40話 戦闘後の整備!なのです!!③
湊は第四ドック所属の潜水娘たちの艤装を整備した。
「終わったよ」
湊はみんなに呼び掛ける。
「あ! 分かったのです」
みきしおが返事をする。
「綺麗になってますです」
「はいっ」
くろしおとよなぐにが、自分たちの艤装を見てそう言う。
「前より、綺麗な気がするわ」
てんりゅうがそう言う。
「そ~だね~」
U-ハイドラは相変わらずのんびりだ。
「ありがとうなの」
ずいほうがお礼を言う。
「あぁ、でも、別に大したことしてないけどね」
「そんなことないの、整備士さんはすごいの!」
ずいほうが褒めてくれた。
「そう? ありがと」
私はずいほうの頭を優しく撫でた。
「~~~♪」
その頃、基地の奥に設けられた作戦会議室では、数人の幹部と司令官が一つのテーブルを囲んでいた。
室内は静かだった。
壁面の大型モニターには、現在までに確認されたエネルギアの出現地点が表示されている。
赤い点が、以前よりも明らかに増えていた。
「……これが、現在までのエネルギア出現状況です」
報告を担当する幹部が画面を切り替える。
「先月と比較して、出現件数は増加傾向にあります」
「さらに、先日の貨物船護衛任務では、高級リュウグウ型エネルギアまで確認されました」
室内にざわめきが起こる。
「高級個体が民間船の航路にまで現れたのか」
「はい」
幹部は頷く。
「幸い、第四ドック所属部隊が撃退しました」
「しかし……」
次の資料が表示される。
「現在確認されている個体の中には、純度の高いハイドロ・コアを取り込んだものも存在しています」
「これまでの潜水娘では、対応が難しくなる可能性があります」
司令官は腕を組んだまま、モニターを見つめていた。
「つまり、今までと同じ戦力では足りない」
「その通りです」
しばらく沈黙が続く。
やがて、一人の上層部が口を開いた。
「ならば、新しい計画を始めるべきでしょう」
司令官が視線を向ける。
「例の計画か」
「はい」
幹部が端末を操作する。
大型モニターに、一つのファイルが表示された。
【新規潜水娘開発計画】
その文字を見た瞬間、会議室の空気が変わった。
「まだ開発段階だろう」
「ですが、今こそ必要なのではありませんか?」
「既存の潜水娘とは異なる役割を持たせる」
「戦闘だけを目的としたものではありません」
別の資料が表示される。
そこには、複数の設計案が並んでいた。
「索敵」
「救難」
「特殊作業」
「そして……エネルギアへの対抗」
司令官は設計案を見つめる。
「ずいぶん大掛かりになったな」
「エネルギアの脅威が大きくなっている以上、必要なことです」
「ただし、新型を作るだけでは意味がない」
司令官が静かに言う。
「実際に運用できなければ、ただの兵器だ」
「潜水娘は、人間と共に海へ出る存在だ」
「性能だけを追い求めるつもりはない」
幹部たちは黙って司令官を見る。
「……では、どうするおつもりですか?」
司令官は少し考えた後、口を開いた。
「現場で育てる」
「現場、ですか?」
「そうだ」
司令官は資料の端に表示された第四ドックの名前を見る。
「第四ドックには、湊がいる」
「新型の運用を任せる候補としては、十分でしょう」
上層部の一人が頷く。
「確かに、あの整備士なら……」
「みきしお、てんりゅう、U-ハイドラ、くろしお、ずいほう、そしてよなぐに」
「短期間で、あれだけ性格も役割も異なる潜水娘たちをまとめています」
「ただ整備するだけの整備士ではない、ということですね」
司令官は小さく頷いた。
「だからこそ、まだ知らせるな」
「湊には?」
「まだだ……」
「プロジェクトの内容が確定していない」
「それに……」
司令官はモニターに映るエネルギアの出現地点を見つめた。
「この計画が必要になるほど、海の状況が悪化していることを知られれば、あいつは必ず自分から動こうとする」
幹部が苦笑する。
「……確かに」
「整備士という立場を忘れて、現場へ出ようとするでしょうね」
「だからこそ、時が来るまで待つ」
司令官は新規プロジェクトのファイルを閉じた。
「第五段階へ移行する」
「新型潜水娘開発計画――正式に始動させる」
大型モニターから資料が消える。
会議室には、再び静寂が戻った。
まだ湊は知らない。
第四ドックでいつものように潜水娘たちの整備を続けているその裏側で、新たな計画が動き始めたことを。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




