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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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隣室

 仕事場に近いアパートに引っ越してから、隣の部屋からの音に悩まされるようになった。


 部屋にいるときに、必ず壁を叩く音がするのだ。激しく叩くと言うよりは規則性のあるノック音だ。


 暫くは我慢したが、耐えかねて管理会社に苦情を入れた。


「隣室は空き部屋ですよ」


 だが、こちらは毎日聞いている。埒が明かず、管理会社の人に来てもらうことにした。


 管理会社の人は、実際に音を聞くと顔をこわばらせて、

「こちらで手配するので、このエリアの別なアパートに引っ越しませんか?」

と言ってきた。


 正直、面倒だった。だが、管理会社の人は隣室のノック音にそれ以外、対処のしようがないという。


 仕方なく、また引っ越した。


 あのノック音が、SOSを意味するモールス信号だと知ったのは、引っ越してからだいぶ経った頃だった。


 


読んでくださり、ありがとうございます。

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