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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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おばさん

 工事現場で事務をしているおばさんはとても口うるさい。やれ、土が事務所内に落ちていたとか、ゴミはちゃんと捨てろとか。書類の提出が遅いとか。毎日誰かしらにガミガミ怒っていた。


 ある日、急におばさんが来なくなったと思ったら、亡くなってしまった。葬式にも行った。


「後任、見つかるかなぁ」

 所長はぼやいていた。このあたりは田舎でそもそも人が少ない。若い女の子でも来てくれないかなという淡い期待すら持てない環境だ。


 それから、現場内で作業員から、

「誰かがゴミを車に入れる。何とかしてくれ」

という苦情が来るようになった。


 監視カメラなんてつけていないが、車は現場内に停められているから外部の人間ではないのだけは確かだった。


 そのうち、自分の車にもゴミが入れられていた。

「あれ?このゴミ、俺が捨てたやつ……?」

お菓子の空き箱がつぶれもせずに車内に転がっていた。ゴミを入れられた人たちにもゴミをよく確認するように言うと、みな、「よく見たら、自分が捨てたゴミだ」と言い出した。


「お前ら、ちゃんとしないからあのおばちゃんにゴミ入れられてるんじゃないのか?」

冗談交じりの所長の言葉に、みんな苦笑いした。


読んでくださり、ありがとうございます。

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