『手伝う』じゃ駄目だよ?
「結婚おめでとう。
家事も子育ても大変なんだから、怜子さんに頼まれなくても自発的にやらないとだよ?
『手伝う』んじゃなくて、それこそ出産っていう一番大変な肉体労働を怜子さんがやるんだから、それ以外は全部兄貴の役割だと思うぐらいのつもりで頑張ってね」
披露宴ランチで我々のテーブルに新郎新婦が回って来たのだが、怜子さんのご両親とウチの両親が怜子さんと話し込んでいたので、その隙に兄貴にそっとお祝いの言葉と共にこれから頑張れと発破を掛けておいた。
最近は男性でも家事をやる人も増えてきているらしいが、統計的には先進国の中で日本の男性は突出して家庭内の家事負担率が低い。そんな兄貴も、少なくとも実家において家事は『手伝う』ものと言う意識が露骨だった。
頼めばやらなくは無いけど、頼まなきゃ絶対にやらないし、普段から家事に興味を持っていないので頼んだら一から説明しないと全くできず、却って時間が掛かる。
親に甘えられる実家生活ではなく二人での(もう直ぐ3人はなるが)生活だったら、『手伝う』ではなく『最低でも半分は当然の義務』と自然に思う様になるかも知らないけどね。
怜子さんのためにもそうなって欲しいもんだと、お節介ながらもキツい目に言っておいた。
「はいはい、勿論分かってるよ」
兄貴が軽く笑いながら応じた。
大丈夫なんかねぇ?
まあ、兄貴も子供の頃から比べればマシかもだが。
子供の頃の兄貴は、本人としては『遊んでくれている』つもりだったのかもだが、かなり苛つくちょっかいの出し方をされた。なのであの頃は、大嫌いとまでは言わないが、好きでも無かった。
ラノベなんかで妙に妹に甘い兄とか、兄に甘える妹を見ると『キモ!!』と思ってそっとブックマークを外すぐらいありえないと今でも感じるが、それでも大人になってきたら普通に大人同士の付き合いが出来るようになってきたかな。
ある意味、兄貴が家事を手伝わなくて苦労するのは怜子さんだ。
それを是とするか、話し合って(殴っても良いけど)態度を改めさせるか、諦めて離婚するかは怜子さんの決めることであって、私が口出しする事ではない。
まあ、あまりストレスが掛かりすぎると術師である怜子さんがついうっかり鎌鼬で兄貴を切りつけちゃう可能性もゼロでは無いかもだけど。
そうなったら最悪の場合は兄貴は死んで、怜子さんも超常的手段を使った殺人犯って事で死刑になっちゃって、孤児になった二人の子供をどうするかなんて問題になりかねない。
能力持ちだったら私が引き取る羽目になるなんて状況も場合によってはあるかもだが……今の世の中だったらそこまでストレスを溜める前に周囲が助けるなり、怜子さんが見切りをつけて兄貴と別れるなりするだろう。
多分。
……定期的に怜子さんか、聖子さん辺りに連絡して、どんな様子か一応確認しておこうかなぁ。
まあ、兄貴も怜子さんも、それなりに幸せそうに笑っているし、きっと結婚生活も上手くいくでしょう!
「そう言えば、怜子さんは退魔師になったらどう言う働き方をする予定なの?」
兄貴に尋ねる。
「最初は師匠の聖子さんと一緒に依頼に行く予定らしい。
どっちも冬に依頼を受けないスタンスだから、中々普通に相棒を見つけるのは難しそうだし。
依頼が入ったら俺が子供の面倒を見る予定だから、今から子育てや保育園探しに関してもしっかりリサーチを始めているよ」
兄貴が答えた。
へぇ〜。
ちゃんとそれなりに考えているんだね。
在宅勤務でも、保育園に入れられるのかな?
まあ、通勤ルートに縛られないで不自由な場所の保育園に連れていくのでも大丈夫となれば、最近は待機児童数ゼロで入れる保育園もそれなりにあるらしいからね。
スノーシーズン以外だけなんて言う変則的な入園が許されるかは知らないが。
と言うか、スノーシーズンの間、子供はどうするんだろ? リゾート地に保育園が十分にあるのかな?
最近は待機児童数というよりも保育士不足が問題になってきているみたいだけど。
いざという時には、保育園なしでも怜子さんが依頼を受けている間に子供の面倒を見つつ、家事もしっかりできるようになってね〜、兄貴。
頑張れ!
さて。
ランチが終わったら、空港に行って搭乗手続きをしておいてお土産を見て回ろうかな。
碧だけでなく、碧のご両親にもお土産を買っておこう。
定番のチョコ菓子にするか、珍しいものを探すか、どっちにしようかなぁ〜。




