遊びにきても良いかもね
翌日、依頼主に指定された最寄駅に行き、迎えの車に乗ってたどり着いた先はなんか白い漆喰の壁で出来てる洋風っぽいけどよく見たら瓦屋根な古いお屋敷だった。
横に古い蔵っぽい建物が建っていて廊下で繋がっている。
あれが離れなのかな?
蔵を改造したから窓も上の方に小さいのがあるだけで、贄役を軟禁するには丁度良かったんだろうなぁ。
そんでもって反対側にも似た様な蔵があるので、どちらも『蔵』だと思って子供たちが探検として忍び込んでも不思議は無い。
ちなみに入り口の門柱に付いていた立派な石造りの表札に刻まれた名前は北海道で悪霊憑きの女性の記憶から読み取ったのと同じだった。
『運命なのかフラグなのか知らないけど、やっぱ北海道で祓った悪霊の関係みたいだわ〜』
マジで何なんだろうね、このフラグというか運命じみた繋がりは。
確かに悪霊憑きの金持ちなんて、一般庶民と比べたら数が少ないだろう。それでも日本全部の人口から考えたら、旅行先で会った悪霊憑きの本家から依頼が来る確率なんて低そうなものなのに。
というか、退魔協会は一つしかないんだから悪霊が問題を起こしている旧家が退魔協会へ依頼を出すのは不思議じゃない。けど、その依頼が『私に』来ること自体は不思議だ。
『にゃはは〜。
流石、一級フラグ建築士、長谷川 凛!』
碧が変な肩書を私に押し付けながらニヤニヤとした。
『いやいや、フラグを先に立てたのは碧じゃん。
一級フラグ建築士は碧で、私は二級ぐらいだよ』
なんか適当な事を言い返す。
それこそ、先に大学で私に声を掛けてきたのは碧なのだ。
碧こそが元祖フラグ建築士だよね〜。
『まあ、それはさておき。
なんかこう、依頼が早く終わったら街の散策でもしてみたいね〜』
碧が車の外の街並みを思い出しながらか、楽しげにコメントした。
『だね〜。
もう少し涼しくなったら日帰りで遊びにきても良いかも?
なんかネットで調べたら色々な散策コースがあって、歴史遺跡巡りみたいのは所要時間が6時間て書いてあったから、今日の除霊の後では無理でしょう』
一応依頼人から話を聞き、寝込んじゃった子供達の様子を見た上で離れを清め、もしも白骨死体が埋まっているならそれも見つけておきたい。
今の本家の人間達を罪に問うのは多分無理だろうが、せめて過去に被害にあった死者をちゃんと弔うぐらいの事はさせるべきだろう。
やってないんだったら、だけどね。
悪霊達は酷い目にあったから悪霊化したんだし、一族の人間を代々犠牲にするなんて事を続けてきたんだから、悪霊憑きだった女性の本家は酷い人間だろうと想像しているけど、本当にそうかどうかはまだ不明だ。
酷い家でも埋葬とかはちゃんとやっている可能性もゼロではない。
大元は、依頼人の先祖が私欲の為に騙し討ちで私が祓った悪霊達の元の人間を殺したのだ。しかも被害者が怨みで悪霊化して祟ってきても、これまでの行いを悔い改めて慰霊碑を作るのではなく、分家の人間を使って無理やり鎮めていた。
なので分家の贄役の人間が人知れずに離れに埋められていたら、ちゃんとそれを表に出して墓に入れるべきだろう。
まあ、今となっては誰だかわからないから無縁仏扱いだろうけど。
というか、自分の先祖や自分の遺骨ですら山や海に散骨する時代なのだ。
ずっと昔の名も知れぬ誰かなんて、ちゃんと真摯に弔うかは怪しいところだ。だが少なくとも、牢獄の様な離れの下にこっそり埋められているよりはマシだろう。
離れに死骸が隠されているならば。
『考えてみたら、あの駅の周辺ってなんか小江戸って事で古い家や蔵が残っているのが売りな街だけど、街中を歩き回ったらその分色々昔の霊や怨みとか穢れも残ってるかもね〜』
碧が指摘した。
『まあ、観光名所としてそれなりに予算を注ぎ込んでいるだろうから、悪霊や穢れで鬱々としていたら観光客が逃げちゃうって事で、しっかり必要に応じて祓ってるんじゃない?』
悪霊が山ほどいるホットスポットと言うのもアホを引き寄せる様だが、さっき通ってきた街はそう言うのが売りじゃあないからね。
不快感を醸し出す状態になったら、サクッと祓うだろう。
『確かに。
死霊がいるとしたら、江戸時代じゃなくて最近の怨恨や愛憎の果てだろうね』
碧がそう応じたところで、車が停まった。
「お待たせしました。
こちらでございます」
立派な家の正面に車を停めた運転手が、さっと降りて碧の方のドアを開けてくれた。
離れに直行になるかもと思ったが、先に本館の方に案内される様だ。
さて。
中はどんな感じかな〜




