ネズミの死体を家の前に放置されるのも嫌だろうし」
聖子さんが頷きながら言った。
「え、そんな事をする悪霊がいるんですか?!」
怜子さんがびっくりした様に聞き返した。
「昔の悪霊でそんな生温い事をするのは居ないけど、高度成長期以降に亡くなった霊だと稀にあるわね。
あと、生き霊だと嫌がらせは多いわ。そっちは異音とか、物が動くとかが殆どだけど」
美帆さんが頷きながら付け足す。
ああ、確かに生き霊だとそう言う嫌がらせは十分ありそう。
死霊でも、現代に近いと動物の死骸やオシッコがダメージになる感性を共有しているから、そう言う嫌がらせをする悪霊もいるのか。
江戸時代とかだったら、多分ネズミの死骸なんて残されても全然気にしない人が多かったんだろうなぁ。
猫なんて、毎朝オシッコしにきていたら捕まえて皮を剥いで売るとかしそうだ。
水落家の悪霊達(主に水落健二)は水源へのダメージと言う視点だから、高度成長期前の霊だけど新型な嫌がらせに思い至ったのかな?
「そう言う場合って祓う依頼がくるのですか?
悪霊の仕業だと中々分からないと思いますが」
怜子さんが二人に尋ねる。
「穢れが蓄積するから悪霊のせいな可能性が高いと調査結果が出る事もあるわね。
ただまあ、確実に祓えるとは約束できないし、普通に生きた人間や近所の野良猫の嫌がらせや生活習慣な可能性もあるから、ダメ元でやって割安な代わりに失敗しても返金なしって契約になるかな」
聖子さんが言った。
うわぁ。
効果がなくても依頼料を取られるのかぁ。
まあ、頑張って悪霊を探すために時間をかける術師の時間給分は払わないと、誰も依頼を受けてくれないだろうからねぇ。
売り手市場な退魔業界ならではだね。
「そう言う場合ってどうやって依頼を熟せば良いんです?
それとも受けないのが正解なんですか?
確か、依頼を失敗すると評価が下がるんですよね?」
怜子さんが尋ねる。
「まず、場所がどこかを先に確認しないとダメね。
マンションとかが多い地域で人口密度が高いところだったら、手を出さない方が良いわ。
まあ、マンションだったらネズミの死体や野良猫のオシッコも管理人が対処するでしょうから余程の高級マンションで管理組合がそこそこ金余りなところじゃ無いと、退魔協会に依頼を出す事自体がないと思うけど」
聖子さんが言った。
確かに。管理人が毎朝処理すれば良いんだったら、退魔協会にダメ元で依頼を出さないよね?
第一、それじゃあ悪霊も祟り甲斐がないだろうし。
まあ、マンションの敷地を買う際に悪辣な地上げをされて亡くなった人が悪霊化した場合だったら、有り得るかもだけど。でもそうなったら、そんな嫌がらせレベルじゃあ済まなそう。
「個人宅だった場合は?」
碧が尋ねる。
「浄化の風で悪霊を探し出して、弱いのだったらそれで何とかなるかもってところね。
ただ、関係ない悪霊まで除霊しちゃうから、悪霊が多い様な場所だと疲れるだけで大損な可能性もあるの。
しかも悪霊が近くに潜んでいなかったらダメだし。
だからまあ、何日か掛けても良いぐらいな依頼費じゃない限り、手は出さない方がいいわね」
聖子さんが軽く笑いながら言った。
へぇぇ。
浄化の風なんてあるんだ?!
前世だったら風の攻撃魔術や探知魔術は色々あったが、除霊用の術はあまりなかった。
除霊は白か黒魔術師に任されることが多かったからねぇ。
魔物や、魔術を使った争いがない地球だからこそ、風の魔術師も除霊する術が磨いてきたんだねぇ。
でも、それだったらあの水落家の水源地での嫌がらせ対処も出来るかも?
聖子さんたち個人は遠すぎてダメだけど、他の風系魔術の強い退魔師が同じ様なことが出来ればオッケーだろう。
とばっちりを喰らってる醸造所が経営破綻したりする前に、さっさと問題が解決されると良いね〜。




