報告はしたよ〜
「離れの穢れと、あそこに残っていた霊の浄化は終わりました」
本館の方に戻って当主のところに案内されたところ、さっき紹介された分家の夫婦がまだ残っていた。
子供達が目覚めたらさっさと帰るかと思っていたんで、ちょっと意外〜。
下手をしたら一族の一部として祟りを喰らうかもと、心配なのかな?
だとしたら、お気楽な当主よりもよっぽど慎重だね。どんな情報を伝承として親や祖父母から伝えられているのか、教えて貰いたいところだね。
「おお、ありがとう!
これでもう問題なくあの離れも処分できるな!」
当主が応じる。
「あの離れの元々の用途に関して、あそこに拘られていた霊に聞いたのですが。
どうも、あそこは江戸時代の終わりぐらいに旅の術師の助けで作った、分家の生命力を一族の繁栄の為に費やす仕組みだったらしいですね。
初期にあそこに入った人は納得していた様ですが、時の流れと共に何人かは騙されたり無理強いされてあそこに入る事になって、それを恨んだ者達が悪霊化していたようです」
おや?
説明を始めたところ、当主は『何を馬鹿な事を』と言いたげな表情をちらっと見せたが、分家夫妻の顔色が悪くなった。
やはり分家には、本家よりも情報が残っていた様だね。
「どうやって生命力を一族の繁栄に為に活用するのか知らんが、今ではそんな非道な事はやっていないので、問題はないな」
当主が興味なさげに言い切った。
「実は、あそこはどうも子供達が忍び込んだ際に何か仕組みを壊したのか、倒れていた三人に嫌がらせをしていた少年霊以外の悪霊化した霊は既に飛び去った後でした。
穢れはかなり酷かったですし、悪霊化していなかったものの拘られていた霊達が残っていたのでそれらを清めましたが、一族を恨んでいた悪霊は我々が来る前に既に何処かへ出ていってしまっていたそうです」
で、ここには居ない。
「なに?!
危険な悪霊がいるならば。祓って貰わないと困る!」
当主が憤慨した様に立ち上がって言い募ってきた。
「こちらにいる本家や分家の方々を祟っていたならば契約に基づいて除霊するのは構わないのですが、現時点では屋敷内にいる人間で悪霊に取り憑かれている者は居ないようなんですよ。
なので除霊も無理ですね。
離れに残っていた霊の話ですと、悪霊達の主導格だったのが水落健二さんとか言う方で、昔は端山家の水源の維持に努めていた方だとか。
どうもその水源にダメージを与えてやると言うような事を呟いていたらしいです。
今でも江戸末期に有していた端山家の水源はこちらの家で所有しているのですか?」
と言うか、どっかに売り払っているのに一族を恨む悪霊に滅茶苦茶にされたら購入者側にとっては良い迷惑だよねぇ。
「はぁ?
水源??
確かに先祖代々一族が有している水源は極めて質が良いと業界では有名で、日本酒の醸造所やミネラルウォーターの製造会社に供給販売しているが。
何をやっていたのか知らんが、昔の分家の人間に湧水を祟られたところで、どうにかなるとも思えんな」
当主が馬鹿にしたように言った。
「まあ、そうかもですね。
一応の為のご報告というところです。
元々、我々の契約は倒れた子供達への対処と離れの除霊ですから、水源地や我々が来る前に出ていった悪霊の処理は契約範囲外ですし。
どこにあるのか分からないし何をされるかも不明な被害に関しては、何かが判明したらまた別契約で退魔協会の方へお願いします」
『別契約』と言ったところで、どうもこちらがもっと金をよこせと増額請求しているのだと思ったのか、当主の口元が歪んだ。
「一族の人間が水源地に行ったら祟られるかも知れないというところかね?
まあ、何かあったらその時に考えるよ。
今日はどうもありがとう」
さっさと出て行けと言いたげに当主が玄関の方を見ながら腕を振った。
「そうですね。
では失礼します」
あっさり碧が応じて、立ち上がる。
「いや、だが、不味いですよ……!」
分家の男性が慌てたように当主の腕に手を差し出した。
おやおや。
水源地の件に関して、何か知ってるっぽいね〜。
健二さんとやらの過去の提言の記録とかが残っているなら、頑張って探して下さいな。
さて。
依頼終了の連絡をする際に、一応遠藤氏に依頼前に飛び出した悪霊が居て、そいつらが依頼主一族が有している水源を狙うと言っていたらしいって事だけ知らせておこう。
たとえ水源の方で何か問題は起きたとしても、私らじゃ以外の別な退魔師が依頼を受ければ良いよね。
湧水があるところって山の中な気がするから、私は絶対に避けたい!!
取り敢えず、この章はこれで終わりです。
明日はお休みですが、また明後日から宜しくお願いしま〜す!




