29話 挨拶と演習!なのです!!⑤
模擬魚雷が幾筋もの白い航跡を描きながら、海中を駆け抜ける。
(右!)
湊の指示が通信機から響く。
(みきしお!)
「はい!」
みきしおは身体をひねり、迫る模擬魚雷を紙一重で回避する。
そのまま勢いを殺さず、うずしおへ一直線に向かった。
「まだまだぁっ!」
「速いのです……!」
うずしおも負けじと加速する。
二人は互いの周囲を旋回しながら、模擬弾を撃ち合った。
一方、右側では、てんりゅうがブリュンヒルトとファフニールを相手に、一歩も引かない戦いを続けていた。
「一人で私たち二人を相手にするなんて~!」
「その余裕、いつまで続く?」
二人が同時に模擬魚雷を放つ。
しかし、その瞬間。
(今だ!)
湊の声が響いた。
(ずいほう!)
「分かったの!」
ずいほうは静かに発艦準備をする。
「第三隊、前へなの!」
数機の水中ドローンが一斉に前進し、ブリュンヒルトたちの視界を横切る。
「!?」
「ドローン!?」
攻撃ではない。
あえて目の前を横切ることで、一瞬だけ注意を逸らしたのだ。
(てんりゅう!)
「任せて!」
てんりゅうはその隙を逃さず、一気に距離を詰める。
「演習用魚雷、発射!」
模擬魚雷がブリュンヒルトの艤装へ命中した。
「きゃっ!」
ブザーが鳴る。
『ブリュンヒルト、行動不能判定』
「やられちゃったわ~……」
残るはファフニール。
「まだ終わってない!」
ファフニールは急旋回しながら、ずいほうへ照準を合わせる。
「ドローンの指揮官を止めれば!」
その瞬間だった。
「そこまで~」
U-ハイドラが静かに前へ出る。
「ここは~通さないよ~」
「輸送潜水艦!?」
「輸送だけじゃなくて~、こんなことも~できちゃうよ~」
U-ハイドラは艤装を巧みに操作し、模擬魚雷を受け流す。
その間にも、ずいほうの指揮は止まらない。
「第二隊、左へ」
「第一隊、そのまま包囲なの」
水中ドローンが半円を描きながら、ファフニールを囲んでいく。
「しまっ……!」
逃げ道を塞がれた。
そこへ、てんりゅうが現れる。
「終わりよ」
「くっ!」
模擬弾が命中した。
『ファフニール、行動不能判定』
「負けた……」
海鳥は苦笑した。
「二人も落とされるとはな」
しかし、その直後。
「きゃぁっ!」
みきしおの声が響く。
うずしおの模擬弾が命中したのだ。
『みきしお、行動不能判定』
「えへへ……やられちゃったなのです」
「ナイスファイト」
うずしおは笑みを浮かべる。
残る戦力は、うずしおとふかしお。
湊は海中マップを見つめる。
「……決めよう」
(ずいほう)
「うん、なの」
ずいほうは静かに目を閉じる。
そして、指揮を続ける。
「みんな、お願いなの」
その合図とともに、水中ドローンが一斉に散開する。
四方八方から接近する小さな機影。
「こんな数……!」
うずしおは回避を続ける。
しかし、攻撃ではない。
ドローンは進路を誘導し、少しずつうずしおを追い込んでいく。
「これが狙い!?」
(今!)
湊の声が飛ぶ。
(てんりゅう!)
「了解よ!」
てんりゅうは一直線に突撃した。
回避しようとしたうずしお。
だが、左右にはドローン。
逃げ道は一つしかない。
そこへ、てんりゅうの模擬魚雷が放たれる。
「これで決める!」
命中。
ブザーが鳴り響く。
『うずしお、行動不能判定』
残るは、防衛中のふかしおのみ。
演習用標識へ向かってきたU-ハイドラとずいほうを見たふかしおは、小さく笑った。
「もう……防ぎきれません…………」
演習判定装置が作動する。
『敵標識への到達を確認』
『演習終了』
サイレンが鳴り響き、ドックに静寂が包まれた。
海上へ浮上した潜水娘たちは、お互いの顔を見合わせる。
海鳥は湊のもとへ歩み寄り、右手を差し出した。
「完敗だ」
湊も笑ってその手を握る。
「ありがとう。いい演習だった」
海鳥はずいほうへ視線を向ける。
「水中機母艦……想像以上だった」
浮上してきたずいほうは、少し照れたように微笑む。
「みんながいたから、勝てたの」
みきしおは大きく手を挙げる。
「次はもっと強くなって勝つのです!」
うずしおも笑って頷く。
「望むところよ!」
こうして、互いに全力を尽くした初めての演習は、笑顔のうちに幕を閉じた。
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