85話 調査任務!なのです!!⑤
体育館へ続く大きな扉の前で、私たちは一度立ち止まった。
(ずいほう、ドローンを先に入れてくれ)
「分かったの」
ずいほうが操作すると、水中ドローンがゆっくりと扉の隙間から体育館の中へ入っていく。
「……広いの」
送られてきた映像には、大きな空間が広がっていた。
海水に満たされた体育館。
壁には古い照明が並び、壊れた設備や器具がところどころに沈んでいる。
「本当に体育館なんですね」
よなぐにが周囲を見回す。
「そうみたいね」
「お~~、広い~~~」
湊はスマート・バイザーに映る映像を確認する。
(まずは内部の安全を確認しよう。何か動くものがないか、よく見てくれ)
「了解なのです!」
「はいっ」
みきしおたちも体育館の中へゆっくりと入っていく。
「……」
アイオワはソナーを確認していた。
「整備士さん……」
(どうした?)
「反応があります」
アイオワが体育館の中央付近を指し示す。
「ですが……少し、おかしいです」
「おかしい?」
「反応が、体育館そのものから出ているようには感じません」
その言葉に、湊は画面を見つめる。
「……どこからです?」
「下です」
アイオワが答える。
「体育館の床の下から、反応があります」
「床の下……?」
みんなが一斉に足元を見る。
そのとき。
体育館の中央に、大きく崩れた場所があることに気づいた。
「……あそこなの」
ずいほうが指差した先。
体育館の中央付近には、床が大きく崩れ落ちた場所があった。
「かなり大きく崩れていますっ……」
よなぐにが不安そうに見る。
「これなら、人が入れるくらいの大きさがありますです」
くろしおが近づきながら言う。
「でも、下がどうなっているのか分からないわね」
てんりゅうが慎重に辺りを見回す。
(くろしお、近づきすぎるな。崩れる可能性がある)
「了解です!」
くろしおは少し距離を取る。
「ずいほう、ドローンで下を確認できるか?」
「分かったの」
水中ドローンが崩れた床へ向かってゆっくりと進んでいく。
そして、崩落した穴の中へカメラを向けた。
「……かなり深いの」
「地下へ続いているのでしょうか?」
アイオワが尋ねる。
「たぶん……そうなの」
映像には、崩れた床の下に広がる暗い空間が映っていた。
壁らしきものも見える。
どうやら、この体育館の下には、別の区画が存在しているようだった。
「こんなところに、地下があったんですね」
よなぐにが驚く。
(もともとの施設構造なのか、それとも何か別の設備なのか……)
湊は映像を見ながら考える。
その時。
ピピッ……ピピピッ……
アイオワのソナーが再び鳴った。
「反応です」
「どこから~~?」
U-ハイドラが尋ねる。
「……崩落した場所の、さらに下です」
「やっぱり、何かあるの」
ずいほうが画面を見つめる。
(ドローン、もう少しだけ下へ)
「了解なの」
ドローンが慎重に下降していく。
暗闇の中を進んでいくと、やがて何か大きなものが映った。
「……?」
ずいほうが目を細める。
「何か、あるのです?」
みきしおが尋ねる。
「……分からないの。でも、これは……」
映像の奥に、巨大な金属製の壁のようなものが見える。
長い年月によって錆びつき、海藻に覆われている。
「扉……でしょうか」
アイオワが呟く。
「そうみたいなの」
(反応は?)
「まだあります」
アイオワの声が少し低くなる。
「しかも、少しずつ強くなっています」
その瞬間。
ドン……。
体育館全体が、わずかに揺れた。
「……!」
みきしおが立ち止まる。
「今、また揺れたのです……」
「えぇ」
てんりゅうも周囲を見る。
「この地下からですね」
(みんな、動かないでくれ)
湊の声が響く。
海水の揺れが静かに収まっていく。
しかし、アイオワのソナーだけは反応を続けていた。
「整備士さん……」
(どうした?)
「何かが、こちらへ近づいています」
「……こっちに?」
よなぐにが不安そうに聞く。
「はい」
アイオワはソナーを見つめたまま答えた。
「地下から、上へ向かっています」
「……それって」
てんりゅうが言葉を失う。
ずいほうも、崩落した床の下を見つめる。
そして――。
ドンッ……!
今度は先ほどよりも大きな振動が、体育館全体へ響き渡った。
「……何かいるの」
ずいほうが、小さく呟いた。
誰も、その場から動けなかった。
海底に沈んだ体育館の地下。
そこにある巨大な扉の向こうで、確かな気配が動いていた。
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