第9話:『官邸包囲網 ―救民の刃、闇を裂く―』
1. 静寂のクーデター
「……通信が、途絶えました」
深夜の総理官邸。神田秘書官が顔を青くして、動かなくなったスマホを放り出した。外部への電話も、ネットも、すべてが遮断されている。
官邸の周囲には、いつの間にか「特殊部隊」のような装備をした、正体不明の男たちが展開していた。
「森川幹事長ですね……。あいつ、ついに強硬手段に出たんだわ」
官邸のモニターには、森川幹事長が悠々と葉巻を燻らせる姿が映っていた(※事前に録画された映像の強制再生だ)。
「石悪くん。君の『侍ごっこ』もここまでだ。精神に異常をきたした総理が、官邸で暴れている……。我々は君を『保護』し、平和的に退陣してもらうよ」
2. 剛田SPと「門下生」の意地
「総理、ここは我々にお任せください!」
SPリーダーの剛田が、引き締まった顔で平八郎の前に立った。
第3話から始まった「地獄のスクワット」と「精神修養」を経て、官邸の護衛官たちはもはや、単なる公務員ではなかった。彼らは平八郎を「師」と仰ぐ、令和の武士へと変貌していたのだ。
「剛田よ。数に怯むな。知行合一、学んだ技を、今こそ民のために使え!」
「はっ!」
官邸の廊下で、激しい戦闘が始まった。
最新のタクティカルギアに身を包んだ森川の私兵たちに対し、剛田たちは警棒と合気道を駆使して立ち向かう。
「スクワット1000回の威力、思い知れぇぇっ!」
剛田のタックルが、防弾ベストを着たプロの兵士を壁ごと粉砕した。
3. 真剣、抜刀
平八郎は執務室の奥、石悪の先祖が飾っていたという、手入れもされず埃を被っていた「古刀」の前に立った。
「……石悪。お主の家系に、これほどの名刀があったとはな」
平八郎が鞘を払う。
一瞬で、部屋の空気が張り詰めた。
かつて大坂の地で、民を救うために振るおうとしたが、ついに果たせなかった「義の刃」。
今、令和の総理大臣の肉体を通して、その刃が再び命を宿す。
「……神田殿、下がっておれ。ここから先は、学問の領域ではない」
執務室のドアが爆破され、三人の刺客が飛び込んできた。
彼らはレーザーサイト付きのサブマシンガンを構えている。
「射殺しろ!」
放たれた弾丸。
しかし、平八郎は動かなかった。いや、動いた瞬間、すでに勝負は決していた。
キィィィィンッ!
火花が散り、弾丸が真っ二つに裂け、壁に埋まった。
「……え、弾を……斬った……?」
刺客たちが呆然とする中、平八郎は風のように踏み込んだ。
「救民の志、弾丸ごときで止まると思うな!」
4. 森川幹事長への「喝」
平八郎は峰打ちで刺客たちを昏倒させると、そのまま通信室へと突き進んだ。
そこには、自分たちを「保護」しに来たはずの森川幹事長の側近たちが、モニター越しに戦況を見て震えていた。
平八郎はカメラを睨みつけ、森川幹事長に向けて吠えた。
「森川! 聞こえておるか! お主が溜め込んだその私欲の『蔵』、私が今からぶち破りに行くぞ!」
モニター越しの森川が、わずかに狼狽した。
「……バカな。特殊部隊を相手に、刀一本で……!? 石悪、貴様、本当に何者だ……!」
「私は大塩平八郎! 悪徳役人を斬り、民を救う者なり!」
5. 官邸、解放
数分後。
剛田たちの活躍と、平八郎の圧倒的な武力により、官邸を包囲していた私兵たちは完全に制圧された。
神田が、復旧した通信を使って全国に叫ぶ。
「国民の皆さん! 総理は無事です! 森川幹事長による不当な拘束を、自力で突破されました!」
ネットは、かつてないお祭り騒ぎとなった。
『総理、マジで弾丸斬ったってよ』
『実写版るろうに剣心かよ』
『森川幹事長、終了のお知らせ』
支持率、ついに55%。
日本中の民が、一人の「サムライ」の背中に、未来を託し始めていた。
だが、平八郎は折れた木刀のように、肩を落として呟いた。
「……神田殿。……この服、また破けてしまった。……石悪のタンスには、もう替えがないのだが……」




