表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君を愛するつもりはない」からの溺愛が始まらない!と思ったら、なぜか原作以上に溺愛されています  作者: こじまき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/8

5 清楚すぎる公爵夫人の誘惑

いよいよ、結婚披露の夜会。


身に纏うのは、予定通りクリームイエローのハイネックドレス。首元までしっかり隠れ、裾が控えめに揺れる。


これぞエマ。「清楚すぎる公爵夫人」たるエマそのものである。


「さっきの失態を挽回しなきゃ」


むしろセクシーダイナマイトとのギャップで、一気に冷徹公爵ヴィルフリート様の心を溶かせるかもしれない。


「ピンチはチャンス!」


私は鏡の前ぐいぐいと口角を押し上げ、「完璧な淑女の微笑み」を顔に貼り付けて、広間へ向かった。



私は広間で妻を待っている。


考えても仕方のない、あと数分で答えがわかる問題について悶々と考えながら。


「あの格好で来るのか…?」


布地よりも肌の露出の方が多い、破廉恥極まりないが忘れられないドレスで。


招待客の目前で私を誘惑し、私の理性を崩壊させ、評判を貶めるつもりなのだろう。


いや、それとも他の男を誘惑して私と対立させ、その男に私を襲わせる…?自分の手を汚さない、なんと狡猾な手口…!


「旦那様、お待たせいたしました。先ほどはお見苦しいところを…本当に申し訳ございません」


しおらしく頭を下げる、清楚な妻がそこにいた。


「…は?」


扇情的な深紅のドレスではない。隙間から覗く肌も、妖艶な化粧もない。


手と顔以外はほとんど隠され、化粧も素顔に少し紅を差した程度の軽さだ。


着替えて、化粧も変えたというのか。


なぜ。


「先ほどのドレスはちょっと着てみただけで…こちらのほうがやはり私らしくて落ち着きます」


いや、さっきのドレスでもよかったのに。着替えろとは言っていないのに。


そう考えている自分に気付いて、私は戦慄した。


まさかこれは扇情的な姿をほんの少しだけ見せ、すぐ「普通の姿」に戻すことによって、脳裏に焼き付いた残像をより鮮明に際立たせる作戦…!?


隠された肌を知っているからこそ、脳内で補えてしまう。


なんということだ。そしてその作戦にまんまとハマっている自分がおぞましい。


妻は顔を上げ、照れくさそうに髪を耳にかけ、伏し目がちになる。


清楚であればあるほど、裏側の淫らさが思い出される。


「精神汚染だ…汚染されている…!」


エマはふっと顔を上げた。緑の目が心配そうに私を覗き込む。


「旦那様、大丈夫ですか…?」


まだ傷が塞がっていない、彼女の細くて白い指が近づく。


香水など一切つけていない、純粋な女性の匂いが鼻につく。


間違いない。これは精神汚染だ。しかも徐々に強くなってくるタイプの。


一体いつから始まっていた?


応接室で初めて会ったときから、なのか?「リスのようで可愛い」と思ってしまったときから?


「旦那様、ご気分が悪いなら…」

「大丈夫だ」


私は反射的に彼女の手を払って、目を逸らす。


一瞬だけ彼女の泣き出しそうな顔が見えて、胸がジクリと痛んだ。


けれどこれ以上彼女と目を合わせるのは…彼女の姿を視界に収めるのは危険だ。


「お客様がお待ちだ。いくぞ」

「…はい」



公爵邸の夜会は、原作で見たとおりにとても豪華だった。


ヴィルフリート様の幼馴染である第三王子や宰相の息子、騎士団の副団長なども参加している。


女性陣ももちろん華やかで、広間はまるで花園のよう。


そしてその花園で一番控えめな花が、主役でもあるエマ。つまり私。


「あれが公爵夫人?」

「清楚で美しいが、少し控えめすぎないか?」


ヴィルフリート様はその控えめな美しさを好ましく感じ、私が他の男性に「公爵夫人」「ぜひダンスを」なんて話しかけられると、気になって寄ってきて、私を男性から引き離すはずなんだけど…


かなり距離をとられてしまっている。なぜ。


そのせいで、さっきから宰相の息子ルーカス様に絡まれ続けている。「ヴィルフリートとは貴族学園時代のクラスメイトで」とか何とか。


ヴィルフリート様についての昔話はぜひ聞きたいところなんだけど、今はそれどころじゃない。


なんで引き離しに来てくれないのか気になって仕方がない。


ハーブティーをハーブクリームしてしまったことが尾を引いているのか。それともさきほどのドレスでセクシーポーズがやはりまずかったのか。


ヴィルフリート様が私を引き離しに来てくれてから、次のイベントが起こるはずなのに…


どうしよう、もし「悪役令嬢との遭遇イベント」が起こらなかったら…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ