27話 挨拶と演習!なのです!!③
海上基地に設けられた演習ドック。
昼の陽射しが海面を白く輝かせる中、二つの艦隊がそれぞれの出撃位置に並んでいた。
湊の前には、みきしお、てんりゅう、U-ハイドラ、ずいほうの四人が立っている。
少し離れた観覧区画では、くろしおが手すりから身を乗り出していた。
「みんな、頑張ってください! です!」
「くろしお、危ないから身を乗り出しすぎるなよ」
湊が注意すると、くろしおは慌てて背筋を伸ばした。
「は、はい! です!」
向かい側のドックには、海鳥の艦隊が並んでいる。
先頭に立つのは、おやしお型潜水艦・2番艦『うずしお』。
その隣には、U-ジークフリート級潜水艦・5番艦『ブリュンヒルト』。
さらに、同級・6番艦『ファフニール』。
最後尾には、ふかしお型輸送潜水艦・1番艦『ふかしお』が控えていた。
海鳥は腕を組みながら、湊の艦隊を見渡す。
「ずいぶん変わった編成だな」
「そっちもだろ」
湊が返すと、海鳥は楽しそうに笑った。
「まあな。けど、こっちも実戦経験がある。手加減はしないぞ」
「それでいい」
みきしおが一歩前へ出る。
「私たちだって負けないのです!」
うずしおはそれを聞いて、口元に笑みを浮かべた。
「威勢はいいね……でも、どこまでついてこられる?」
「むっ……!」
「みきしお、挑発に乗るな」
てんりゅうが冷静に声をかける。
「演習が始まる前から熱くなってどうするの」
「わ、分かってるわよ!」
その横で、U-ハイドラは海鳥側の輸送潜水艦を見ていた。
「ふかしお型~……輸送能力は~……私と~近いのかな~」
ふかしおは穏やかに微笑んだ。
「た……たぶん、似ているところ……も多い……と思います……。ですが……今日は輸送ではなく、旗の防衛役……です……」
「なるほど……」
U-ハイドラは静かに頷いた。
一方、ブリュンヒルトとファフニールは、ずいほうの大型艤装を興味深そうに眺めていた。
「本当に~水中ドローンを複数運用できるの~?」
ブリュンヒルトが尋ねる。
ずいほうは少しだけ俯きながら答えた。
「できるの……たぶん、なの」
「……た、たぶん?」
ファフニールが首を傾げる。
「実戦ではまだ使っていないの?」
「この姿になってからは、今日が初めてなの」
ファフニールは驚いたように目を見開いた。
「初めての演習で投入するなんて、ずいぶん思い切るね」
湊はずいほうを見る。
「無理はさせない。危険だと判断したら、すぐに止める」
「大丈夫なの」
ずいほうはゆっくりと顔を上げた。
「湊が整備してくれたから、今度はずいほうが力を見せるの」
その言葉に、湊は小さく頷いた。
やがて、演習ドック全体に放送が流れる。
『これより、第一演習を開始します』
全員の表情が引き締まった。
『今回の演習は、旗艦防衛形式です。両艦隊はそれぞれ指定された演習標識を守りながら、相手側標識への接近を目指してください』
演習海域の中央には、青と赤の発光標識が設置されている。
湊側は青。
海鳥側は赤だ。
『演習用魚雷および模擬弾の使用を許可します。直撃判定を受けた者は、その時点で行動不能とします』
みきしおが拳を握る。
「よし……!」
てんりゅうは艤装の状態を確認する。
「てんりゅう、最初から前へ出すぎるなよ」
「分かってるって!」
「その返事が一番不安だ」
「なにそれ!」
「私はおまえたちを心配しているからな……」
U-ハイドラは青い標識のそばへ移動する。
「私~、標識の防衛を~担当する~」
「頼む」
湊は続けて、ずいほうを見る。
「ずいほうは後方から索敵。水中ドローンは無理のない数で展開してくれ」
「分かったの」
ずいほうの左右にある艤装上部が、ゆっくりと開いていく。
平らに整えられた発進面に、小型水中ドローンが並んでいた。
その様子を見た海鳥が目を細める。
「なるほど。あれが水中機母艦か」
ブリュンヒルトも興味深そうに見る。
「数が多い……」
ファフニールは腰の魚雷発射管を展開した。
「でも、数が多ければ強いとは限らないよ」
「その通りだ」
海鳥は端末を操作しながら指示を出す。
「うずしおは前衛。ブリュンヒルトとファフニールは左右から回り込め。ふかしおは標識を守れ」
「了解!」
「分かったわ」
「任せて」
「承知しました~」
両陣営の準備が整う。
『演習開始まで、五秒』
湊は通信機を握る。
「全員、落ち着いていこう」
みきしおが笑う。
「はい! なのです!」
てんりゅうが前を向く。
「いつでも行ける」
U-ハイドラは静かに標識の前へ立つ。
「こちらを守るよ~」
ずいほうは小さく息を吸った。
「水中ドローン……準備できているの」
『三』
海鳥が笑みを浮かべる。
「さて、どっちの指揮が上かな」
「決めるのは俺たちじゃない」
湊はまっすぐ前を見る。
「海の中にいる、あの子たちだ」
『二』
みきしおとてんりゅうが肩を並べる。
「先に行くよ~」
「勝手に突っ込まないで!」
「分かってる~!」
『一』
ずいほうの艤装から、小さな駆動音が響いた。
『演習開始!』
その言葉と共にスタートした
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