やっぱ温泉宿は和室だよね
札幌への往路では空港で両親と合流した。そんでもって札幌に着いてから有名チョコ店の本店でアイスを食べたり、明治期の外国人教師の銅像で有名(?)な大学の敷地を見に行ったり、一応今のうちにと言う事で兄貴に会ってお茶をしてから、予約しておいた温泉宿へ。
「おお〜。
落ち着く感じの良い部屋だね!
なんかこう、下のロビーが凄いお洒落だったから、もっと洋風的な所になるかと思っていた」
広めな和室に案内されて、周囲を見回して回っていた父親が、宿の人が出て行った途端にコメントした。
おや。
商社マンだったら洋風なホテルチックな部屋の方が慣れているかと思ったけど、個人的な旅行だったら昔からよくある和室風な旅館が好きなのかな?
「ここもリフォームして、上の方の階はすごく洋風な雰囲気の部屋にソファとダブルベッドが置いてあるゴージャスな部屋が幾つもあるみたい。だけど私の偏見と個人的趣味で、やっぱ温泉宿はお布団を敷いて貰う和風な部屋がいい!と、こっちを選ばせて貰いました〜」
正確には、一応『こう言うのがあるけど和室でもいい? どちらかと言えば洋風の方が良いならそっちでもアリだけど?』と両タイプの部屋のウェブサイトのリンクを母親に聞いて、確認は取ったけどね。
母親の返事は、『3人でこの部屋に泊まったら、ダブルベッドを私とお父さんとで分けなきゃじゃない! 絶対布団を敷く和室にして!!』だった。
私が子供の頃は両親はダブルベッドで一緒に寝ていたけど、私と兄貴が家を出てからは寝室を別にして寝る様になった様だからねぇ。
今更一緒のベッドに寝るのは嫌だったらしい。
まあ、私も下手をしたら父が一人で寝て、私と母がダブルベッドを二人でシェアする事になるかも?と密かに心配したのもあったんだよね〜。
友人と二人で泊まりに来たんだったら、洋室でダブルベッドに別々に寝るのも多少は違和感があるけどアリかな〜と思ったが、やっぱ親と一緒に温泉宿に来て、ダブルベッドをシェアするのは……無い。
それに温泉宿ってやっぱソファよりは座椅子か、せめて普通の椅子が合う気がするし。
ソファは……それこそインバウンドな外国人客用なんじゃないかな。
他の日本人も同じ感覚なのか、約1ヶ月前に予約した時も洋室の方が圧倒的に空室率が高かった。
まあ、お洒落な見た目にあったオシャレな値段設定なのも空室がそこそこあった理由の一つだろうけど。
ターゲット層なインバウンド客は交通手段が激混みし、店はしまっているところが多く、観光地とかのホテルも高くなるお盆シーズンは可能ならば避けるだろうから、インバウンドをターゲットにした部屋は中々埋まらないんだろうね。
「夕食は下のレストランで良いよね?」
一応オプションで選べたんだけど、予約時に下でと決めてあるから今更部屋で!!と主張されても困るが。
「勿論よ〜。
でも、その前に一風呂入ってこない?」
母親が荷物を漁りながら楽しげに言ってきた。
「そうね。
折角だから、明るいうちに露天風呂を試しに行こうか。
夕食は7時半の予約だから、時間はあるし。
お父さんも入ってきたら?」
一応家族風呂として両親が一緒に入るのも可能だとチェックインの時に言われたが、母親が別に良いと言ったので父親とはお風呂は別々だ。
まあ、私はこの歳になって父親と一緒にお風呂に入るつもりは流石に無かったが、母親も夫より娘と風呂を楽しむ事にしたらしい。
きっと、20日以降の旅程で夫婦でしっぽり仲良くするんでしょう!
取り敢えず時間的にまだ余裕があったので、一杯お茶を淹れてそれが冷めるのを待って喉を潤し、その後に大浴場の方へ。
母親と近況とかその他諸々の無駄話をしながら景色や風を楽しんでいたら、ガラッと露天風呂へ出るガラス戸が開き、女性が現れた。
うわぁ。
なんかかなり濃厚に穢れがこびりついているんだだけど。
温泉宿に平日のこの時間にいるってことは、たぶん旅行で来てるんでしょう。
だったらきっと観光名所的な神社やお寺も回るだろうから、全部でお賽銭を払って参拝すれば、運が良ければ穢れが落ちるんじゃないかな。
命に関わりそうな呪詛ならまだしも、この程度の穢れで手を出して退魔協会に睨まれるつもりはないからねぇ。
だけど。
折角露天風呂でリラックスした爽快感がちょっと損なわれた気がしないでもない。
「そろそろ出ましょうか」
母親も何か感じたのか、そう言いながら立ち上がった。
母親も、意外と鋭いよね〜。
具体的に顕在化した適性はないけど、退魔師の才能も潜在的にはあるのかな?




