第5話:『贅肉は心の緩みなり! ―サムライ総理、刺客を撃つ―』
1. 劇的ビフォーアフター
「……神田、お主、腰が抜けておるぞ」
深夜の総理執務室。
平八郎は、鏡の前で驚愕している秘書官・神田を見下ろしていた。
神田が驚くのも、無理はなかった。
鏡の中にいたのは、つい一週間前までボタンが弾けそうだった、三段腹の石悪総理ではなかった。
そこには、石悪の「だらしない顔」はそのままだが、引き締まった首筋、広く、厚い胸板、そして腹筋が割れ始めた、鋼の肉体を、ピッチリとしたTシャツに包んだ男が立っていたからだ。
「……そ、総理。何ですか、その体……? 一週間で十キロ痩せたどころの話じゃ……」
「フッ、贅肉は心の緩みなり! 私の魂が、この腐り果てた肉体を、内側から鍛え直したのだ! 知行合一! 心身を鍛えぬ政治家など、民の前に立つ資格なし!」
平八郎は、バチバチと音を立てながら、Tシャツを引きちぎった。
その下からは、現役のプロレスラーも驚くような、完璧な肉体が現れる。
顔は石悪、体はサムライ。そのシュールな絵面に、神田はそっと目を逸らした。
2. 官邸地獄道場
「お主ら! まだまだだ! 声が小さいッ!!」
翌朝、総理官邸の中庭は、地獄の様相を呈していた。
「ひぃ、ひぃぃぃ……」
「総理、もう、無理です……。私は、心臓が悪いんです……」
スーツ姿で汗だくになり、泣き叫んでいるのは、財務大臣、外務大臣、厚生労働大臣……。
日本の政治を牛耳る、そうそうたるメンバーだ。彼らは今、平八郎の号令のもと、スクワットを強いられていた。
「無理ではない! 知して行わぬは、知らぬと同じ! 民を救う政策を『検討』する体力があるなら、まず己の体力を鍛えろ! できない奴は、今すぐクビにする! 民を救わぬ大臣など、拙者が、物理的に切り捨てる!」
平八郎は木刀(3話のあと神田が買ってくれた高級な樫の木刀)を地面に叩きつけ、竹刀で地面を叩くような轟音を響かせた。
大臣たちは、恐怖と疲労で泡を吹きながら、それでもスクワットを続けた。
日本の政治が、かつてないほど「熱く」なり始めた瞬間だった。
3. 長老の逆襲、暗殺の夜
「あの、石悪の小僧め……。我らの利権(補助金)を潰すとは、不届き千万!」
政界を裏で操るフィクサー、自問党の長老・森川は、豪華な高級クラブで、平八郎の「暴走」を苦々しく睨んでいた。
「ただの異常者だと思っていたが、あの国会での気迫、そしてあの大臣たちへの特訓……。放置しておけば、我らの『蔵』が、本当に破られる……」
森川長老は、グラスを叩きつけ、影に向かって命じた。
「……やれ。石悪を、いや、あの『異常者』を、この世から消し去れ。……異常死として、な」
影の中から、冷酷な瞳をした男が現れ、無言で頷いた。
その夜。
官邸の廊下を、一筋の影が、音もなく移動していた。
それは、古流武術の達人であり、数々の「異常死」を演出してきた暗殺者だった。
彼は、最新のスタンガン、特殊警棒、そして睡眠薬を隠し持ち、平八郎の執務室へと忍び寄る。
4. 知行合一 vs 暗殺術
執務室のドアが、静かに開いた。
平八郎は、月光の下、椅子に座って木刀を磨いていた。
「……来たか、忍びよ」
平八郎は、顔を上げずに呟いた。
暗殺者は、ハッとして立ち止まる。気配を完全に消していたはずだ。
「……お前、気づいていたのか」
「お主の殺気は、大坂の役人よりも、冷たく、そして稚拙だ。民を救わぬ刃など、私の心には、一歩も届かぬわ!」
平八郎は、木刀を構え、椅子から立ち上がった。
引き締まった肉体が、月光を浴びて青白く光る。
暗殺者は、スタンガンを手に、襲いかかった。
バチバチという音を立てながら、平八郎の首筋を狙う。
しかし、平八郎は、動かなかった。
暗殺者のスタンガンが、平八郎の体に触れた瞬間――。
ズザァァァッ!!!
平八郎は、暗殺者の腕を掴み、そのまま、古流柔術(合気)の技で、彼を天井へと投げ飛ばした。
「……ぐ、あぁッ!!」
暗殺者は、天井に激突し、床に叩きつけられた。
スタンガンが、暗殺者の体から転がり落ちる。
「……お、おのれ、石悪……! お前、何者だ……!」
「私は、大塩平八郎! 天に代わりて、不義を討つ者なり!」
平八郎は、床に倒れた暗殺者の首筋に、木刀を突きつけた。
その眼光は、暗殺者さえも恐怖で凍りつかせる、修羅の瞳だった。
「……剛田! SPを呼べ! 忍びを、捕縛せよ!」
「はッ、総理! 剛田、参上いたしました!」
剛田SPが、駆けつけ、暗殺者を捕縛した。
5. 支持率の嵐と外交の予感
翌朝。
日本のスマホには、またしても、前代未聞のニュースが流れていた。
『サムライ総理、ガチ暗殺を撃退! 木刀一本で暗殺者を天井へ!』
『官邸に地獄の道場出現! 大臣たちが涙のスクワット!』
支持率、1.2%から、奇跡の2.5%へ。
「……おのれ、平八郎……! 暗殺者さえも撃退するとは……! あの体、あの気迫……、本当に、大塩平八郎の魂が、憑依しているというのか……!」
森川長老は、ニュースを見て、戦慄した。
そして、平八郎は、執務室で、神田からスマホを受け取った。
「……総理。森川長老の次は、世界です。大国『アメリカ』の大統領が、来日します」
「アメリカ……? 異国の王か。……フッ、面白い。大坂の民を救えなかった私の義、令和の世で、世界に見せてやるわ!」
大塩平八郎、ついに、国内の利権をぶち壊し、世界の舞台へ!
恥をかかない外交、マナー講師との対決……、次回、爆笑の外交編、開幕!




