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「君を愛するつもりはない」からの溺愛が始まらない!と思ったら、なぜか原作以上に溺愛されています  作者: こじまき


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4/4

4 ちょっとだけ着てみようかな

結論から言うと、ハーブ作戦は失敗した。


「奥様、これはさすがに…」

「うん、だめですね…」


毒々しいハーブを煎じてお茶にしてみたものの、苦すぎてとてもヴィルフリート様に出せるようなものではなかったのだ。毒見をした私とゾフィーさんのお肌がつやつやになっただけ。


なので一応クリームに加工してもらってヴィルフリート様に差し入れはしたのだけれど…


事務的に「ありがとう」と言われただけだった。彼のお肌はもともとつるすべだから、使ってもらえているのかも不明。


「大丈夫、めげるな私!曲がりなりにもイベントはこなせてるしお礼も言われた!」


それにこれまでのジャブのようなイベントよりも、もっと大切なことがある。


「今日は清楚なドレス姿でヴィルフリート様に『やはりエマは他の女性と違う(トゥンク)』と思わせる、結婚披露の夜会イベントがあるんだから!」


そう。


原作のエマは、流行のセクシー路線とはまったくかけ離れた「清純でシンプルなドレス」で夜会に参加し、ヴィルフリート様の心を打つ。さらにエマの清楚な美しさが社交界にも知れ渡るのだ。


「ええと…確か貧乏性のエマは新しくドレスを仕立てるんじゃなく、結婚時に用意されていたものから選ぶんだよね。だからあのドレスはクローゼットにあるはず…」


私はドレスやアクセサリーや靴がきれいに並ぶ、広い広いクローゼットを見て回る。


ヴィルフリート様は「君を愛するつもりはない」と言うけれど、エマには公爵夫人としての待遇はしっかり与えている。


女嫌いもあって愛人がいるわけでもないし、暴言を投げつけるわけでもない。そういう「自分の領域に立ち入ってほしくはないが、礼儀は守る」という紳士的なところも良き。


「あった、これだ!」


薄いクリームイエローのハイネックドレス。茶色の髪に緑の目という、リスみたいなエマの可憐さを引き立てるドレスだ。まさに清楚系ヒロインの鉄板戦闘服、とでも言おうか。


「ゾフィーさん、今夜はこれにします」

「こんなにおとなしいドレスでよろしいのですか?」

「ええ、私らしいと思うので」


と、私の目がひとつのドレスに止まった。


公爵家が結婚にあたって用意してくれたドレスは数多く、さまざまなテイストが取り揃えられていて、最新流行のセクシー路線のものもある。


「こんなの着て大丈夫なの?破廉恥だって言われるレベルじゃない?」


上質な深紅のシルク。一歩動くたびに太ももががっつり覗く深いスリットに、胸元も布が足りていないようなデザイン。


「どういう構造…?こんなの前世でも着たことない…」


好奇心がむくむくと頭をもたげ、私はごくりと唾をのんだ。


「一回くらいなら…」


清楚なエマには、きっと似合わない。


だけどこの部屋の中でだけ着て楽しんで、ゾフィーさんにしか見せないんだったら、問題ないよね。


「ゾフィーさん、ちょっとこのドレスも着てみたいのですが、いいですか?」

「まあ奥様!これでしたら旦那様も”見違えた”と言われることでしょう」

「あ、でもこっちは本番で着るつもりはないですよ。似合わないでしょうし。でもちょっと好奇心というか興味というか…」

「似合わないだなんて!お化粧や御髪をいつもと変えれば、きっとお似合いですわ!ヘアメイク担当のアンナも呼んでまいりますね」

「いや、そこまでする必要は…」


ゾフィーさんとアンナさんがあっという間にセクシードレスに着替えさせてくれて、髪型もメイクもセクシーダイナマイトな悪役令嬢っぽく仕上げてくれた。


「見違えるようですわ、奥様!」

「ええ、いつも清楚な奥様がこのように妖艶になられるとは…!!」

「ゾフィーさんとアンナさんのスキルの高さですね、これは…」

「いえいえ、奥様の素材ですわ」

「いや、そんな照れるなあ。でも…ふふっ」


本当にエマじゃないみたい。原作ではこんなドレス、一度も着ていなかったもの。


「これでヴィルフリート様を悩殺…なーんてね」


鏡の前でぎゅっと胸を寄せ、脚をくねらせてセクシーなポーズをとってみたとき、ヴィルフリート様が入って来た。


「すまないが夜会の出席者が追加に…」

「いやああああああ!」


清楚なエマが爆裂スリットドレスでセクシーポーズをしているところを見られるなんて、あってはならないのに…!!


「違います旦那様…!これはその…!ちょっと着てみただけで!違うんです、本番はちゃんと清楚でシンプルな…!」


弁解しようと彼に近づくけど、怒ったような顔で「近づくな」と叫ばれる。


彼は招待客のリストだけ置いて、逃げるように部屋を出て行った。


終わった。完全に終わった。


私はしょんぼりと、清楚系ドレスに着替えさせてもらったのだった。



慌てて妻の部屋を出て、逃げるように執務室に帰る。


「何だ、あの姿は。毒殺や呪殺が効かぬと見て、ハニートラップに打って出たというのか…!?あの姿で近づき、私を戸惑わせ、その隙に…?」


脳裏に彼女の姿態が蘇る。振り払おうとしても離れない。


「違う…これは精神汚染…?視覚から侵食し、判断力を鈍らせ、公務の停滞を引き起こしてじわじわと公爵領全体の力を削いでいく狙い…!?長期戦なのか…!」


二時間後の夜会本番、また彼女があの格好で現れたら、私は理性を保てる自信がない…!

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