23話 過去と未来!なのです!!③
「動けるか?」
湊がそう言うと、ずいほうはゆっくりと立ち上がろうとした。
「……動けるの」
しかし――。
ガシャン。
元の艤装から、重い音が響いた。
「……?」
もう一度、動こうとする。
だが、艤装の一部が動きを止めた。長い年月、誰にも整備されなかった装備。金属部分には錆が広がり、推進装置は劣化している。
「……あれ」
湊はすぐに異変に気付いた。
「動けないの?」
「……少しだけ、なの」
ずいほうは自分の艤装を見る。
「昔は……もっと動けたはずなの」
湊は近づき、整備士用の端末を接続する。
「これは……」
表示された診断結果に、湊は息をのむ。基礎設計は古い。しかし、技術そのものは現在の潜水娘にも負けていない。
「すごい……」
思わず言葉が漏れる。
「こんな設計、昔に作られていたのか」
ずいほうは静かに湊を見る。
「でも、もう動けないの」
「いや」
湊は首を振った。
「動けないんじゃない」
腰周りについている工具を手に取る。
「眠っていただけだ」
ずいほうの目が少し開く。
「……?」
「君の艤装は壊れている。でも、終わってない」
湊は古い装甲を確認する。
「今の技術を使えば、修復できる」
「……直せるの?」
「ああ」
湊は頷いた。
「ただ元に戻すだけじゃない」
古い資料を見る。そこに記されていた名前。
『海中機潜水母艦計画』
「君を、本来あるべき姿にする」
ずいほうは静かに湊を見る。
「……本来の姿」
「ああ」
湊は微笑んだ。
「世界初の水中機母艦として」
長い間止まっていた少女の時間が、再び動き始める。
湊は整備を始める。
整備士『湊』はまず艤装の錆を落とし、表面処理をした。
「まずは長年の放置で劣化した部分を復旧だ」
湊は、「外装の錆除去」「腐食した金属部分の交換」「装甲表面の研磨」「海水による劣化箇所の確認」をしてから、
(見た目は古いけど、内部構造はまだ生きてる)
そう湊は心の声で言う。
「よし、次は内部機関の点検だ」
湊は汗をぬぐい、「動力炉」「電力供給システム」「制御コンピューター」「推進装置」「ソナー」「通信機器」などを一つずつ、丁寧に見た。
(電源は入るけど、一部システムが古すぎるな……これは、交換だな)
湊は工具箱の部品を使い、交換し調整する。
「よし、次は推進装置の修理だ。足を見せてくれ」
「うん、………………」
ずいほうは黙ってその様子を見ている。心なしか驚いているような表情だ。
「足部プロペラ」「艤装側の推進機」「姿勢制御装置」などを確認した湊は、
「旧型なのに推進システムの設計がすごいね……」
そう言った。
「私は、あのときの最新式で作られたなの」
「そうか、だから………………よし、艤装の展開テストだ。立てるか? ……」
「……ん、………………問題ない、なの」
ずいほうは足が震えながらも立ち上がる。
「よし、いろいろ、動かしてみてくれ」
「わかったなの……」
ずいほうの艤装が動き出す。
(……【通常・航行形態『シールド・モード』】……問題なし、……【魚雷発射形態『アタック・モード』】……問題なし……【非戦闘形態『フォールディング・モード』】……問題なし……か、……ん?)
「他の潜水娘の艤装より、上部が平べったいな」
ずいほうの艤装は潜水艦型ではあるものの、潜水艦の上の部分が半円形ではない。それはまるで、かつてあった空母の滑走路のような……。
「これは、水中機潜水母艦の証みたいなものなの。ここのへこみから水中ドローンを出して発艦するの」
「なるほど」
【水中ドローン】小型で黒色の飛行機のような形だが、羽は短く、本気を出せばジェット機の如く海中を進む。艦爆型(魚雷発射型)と艦攻型(機銃発射型)の二つがある。
「でも、潜水娘の操れる水中ドローンは多くても2機だ」
「うん、でも私は多くの水中ドローンを動かせるように……作られるはずだったなの」
「はずだった?」
「……失敗に終わったの……」
少し暗い顔をした。もしかして、それで……ここに……。
「よし、君を、整備させてくれ」
「?、……もうしたなの」
「いいから、私にまかせて」
「?………………わかったなの……」
「ついてきてくれ」
「うん」
湊はずいほうとともにある場所に向かった。
移動中……。
「入れ、……」
「失礼します」
「します」
そう、司令官に会いに来た。
「君か……!? その潜水娘は、もしかして」
「はい、格納庫にいた子です。私が整備しました」
司令官が珍しく驚いた顔をしている。
「動いたのか……」
「……あの? 頼みたいことが」
「あ、あぁ、なんだ?」
「この子を、ずいほうを改装する許可をください!」
湊は頭を下げる。
「……いや、しかし、……いや、君ならもしや…………よし、任せよう。君は信用できる人材だからな」
「ありがとうございます!」
「改装施設を使うといい。連絡をいれておく」
「はい! 行くぞ、ずいほう」
「……はい、なの」
湊とずいほうは外に出た。
「まさか、あの試作潜水娘が再び動き出すとは、驚きだ。しかし、君ならもしや……」
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