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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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おばあさん

 近所のおばあさんがぼけてしまった。ふらふらと近所を歩き回ったり、勝手に人のうちに上がり込んでしまう。そのたびにご家族の方が平謝りしているのを何度か見かけた。


 どこか他人事にみていたのだが、ある日帰るとおばあさんがうちの居間でくつろいでいた。驚いたけれど、このおばあさんは暴れたりしないのが救いだ。ただ、ニコニコ笑ってこちらを見ている。


「おばあちゃん、おうち、間違えてるよ」


 出来るだけやさしい声を出して言うと、首をかしげるだけで、ニコニコしながらこちらを見ている。


 私はこのおばあさんの家族に電話した。最初に近所の家に上がり込んでしまった後、ご家族が「もしもお宅に上がり込んでしまったらご連絡ください」とわざわざ名刺を作って近所中に配って歩いたのだ。


「もしもし……?あの、近所の――――」

電話をかけて事情を話すと、30分ほどして迎えに来て、おばあさんを連れて帰った。一応、点検してみたが何もいたずらされていないし、なくなったものもない。窓が開いているなんてこともなかった。


 ほっとして、それから気が付いて愕然とした。


 私は玄関のかぎを開けて入ってきたのだ。


読んでくださり、ありがとうございます。

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