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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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 春に咲く桜のピンクが好きだ。一本で立つ大きな枝垂桜や、川沿いにたくさん植えられたソメイヨシノ。名前は分からないけれど少し濃いめのピンクや白っぽい桜。


 人が大勢行くようなところは苦手だから、田舎のちょっとした春の景色を楽しむことにしていた。


 その川の名前も知らないけれど、川に沿って何本も桜が植えられている。お花見スポットみたいにその下で桜をめでつつ飲食は出来ないが、そぞろ歩くにはちょうどいい。


 その日も、うららかな天気にいざなわれて桜をめでていた。そろそろ散り始めて道路に花びらが点々と落ちている。少し寂しいような気分で、桜を見上げた。


 どっと花びらが降ってきて、たちまち視界が奪われた。慌てて花びらを払い落とそうとしたが、静電気を帯びた糸くずのようにまとわりついて落ちない。


 気が付くと、私は病院のベッドにいた。


 窓の外にはビルが立ち並んでいた。


 ふと目を落とした枕元に、桜の花びらが一枚、落ちていた。


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