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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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ヘンプ

 デートしていたら、会社の後輩に偶然会った。


「先輩のカレシさんて、素敵ですね」

と後輩が小首をかしげて言った。恋人はちょっと鼻の下が伸びていて、私は少しムッとした。


 次の日、後輩がみんなにヘンプで編んだというブレスレットを配った。

「たくさん作っちゃったので、もらってください」

そう言って渡されたブレスレットは、黒と濃い緑のヘンプでとても上手に編まれていた。


 その後、私は会社の人間関係がうまくいかなくなり、会社を辞めた。恋人とも別れてしまった。


 それから、私のアパートに蛇が出るようになった。私はアパートの5階に住んでいるし、周囲の環境も蛇が出そうな場所ではない。


 最初はパニックになって、役所に電話したが、たらい回しにされて結局害獣駆除業者を紹介してもらった。


「こんなところにヘビが出るなんて珍しいですね」

と駆除してくれた。でも、何度か頼むうちに私がわざとヘビを部屋に入れて業者を呼んでいると思われるようになった。


 すっかり参っていた時に、久しぶりに友人と会った。顔色を心配され、今までのことを愚痴ると、

「断捨離して気分変えてみたら?いらないもの捨てると、案外気分もスッキリするわよ」

と、勧められた。


 私は断捨離をやってみることにした。着てない洋服や使っていないアクセサリー類。買ったまま読んでなかった本。取っておいた紙袋だとか、いろいろと要らないものがあった。その中に、後輩からもらって一度もつけなかった黒と濃い緑のヘンプのブレスレットもあった。


「……なんか、蛇みたいな柄ね。今見ると気持ち悪いわ」


 要らないものが無くなった部屋はスッキリして、気分も軽くなった。


 それからヘビは出なくなった。

 


 


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