18話 工作潜水艦と任務!なのです!!②
海底施設の通路に、くろしおの細い指先が触れた。長いあいだ沈黙していた扉の制御盤は潮に侵され、配線はところどころ断線している。それでも、くろしおは手を止めなかった。
「あと少し、です……。ここさえ繋がれば、扉は開くはずです……」
湊は海上基地から、バイザー越しにその様子を見守っていた。
(くろしお、焦らなくていい。手順どおりにやれ)
「はいです!」
その直後だった。海底の暗がりから、甲殻に覆われたグソク型エネルギアが二体、ゆっくりと姿を現した。
みきしおが真っ先に前へ出た。軽やかに水を蹴り、迫る一体の進路を塞ぐ。
「こっちは私が相手だ!」
てんりゅうもすぐに反応した。鋭く身をひるがえし、もう一体の脇腹へ回り込む。
「くろしお、作業を続けて。ここは私たちが守る」
「了解です!」
U-ハイドラはくろしおの背後へ回り、盾のように立った。いつもより緊張している。しかし、確かな動きで周囲を警戒する。
「お~! 近づかせないよ~」
グソク型エネルギアの一体が、硬い脚で床を叩きながら突進してくる。みきしおはそれを受け止め、勢いを横へ逃がした。もう一体はてんりゅうの攻撃で動きを鈍らせるが、甲殻は厚く、簡単には崩れない。
「硬い……!」
(でも、足が止まれば十分だ!)
湊は基地で息をのんだ。戦闘は派手だが、あくまで主役は別にいる。くろしおは汗をにじませながらも、再び配線へ手を伸ばしていた。
「ここ……。ここを繋げば……!」
固着したボルトを外し、切れたケーブルを接続し直す。細かい作業のたびに、海流が指先を揺らす。それでも、くろしおは笑みを崩さなかった。
「工作潜水艦ですから。こういうの、得意なのです!」
その言葉に応えるように、みきしおが一体の注意を引きつける。
「今なのです、てんりゅう!」
「わかってるわ!」
二人の連携でグソク型エネルギアの動きが一瞬、鈍る。その隙を逃さず、U-ハイドラがくろしおの前へ出た。
「あと少し~?」
「はいです! ……もう少し!」
最後の接続が噛み合った。制御盤に淡い光が走る。くろしおは目を見開き、次の瞬間、嬉しそうに声を上げた。
「開いた! です!!」
重い扉が、低い音を響かせながらゆっくりと開いていく。みきしおが一体を押し返し、てんりゅうがもう一体の進路を外す。U-ハイドラがくろしおの肩に手を添えた。
「よくやりました♪ なのです」
「えへへ……」
湊は、通信越しに短く息を吐いた。
(……上出来だ、くろしお。全員、次の区画へ退避しろ)
海底施設の闇の奥へ、光が差し込む。任務はまだ終わらない。だが、この瞬間だけは、確かに扉が未来へと開いていた。
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