うわ、マジですか
「その先の家ですね」
SUVを運転している今井さんにちょくちょく場所を指示しながら進んでいた私らだが、どうも今井さんも行き先に心当たりがあるのか、此方の指示なしでも最短距離を進んでいた。
一方通行とか右折禁止とかを見事に避けて進んでいる気がする。
私が使っているマップアプリって右折禁止は書いてない事が多い。一方通行は一応矢印でわかるんだけど、そちらもついつい目的地に集中してるとそこの繋がる道の下の方に小さく描いてある矢印とかって目に入らない事も多いんだよね〜。
最短ルートっぽい道への曲がり角を通り過ぎてから、『あら、今の一方通行だったから曲がれなかったわね』と気付くことが何回かあった。
で。
そんなこんなであっさり辿り着いた家だが。
大きな門の中に立派そうなロータリーチックな車寄せが正面にある屋敷だった。
門は開いていたけど、こう言う場合って勝手に入っちゃって良いのかな?
先にインターホンで声を掛けるべきじゃない?と思っていたのだが、今井さんはあっさり車を中へ乗り入れていた。
家の前に堂々と車を停め、運転席から降りて後部座席の依頼主側を開けに回ってくる。
私らは待っているのもあれだったので、碧が自分でもう一方のドアを開けて外に出た。
玄関が開き、執事っぽい人物が現れる。
「東堂様。
今日はいらっしゃる予定だとは伺っておりませんでしたが、此方で話し合うご用件がございましたか?」
依頼主に執事(多分)が尋ねる。
依頼主の名前を聞いていなかったが、東堂という姓らしい。
「そうね、ちょっとお話ししたいことが出来たから、皆さんにお会いしたいわ」
やっぱ知り合いだったかぁ。
依頼主が降りた後、白井さんがレジャーシートと新しいバスタオルを手に、依頼主の斜め後ろぐらいの立ち止まる。
「此方へどうぞ。
東の応接間でお待ちください」
執事に案内されて屋敷の中に入っていく。
建物全体がクーラーで冷やされていて、蒸し暑い外から玄関の中に入ったら一気に涼しくて過ごしやすくなった。
あ〜やっぱ、クーラーって良いわ〜。
まあ、家にいれば炎華が温度を下げてくれて十分快適なんだけどね。
炎華の小型版みたいのと使い魔契約して、連れ歩けたら便利なんだけどなぁ。
ハンディ扇風機ならぬ、ハンディ火の鳥もどき。
まあ、肩の上に乗れるサイズでそこまでの能力があるかは不明だけど。でも、元々白龍さまが『モフモフな使い魔が欲しい』と言う碧の為に幻想界から連れてきた時は大型トラックぐらいのサイズがあった炎華が、大き過ぎるから今回の話は無かったことに……と碧に言われたら中型犬ぐらいのサイズに縮んだのだ。
あれはもう一踏ん張り頑張ったら、文鳥サイズまで、縮めるんじゃないかなぁ。
面倒だから碧について歩きたくなくて、そんなことしてくれないだろうが。
昼寝できる居心地のいいバッグでも作ったら、その中に入って連れ回すのも合意しそうだけど。でも、寝ていたら目立たぬ様に周囲の熱を吸収するのが難しいってことでやっぱ嫌がるかな?
そんな事を考えている間に大きな応接間に案内された。執事さんと今井さんがささっとレジャーシートとバスタオルを広げたソファの上に依頼主が座り、私たちはそっと目立たぬ別のソファに腰掛ける。
「少々お待ちくださいませ」
執事がそう言って、姿を消した。
待っていたら家政婦っぽいのが来て何か冷たい飲み物を〜と聞いてきたので麦茶を貰う。
後でトイレも借りなきゃだなぁ。
借りれる雰囲気で話し合いが終わると良いんだけど。
そう思っていたら、ば〜ん!と扉が開き、親世代ぐらいな(多分。スキンケアと化粧のお陰で若く見えて、年齢の判断が難しい)の男女が現れた。
「聖良ちゃん、どうしたの?
何か結婚式のことで話し合う必要があったの?
大樹から来るとは聞いていなかったのだけど」
女性が依頼主に話しかけながら部屋に入ってくる。
依頼主が此方に目をやったので、首を横に振って見せた。
どちらも呪い主じゃない。
というか。
知り合いどころか、もしかして、ここって結婚相手の実家?!
結婚相手がここに居ないってことは少なくとも花婿本人に呪われている訳では無いようだけど。
あとは家族か……敵対的な誰かに雇われた使用人??
まだ誰か将来の義理の家族になる人間が残っているかもだけど、それもハズレだったらこの屋敷の使用人全員を呼び出してもらわなければならないのか……。




