110話 謎の海底物体!なのです!!⑤
翌日。
海上移動基地『アーク・トリニティ』。
司令官室。
整備士『湊』とサクラとローズは、司令官に呼び出されていた。
「司令官、用、とは」
「あぁ、先日の調査任務についてだ……。本題に入る前にまず、サクラ、ローズ、初任務、ご苦労だったな」
「はい!」
「……うん……」
「そして、本題に入ろう。昨日、君たちが捜索した沈没した建造物……あれは、やはり、旧時代の跡地だ」
「やはり……」
「そして、あの研究施設を詳しく調べた結果、あそこでエネルギアやハイドロ・コアを実験に使っていたようだ……。あの黒いのはその副産物らしい。危険性はなく、薄まっているらしい」
「そうですか」
「よかった~」
サクラが安堵する。
「……はい。もう海洋生物……に……被害が出にくいのなら……。でも、綺麗にはしたい……です」
ローズもひとまずは安堵する。
「うむ。で、だ……その実験……普通ではなかったらしい」
「『普通ではなかった』ですか?」
司令官の顔が強張る。
「生物実験だ」
「え!?」
「っ!?……」
サクラが驚き、ローズは言葉を失う。
「エネルギアを作り出す、な……。ハイドロ・コアは、その過程で生まれたらしい」
「エネルギアを……作り出す……?」
湊は、司令官の言葉を繰り返す。
「あぁ。旧時代の人々は、ハイドロ・コアのエネルギーを利用するだけでは飽き足らず、それを使って生物そのものを変化させようとしていたようだ」
「そんなこと……」
サクラが呟く。
「……それで……エネルギアが……生まれた……」
ローズが小さく呟いた。
「あぁ。しかも……それが書かれていた文章は……どこの国の言語とも、当てはまらない」
「え!」
「どういう……こと?……」
「では、どうやって解読を?」
「あぁ、ハイドロ・コアのエネルギーを使った虫眼鏡で解読したらしい」
(解読できる虫眼鏡……ショップにも似たようなのがあったな)
「ねぇねぇ、気になったんだけど、私たちのコアにも使われている、ハイドロ・コアって、どこで最初に手に入れたの?」
サクラが疑問に思い、司令官に問いかける。
「あぁ、それか……昔の話だが、打ち上がったエネルギアをなんとかして解剖したら、出てきたらしい」
「……それで……?」
「あはは~……わかるよ、その気持ち」
「もっと壮大なことを想像したか? すまんな」
「い、いえ!」
「まぁ、本題に入ろう……」
司令官は、机の上に置かれた資料へ視線を落とす。
「実は、あの研究施設から見つかった資料には、いくつか気になることが書かれていた」
「気になること?」
湊が尋ねる。
「あぁ。まず、あの施設はかなり古い。少なくとも、現在のエネルギアが確認されるよりも前に作られた可能性が高い」
「それじゃあ……」
サクラが驚く。
「エネルギアが生まれる前から、あそこで研究していたってこと?」
「その可能性が高い」
「……じゃあ……あの研究施設が……エネルギアを……」
ローズが呟く。
「あぁ。だが、まだ確定ではない」
司令官は資料をめくる。
「それと、もう一つ分かったことがある」
「なんですか?」
「研究施設には、複数の研究区画があったようだ」
「複数……?」
「昨日、おまえたちが確認した場所は、そのうちの一つにすぎないらしい」
「え!?」
サクラが声を上げる。
「じゃあ、まだ他にもあるんですか?」
「そういうことだ」
「……昨日は……見つけられなかった……」
ローズが少し悔しそうに呟く。
「いや、それで十分だ。初任務だったことを考えれば、よくやってくれた」
「ありがとうございます!」
「……はい……」
二人が返事をする。
湊は資料を見る。
「それで、他の区画はどうするんです?」
「今すぐ再調査するつもりはない」
「え?」
「昨日の調査では、危険な反応は確認されなかった。だが、生物実験をしていた施設だ。安全だと断定するには情報が少なすぎる」
司令官は真剣な表情になる。
「だから、まずは今回持ち帰った資料を詳しく調べる。それから、必要なら専門の調査班を派遣する」
「なるほど……」
「私たちは、どうするんですか?」
サクラが聞く。
「いつも通り、通常任務だ」
「え~~」
「なんだ、その反応は」
「だって、もっと調べたいです!」
サクラが元気よく言う。
「……私も……気になります……」
ローズも小さく頷く。
「気持ちは分かる。だが、焦るな」
司令官は少し笑う。
「謎というものは、焦って追いかけると見落とすものだ」
「……はい」
湊も頷く。
「サクラ、ローズ。今日はゆっくり休め」
「はい♪」
「……はい……」
二人が返事をする。
司令官室を出ると、サクラが湊を見る。
「ねぇ、整備士さん」
「ん?」
「あの研究施設……絶対、まだ何かありますよね?」
「さぁな」
湊は苦笑する。
「でも、司令官が調べてくれるなら、俺たちは待つしかないだろ」
「む~~」
「……姉さま……」
ローズがサクラの服を軽く引っ張る。
「今日は……休みましょう……」
「そうだね♪」
二人は笑いながら、第四ドックへ向かって歩いていく。
湊はその後ろをついていく。
しかし――。
司令官室では、まだ一人の司令官が資料を見つめていた。
「……複数の研究区画」
資料の一部分に記された、見慣れない文字。
その下には、ひとつの図が描かれている。
それは、海底に存在する巨大な施設の全体図だった。
「……こんなものまで、海底に残っているとはな」
司令官は小さく呟く。
そして、その図の一番奥。
そこには、まだ調査されていない区画が記されていた。
「……ここは、一体何を研究していた場所なんだ……?」
静かな司令官室に、ページをめくる音だけが響いていた。
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