客人
今日はずっとシトシトと雨。なので買い物もウォーキングもせず、朝から只管アイピロー用の符をラミネートしていたら、インターフォンの呼び鈴が鳴った。
「お? 来たかな?」
碧がそう言って、立ち上がる。
今日は聖子さんが兄貴達と一緒に来る予定なんだよね。
披露宴ランチの前に会った時に発覚したのだが、兄貴達は新婚旅行で九州の湯布院に行って、帰りに諏訪に寄って藤山家の術師達に聖子さんの弟子として怜子さんが紹介して貰うという話がついていた。
私と碧もその時期に諏訪にいる可能性が高いと言ったら、聖子さんが碧に久しぶりに会いたいし、美帆さんのところの霊泉にも入ってみたい!と言い出したので、ここで会って一緒に行くことになったのだ。
怜子さんは一般家庭出身の術者だ。聖子さんにもしもの事があった時に頼れる知り合いがいた方が良いだろうと言うことで、藤山家の術者達に紹介すると聖子さんが言ってくれたらしい。
何分普段は北海道とせいぜい東北ぐらいにしか出歩かないので、折角の機会だからと聖子さんが結婚祝い的に言ってくれたらしい。(兄貴夫婦は東京の実家にも年末年始に会いに行くけど、そっちは必要最低限の日数で帰っているのでカウントしないとのこと)
まあ、聖子さんにもしもの事があっても、私経由で藤山家の助けを得られる可能性は高いけどね。だが、一度も会った事がない人に助けを求めにくいだろうと言う事で、国を横断して移動している最中についでに諏訪にも寄れば良い!となったそうだ。
ちなみに新婚旅行が湯布院になったのは、英語が出来ないのに見栄で海外旅行なんぞして成田離婚(千歳離婚?)なんて困ると兄貴が主張した為らしい。
今だったらネットで直ぐに翻訳出来そうだし、通訳マシンみたいのもあると思うけどね〜。
ただまあ、私としてはうっかり私への鎖にするために兄貴達が誘拐されたら困るので、国内に留まってくれるのはありがたい。
碧への繋がりが微妙に遠いから絶対に危険とは言えないけど。だが、却って遠すぎて白龍さまの天罰ディフェンスも期待できなそうだから危険かな〜と少し心配だったので、兄貴が『これからもパスポートを取る気はない!』と言い切ったのにはちょっと安心した。
「碧ちゃん、お久しぶり〜!
凛さんもこないだぶり!」
碧が開けた玄関から、ショートヘアの小柄な女性が飛び込んできた。
「お久しぶり〜!
元気?」
碧が玄関を閉めながら応じる。
「元気よ〜。
やっとスキーの邪魔をしない相棒が出来そうで、ご機嫌なところ〜」
聖子さんが何やら見覚えがるお土産の袋を碧に渡しながら言った。
こないだ私がお土産に買ったのと同じメーカーの袋だよね? でも、幸いにも出てきた中身は違った。
こう言う時って全く同じ物が短期間に繰り返されるとちょっと気不味いよねぇ。
美味しいし、飽きるほどは食べてないからもう一箱あのチョコが手に入るんでも十分嬉しいけどさ。
碧がお土産を受け取っていたら、またインターフォンが鳴った。
そっか、兄貴と怜子さんは車でも停めてたのかな?
聖子さんと話していた碧にそのまま続けるよう身振りで伝えて、玄関へ行く。
まあ、鍵は閉まってないんだけどね。
それでも赤の他人の部屋の玄関を勝手に開けて入るのは気が引けるでしょう。
「いらっしゃい。
どうぞ入って〜。
湯布院はどうだった?」
玄関の外に立っていた兄貴と怜子さんに声を掛ける。
「良かった!
前半はかなり暑くて、後半は雨ばっかで、あまり出歩かなかったけど。
宿が快適だったから全然オッケーだった」
兄貴が答える。
「怜子さん、具合はどう?
お花摘みとか水分補給とか、遠慮せずに言ってね〜」
妊娠するとトイレが近くなると言う話だからね。
出先だからと変に遠慮しない方が健康の為にいいだろう。
「ありがとう。
さっき宿にチェックインした時に済ませたから大丈夫よ。
先日は遠いところを態々お祝いに来てくれて、ありがとう。
あのクッションとアイピローには凄く助けられてるわ!」
お土産の袋を渡しながら怜子さんが言った。
おや?
これは有名な定番チョコのメーカーの袋じゃないね。
聖子さんがあっちのを買ったから、違うのを選んだのかな?
まあ、北海道産ってなんかどれも美味しいから良いんだけど。
「そう言えば、妊娠中も出産後もこれからは色々と大変だろうから、ガンガンあれを使っちゃってね。
効果が無くなっちゃったら1年ぐらいは特別サービスでもう一セット送るから」
一応、会員限定販売用ウェブサイトのメンテや諸々の作業料として、快適生活ラボのアイピローとクッションを一つずつ兄貴のところに毎月送ってるから、妊娠時の腰痛とか夜泣きが原因の寝不足とかは対処できると思うけど。
まあ、二人で取り合って足りなくなったせいで喧嘩になっても困るからね。
まだ先の話だけど。
ついでに、浮腫み解消のお守りでも作れないか、碧に相談してみようかな?




