84話 調査任務!なのです!!④
「お~~、色々浮いてる~」
U-ハイドラがそう言う。
たしかに、ハサミやテープなどの文房具、布や袋までも、海水に満たされたこの空間に浮いている。
(みんな、浮遊物に気をつけて。変なところに入れば、故障の恐れがある)
「了解なのです」
「それにしても、ほんとに学業施設なのね。部屋の中は椅子や机に、白い棒みたいなのまで浮いているわ……」
「たしかにですっ。少し、不思議……」
「昔はきっと、たくさんの人間がいたはずなの」
みんなそれぞれ、思ったことを話す。
(……少し変、か?)
「なにがです?」
アイオワが答える。
(いや、静かすぎると思ってな。それに、水中生物が見当たらない……。なにかに恐怖し消えたのか、そもそもここが生息に向かないのか)
「たしかに、なの……。これだけ海藻が生えてれば、そこにくらす魚もいていいの」
「たしかに~~」
U-ハイドラも不思議に思う。
「エネルギアでもいるのかしら」
てんりゅうがそう言う。
(たしかに、その可能性もある。みんな、警戒を怠るなよ)
「はい、なのです」
みきしおがそう言ったその時。
「みきしお! 前!!」
「え、わわっ」
ゴツンっ!
(どうした!)
「い、いえ、大丈夫なのです」
「机や椅子が詰まって、通路をふさいでいるみたいですね」
アイオワが状況を説明する。
どうやら、みきしおが激突したようだ。
「お恥ずかしいのです~……」
「まったく、前は見なさいよね」
てんりゅうが注意する。
「でも、どうしましょう。これでは先に進めません」
(エネルギアがいる可能性があるし、崩壊の恐れもある。魚雷はだめだな)
「じゃぁ~、どうする~~?」
「ですです」
「あの~、引き返して別の道を探します?」
よなぐにが提案を出す。
「それしかないでしょうか」
「お~い~~、こっちに~道があるよ~~」
U-ハイドラがいつの間にか向こうにいっていた。
「ちょっと! U-ハイドラ! 単独行動しないで!」
てんりゅうがU-ハイドラを叱る。
「ごめ~~ん~。でも~~、みつけた~~」
「まぁ、今回は許しましょう。道も見つかりましたし」
「はぁ、まぁいいわ」
(よし、そっちに進もう)
湊がそう言い、みきしおたちは方向転換し、別方向からの探索を開始した。
みきしおたちは、U-ハイドラが見つけた別の通路へ進んでいった。
「こっちの道は、さっきより広いのです」
みきしおが周囲を見回す。
「そうですね。通路の壁にも、何か表示があります」
アイオワが壁に残された案内板を見る。
海水や藻に覆われていて文字はところどころ消えているが、いくつかの文字はまだ読み取ることができた。
「教室……図書室……」
よなぐにが、書かれている文字を一つずつ確認する。
「やっぱり、ここは本当に学校だったのね」
てんりゅうがそう呟く。
「昔の人たちが、ここで勉強していたんですね……」
「そう考えると、少し不思議な感じがします」
アイオワも静かに辺りを見渡した。
廊下には、海水に揺られる掲示物の一部が残っていた。
壁には古い案内表示があり、その先にはいくつかの教室や施設の名前が並んでいる。
「……あ」
ずいほうが、ある方向を見つめた。
「どうしたの、ずいほうさん?」
「こっち……」
ずいほうが指を差す。
そこには、大きく書かれた文字が残っていた。
『体育館』
「体育館?」
くろしおが首を傾げる。
「ここが体育館につながっているみたいですね」
アイオワが案内表示を確認する。
「大きな空間があるなら、あちらの方向でしょうかっ」
(そうみたいだね。みんな、引き続き周囲を確認して)
「了解なのです!」
みきしおが返事をする。
一行は案内表示に従い、さらに奥へ進んでいく。
すると、少しずつ通路の幅が広くなっていった。
「なんだか、広くなってきましたね」
よなぐにが周囲を見る。
「体育館が近いのかもしれません」
「ずいぶん大きな場所だったのね」
てんりゅうが前方を見つめる。
そのときだった。
ピ……ピピ……
アイオワのソナーが小さな音を立てる。
「……反応があります」
湊の声がバイザーから響く。
(どのくらいだ?)
「先ほどより、はっきりしています」
アイオワは表示された反応を見つめた。
「こちらです。体育館の方向から出ています」
「やっぱり、なの……」
ずいほうも水中ドローンから送られてくる映像を確認する。
「こっちの方にも、少しずつ反応が集まってきているの」
(分かった。みんな、距離を保って進んでくれ)
「はい、なのです」
みきしおたちは警戒しながら、さらに先へ進む。
やがて通路の先に、大きな両開きの扉が現れた。
「これが~~、体育館~?」
U-ハイドラが呟く。
「入口みたいですね」
アイオワが答える。
扉の上には、かすかに『体育館』の文字が残っていた。
だが、その周囲には長い年月によってできた亀裂が走っている。
「中は、どうなっているです?」
くろしおが扉を見る。
(まだ開けるな)
湊の声が響く。
(まずはドローンで中を確認する)
「了解なの」
ずいほうが操作すると、水中ドローンがゆっくりと扉へ近づいていく。
その瞬間。
ピピピピッ――!
アイオワのソナーが、先ほどまでとは比べものにならないほど強く反応した。
「……!」
アイオワが息を呑む。
「反応が……急に強くなりました」
海底に沈んだ体育館の向こう側。
何かが、確かにそこに存在していた。
そして――。
ドン……
再び、施設全体を震わせるような小さな振動が伝わってきた。
「……今の、体育館の中から?」
てんりゅうが低い声で尋ねる。
湊は画面を見つめた。
(……みんな、最大限警戒してくれ)
潜水娘たちは無言で頷き、巨大な扉を見つめた。
その向こうに、何が待っているのか。
まだ、誰にも分からなかった。
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次回もお楽しみに




