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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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小銭

 最近、よく小銭を落とす。冬になって手が乾燥しているせいだ。ハンドクリームを塗らなくちゃと思うんだけど、よく塗るのを忘れてしまう。


 会計していて、100円を取り出そうとして、乾燥した指のせいで100円を落としてしまった。しゃがんで、100円を見つけると、そのすぐ横に5円玉が落ちていた。

(ラッキー。一緒に拾っちゃお)

大した額でもないから、5円玉も一緒に拾ってしまった。


 数日して、また小銭を落としてしまった。今度は10円玉を落とした。そのすぐそばに、10円が落ちていた。

(お、2倍になった。10円だから20円だけど)

と、続けざまに落ちていた小銭に幸運を感じて、私は喜んだ。


 しばらくたって、自販機で飲み物を買おうとして小銭を落としてしまった。私が落とした100円玉の近くに1円玉が落ちていた。

(あれ、3回目だよね?)

二度あることは三度あるというけれど、少し気味悪く思った。


 それからまた、小銭を落とした。私が落とした硬貨の側に5円が落ちていた。

「これ、落ちてましたよ」

私は店員さんに5円を渡してお店を後にした。なんだか、気味が悪かった。


 それから数度小銭を落として、そのたびに別の小銭が落とした小銭の側にあった。


 今日も落としてしまった。私が落とした硬貨の傍らに、10円が落ちていた。私はそれを拾った。


 帰り道、募金を呼び掛ける人を見かけて、落ちていた10円玉を入れた。


 家について玄関に入った瞬間、チャリンと10円が落ちた。


 私はその10円を拾って、近くの神社のさい銭箱に入れた。


 帰ろうと踵を返した私の足元に、ぽとりと10円玉が落ちた。


 それ以来、私は現金派だったけど、電子マネー派に転身した。


読んでくださり、ありがとうございます。

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