表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君を愛するつもりはない」からの溺愛が始まらない!と思ったら、なぜか原作以上に溺愛されています  作者: こじまき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/12

8 新ルート開拓作戦

窓の外には、優しい朝の太陽と小鳥のさえずり。


なんて穏やかな異世界の朝。


だけど私の心は混乱していた。


ちょっとずつ溜まっていったズレが、昨日の夜に原作との大きな乖離になって表れてしまった。だからこれから自分がどうなるか、まったくわからない。


溜息をつきそうになって、私は慌てて息を吸い込む。


「しっかり落ち込んだら、あとは上向くだけ…っていうじゃない」


だって、まだ追い出されてない。まだ逆転できる可能性はある。


「それによく考えてみたら、原作からズレても溺愛される系の異世界ストーリーだって多いじゃん!」


大体原作を破壊して溺愛されちゃうのはモブか悪役令嬢だけど、彼女たちにできるんだったら、正ヒロインにだってできるでしょ。


私は虎の巻のノートを開く。


「溺愛開始までにエマから働きかけるイベントは…全部終わっちゃった」


残っているのは、クライマックスを飾る「エマが誘拐され、ヴィルフリート様が血相を変えて救出しに来るイベント」だ。


しかしこれは夜会で「エマがヴィルフリート様の大切な存在」だと知れ渡ったからこそ起こるのであって、今の状態で発生するとは思えない。原作とは乖離してしまっているのだから。


ノートの《イベント4:誘拐》のページには、大きく赤でバツをつけておく。


「ここからはイベント関係なく、私なりに働きかければいいよね。私ができること、ヴィルフリート様にしてあげたいこと…」


ひとつひとつ、ノートに書き出す。


《不眠はどうにかしてあげたい。自家製ハーブティーは失敗したので、市販のものを買ってくる》


《もし戦争に行くときには、刺繍不要のお守りを作る》


《ヴィルフリート様の好きなトマト料理をつくる》


「まずはハーブティーからやってみるか」と、ハーブティーに「1」という数字をうつ。


行動あるのみ。溺愛ルートを自分でこじ開けて見せる。


そうと決めたら、じっとしていられない。


「ゾフィーさん!今日は買い物に行きたいです!」

「あらあら奥様、お元気になられて…」

「はい!カウンティタウンの目抜き通りには、いろんなお店がありますよね?ハーブやお茶のお店もありますか?」

「ええ、それはもちろん」

「見に行きたいんです!」



「エマ、おはよう。昨夜はすまなかった」


何度も鏡に向かってそう練習する。


しかし、すまなかったのは昨夜だけではない。今までずっと申し訳なかったのだから。


「実は君を暗殺者だと思っていた。幼いころから命を狙われ続けていたので、疑い深くなっていたのだ。愚かだった。純粋でか弱い君を暗殺者だと疑うなど、万死に値する」


そして彼女が「暗殺者ではありません」というときの態度を見極める。「嘘をついていない」と思えたら、彼女を抱きしめるのだ。きっとできる。


「そうだ。『愛さないと言ったことは撤回する』という話になるなら、なにか花を用意したほうがいいな」


庭師に妻の好きそうな花を花束にするよう言いつけ、メイドにリボンをかけてもらう。


「いや、花束は大袈裟だろうか…それとも足りないだろうか。今から宝石商を呼んで、エメラルドかグリーンサファイアを用意させるか…いや、彼女の瞳はもっと明るい…つまりペリドットだな」


しかし宝石でも足りないだろう。彼女が私に贈ってくれたのは、血の滲んだ努力の結晶だった。なのに金で買えるようなものしか贈ろうとしない自分に、嫌気が差す。


「呆れられるだろうか」


そうやっていつまでも悩んで、妻の部屋を訪ねる勇気がようやく湧いたのは、もう日が高くなってからだった。


けれど、妻は部屋にいなかった。


「出かけた…?」

「はい、ゾフィーさんと護衛のアレンと一緒に。カウンティタウンでお買い物をして、お茶の時間までには戻られるとおっしゃっていました」

「そうか」


正直、少し猶予ができたようでほっとした。


彼女がそのまま帰ってこないなど、思いもしなかったから――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ