28話 挨拶と演習!なのです!!④
『演習開始!』
合図と同時に、みきしおとてんりゅうが海へ飛び込んだ。
水しぶきが上がり、二人の姿が青い海の中へ消えていく。
反対側では、うずしお、ブリュンヒルト、ファフニールも一斉に潜航を開始した。
「ずいほう、索敵開始!」
「分かったの」
ずいほうが片手を上げる。
「水中ドローン、発進なの」
次の瞬間、艤装上部から複数の水中ドローンが次々と海中へ滑り出した。
一機。
二機。
三機。
それだけでは終わらない。
小型の機体が隊列を組み、演習海域へ広がっていく。
観覧区画にいたくろしおが目を輝かせた。
「すごいです! 一度にあんなに!」
海鳥も思わず身を乗り出す。
「本当に全部動かしてるのか……?」
湊の端末に、次々と水中映像が表示される。
複数方向から送られてくる地形。
水流。
音響反応。
そして、敵艦隊の動き。
「右側に二つ、正面に一つ……」
湊が呟く。
ずいほうが目を閉じたまま答えた。
「正面はうずしおなの。右から来ているのは、ブリュンヒルトとファフニールなの」
「もう識別できたのか?」
「できるの。みんなの音は、少しずつ違うの」
湊はすぐに通信を開く。
「みきしお、正面からうずしおが来る。てんりゅうは右へ回れ。二人来ている」
『了解なのです!』
『分かったわ!』
海中。
みきしおは靴底のプロペラを回転させ、一気に加速した。
その正面から、うずしおが迫ってくる。
「来たわね、みきしお!」
「今度こそ負けません!」
二人は互いに進路を変えず、そのまま正面から接近する。
先に動いたのは、うずしおだった。
身体をひねりながら模擬魚雷を射出する。
「これならどう!」
「見えてるのです!」
みきしおは急旋回し、魚雷をかわす。
しかし、その先にうずしおが回り込んでいた。
「甘い!」
「っ!」
みきしおは腕を交差させ、演習弾を受け止める。
衝撃に押され、身体が後ろへ流された。
『みきしお、大丈夫か!』
「大丈夫です! まだやれます!」
一方、てんりゅうは右側へ進んでいた。
ソナーには二つの反応。
「二対一か……」
その前方から、ブリュンヒルトとファフニールが左右に分かれて現れる。
「正面から来るなんて、勇気があるわね~」
「それとも、考えなし?」
てんりゅうは二人を見ながら、静かに息を吐いた。
「どちらでもないわ」
「じゃあ、何?」
「時間稼ぎよ」
直後、ブリュンヒルトたちの背後を小型水中ドローンが横切った。
「なに?」
ファフニールが振り返る。
ドローンは攻撃せず、二人の周囲を回りながら位置情報を送り続けていた。
てんりゅうが薄く笑う。
「これで、お前たちの動きは全部見えている」
海上の演習ドックで、海鳥が端末を見つめる。
「厄介だな……あのドローン」
「まだ始まったばかりだ」
湊が答える。
「ずいほう」
「分かっているの」
ずいほうは静かに両手を広げた。
「第二隊、展開するの」
さらに別の水中ドローン群が発進する。
それを見た海鳥は、楽しそうに笑った。
「面白い。なら、こっちも本気で崩しに行くぞ」
海鳥は通信機を取る。
「ファフニール、ドローンを狙え。ブリュンヒルトはてんりゅうを抑えろ。うずしおはそのまま押し切れ!」
『了解よ~!』
『任せて!』
『分かった!』
演習海域のあちこちで、模擬魚雷の航跡が交差する。
水中ドローンが散開し、潜水娘たちが急旋回する。
青と赤の標識を巡る戦いは、始まったばかりだった。
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