↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の教え子、王国最強になったあとも家庭教師代を払い続けているのですが~恩返しだと思っていたら、年下公爵の恋でした~  作者: 他力本願寺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/48

第33話 強すぎる魔法では止められない

補助ゲートが軋み、金属の裂ける音がした。


 操作室の窓から、白く砕ける水が見える。閉じていたゲートが押し開かれ、予定していない方向へ流れが膨らんだ。


「下流側へ回させるな!」


 通話器からフェリクスの声が響いた。


 青白い光が、水路の壁に沿って立ち上がる。


 水を丸ごと止めたのではない。崩れた箇所を覆い、技師長が指定した逃がし水路へ濁流を導いていた。その先の遊水池にも、まだ受け入れる余地がある。跳ね上がる水の向こうで、彼の足は一歩も下がらない。


「補助側を保持。主流路は塞いでいません。次の切り替えは」


 冷静な声だった。


 オリヴィアはその声を聞いて、押さえていた息を吐いた。


「第二、第五、最後に中央です。ただし、下流側の水位を確かめながら段階的に」


 技師長が答えた。魔導隊の副官が復唱し、持ち場へ伝える。


 防壁を維持するフェリクスへ、部下たちが足場と横からの飛沫を防ぐ魔法を重ねた。それでも、補助ゲートの破損箇所を支えられるだけの出力は、彼にしかない。


 オリヴィアは技師長へ尋ねた。


「あのままでは、長く保たないのですね」


「川の水は増え続けます。支える場所を変えながら、主流路へ逃がす必要があります」


 魔力を増やせば壊れた歯車が直るわけではない。見えない別棟の計器まで、彼一人では読めない。


 オリヴィアは窓から目を離し、机へ戻った。


 操作室には、複数の通話器から声が入っていた。各棟を結ぶ有線の魔導通話器だ。


「二番、青点滅。準備完了!」


「待て、こちらの青点滅は未接続だ。どの二番を言っている!」


「東側の切替盤です!」


 古い盤と新しい盤で、同じ青い灯りが違う意味を持っていた。普段は各班の中で済んでいた確認が、部屋をまたぐと通じない。


 通信係が呼び先を探し、接続線を握り直した。濡れた袖口から落ちた雫で、紙の文字が滲んでいた。


 技師長が図を指して説明する。だが次の声が入ると、最初の班への返事が途切れる。


 オリヴィアは、隣の通信係へ声をかけた。


「いま、どの部屋の返答を待っていますか」


 係は三本の接続線を見た。


「第二操作室です。いえ、第三も……」


 ニナが白紙へ三つの枠を描いた。部屋の名前を書き、返答が来たところへ印を置く。


「第二操作室、まだですね」


「はい」


 オリヴィアは技師長へ向き直った。


「操作の順序と限界は、技師長さんが決めてください。私たちは、各室の言葉を揃えて、指示と返答を一つずつ確認します」


「できますか」


「班長さんに現物と照合してもらえれば。ランプの色だけで、操作を決めないようにします」


 技師長は頷き、指示を出した。


「各室、そのまま待機。切り替えは一度止める。今から部屋名と機器番号を確認する」


 止まった数十秒が、ひどく長かった。


 外で水が弾ける。フェリクスの声が入った。


「保持しています。確認を続けてください」


 同じ声で、終わったら一緒に休もうと言った人が、外にいる。


 オリヴィアは通話器を握る手を緩め、一度、息を吐いた。


「まず、第二操作室。聞こえていますか」


 返事を待った。彼を早く休ませたいからこそ、この一つを飛ばしてはいけなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。