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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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冬の日

 ある晴れた寒い日に、バケツの水に氷が張っていた。


 氷の下に空気があった。薄い氷を押すと、氷と水の間に閉じ込められた空気が右へ左へと動いていく。


 空気を逃がそうと氷とバケツの境に追いやってみても、うまく抜けない。



 私はなぜか意地になって、氷を割らないように空気を逃がすのに熱中した。

「あっ」

とうとう氷がかすかな音を立てて割れた。


 空気は、逃げずにそこにあった。水の膜があるのだろうか。それにしては気泡が大きい。氷も割ってしまったし、私はこのささやかな遊びを終わらせるために、その気泡を指で触った。


 割れるはずの気泡は割れず、ただそこにあった。そしてそれは、私の目の前で躍り上がるようにバケツから出ると、人型になってどこかへ歩いて行ってしまった。



読んでくださり、ありがとうございます。

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