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212.ヒトの未来を切り拓く者たち

小説第4巻昨日発売されましたが大好評のようです。読者のみなさまに深くお礼申し上げます。ペコリ(o_ _)o))

212.ヒトの未来を切りひら者たち(ヒトビト)




(前回の続きです)


≪神話(マザーグース)創成≫(・リベリオン)


静かに告げるその声は全てを飲み込む影が発する異音の中で、まるで澄んだ鈴の音のごとく、全員の耳に届いた。


「いくら先生の力で、みんなの能力を向上させても無駄ですよ!」


ルギが叫ぶ。


しかし、


「このスキルは、能力の向上なんて、一切しないぞ?」


「……は?」


俺のあっけらかんとした答えに、唖然としたルギの声が響く。


「ど、どこまでも馬鹿にして!」


激昂するが、そうじゃないと俺は微笑みを絶やさない。


神話(マザーグース)創成(・リベリオン)


邪神との戦いでも使ったこのスキルは、決して強いスキルではないのだ。


なぜならば、通常は死にスキルに過ぎないから。


『星の命運をかけたような聖戦』


の際にしか発動しないスキルなのだ。その上、その効力はと言えば、


「仲間全員の絆を高め、星を命運をかける戦士として戦うことができる」


というただそれだけなのだ。


ゆえに、


「血迷いましたか! このまま飲み込んで終わりですよ、先生! 永遠に僕の中でまどろんでっ……!」


彼の声が響く。しかし、俺はゆっくりと口を開く。


「人」


「獣」


「エルフ」


「ドラゴン」


「そして、この戦いのために協力してくれた様々な人々(ヒトビト)


そう。


「これだけの絆があれば、神ごときに負けるはずがない。出来ないことなどない。超えられない壁などない。どんな困難も超えられる」


たとえ、


「もう一度、邪神が襲来しても、今度こそ俺たちの力で撃退できる」


「⁉」


「そうは思わないか、ルギ?」


バリバリと神殿内部を咀嚼するように轟音をたてながら迫る巨大な影を前に、俺は落ち着き払った様子で言った。


「そっ……!」


ルギは叫ぶ。


「そんなものは圧倒的な力の前には無力です! それをいま証明してあげます!」


「ならば」


俺は賢者の杖を構える。


「そうしてみるがいい。亜種霊長破壊神。行くぞ、ルギ。地獄の窯の準備は出来ているか?」


『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンン!!!!』


俺が言葉を発するのと同時に、立っていた場所が根こそぎ影にのまれて消失する。




「は、ははは! やっぱり口ほどにもっ……!」


「どこを見ている?」


「なっ!? どうして僕の背後に!?」


「あたしの斥候スキル≪ステルス≫を忘れたのかよ!! あんなに教室で自慢してやったのに!!」


「フィネですか! 気配を誤魔化したんですね。なんて古典的なっ……! ですが!」


ブワリ! とすぐに影が追いついてくる。


フィネと俺の両方へ襲い掛かってくるが、


「甘いのじゃ! 砂糖みたいに!」


「ええ、蜂蜜のように」


影が俺たちを捕らえようという瞬間に、やはり気配をけしていたゲシュペントドラゴンの二人が、俺たちを救い出す。


「くっ、ちょこまかと! 力では圧倒的なのに!」


「油断大敵よの!」


『ガギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンン!!!!!』


「ぐっ!?」


聖獣の姿に戻っていたフェンリルが、不意をついてルギに突進すると同時に、その鋭利な牙で噛みつく。


無論、ルギの放つ影がフェンリルを襲うが、


「忘れたかえ? 我は地獄の熱さには少しは耐性がある。我があぎとがそなたをかみ砕く方が早そうであるな?」


「ちい!」


力は圧倒的に上のルギだが、だからこそ後退する。


仕切り直せば勝利することはたやすいからだ。


しかし、大きく後退したその場所へ、


「≪聖弓装備≫付与」


「え?」


俺の言葉に、ルギは理解ができなかったのだろう。


聖弓ミストルテインは、3つの聖具を合体させて生み出される第4聖具。俺とラッカライ、そしてビビアから聖剣は既に譲り受けていたのだ。


だが、その理解を待つほど、星の命運を決める戦いはのんびりしたものではない。


「放て! ソラ! エルフいちの弓の名手よ!!!」


「任せてください! きついの行きますよ! ルギ!」


ソラが叫ぶ。


彼女には何ら強化スキルはかけていない。ただ、弓装備のみの権限だけを与えたのだ。


「着地のタイミング! 防御は間に合いませんよ、ルギ! 喰らいなさい! 聖弓ミストルテイン!!!!!」


「く、ぐうううううううううううううううううううううううううううううううううう!??!?!?!」


後退した瞬間を狙われたルギは、とっさに幾重もの影の盾を形成し、聖弓ミストルテインを防ごうとする。


「はぁ! はぁ! はぁ! なんでっ……」


影でミストルテインをなんとか凌ぎながら、ルギは信じられないとばかりに叫ぶ。


「おかしいじゃないですか! 僕の方が間違いなく圧倒的に強いのに! それなのに一方的に押されているなんて!」


本当なら! とルギは続ける。


「もうとっくに勝負はついてるはずなのに! どうしてなんだ! 神なのにどうしてヒトごときを倒せない」


もだえるように言った。


そこに、


「戻れ、ミストルテイン」


俺は声を上げる。


同時に、聖弓ミストルテインは俺の手元へと戻った。


「はぁ、はぁ、はぁ。次こそはっ……!」


「何度やっても同じだ、ルギ」


「ふざけないでください! そんなはずがないでしょう! 僕の方が強いのに! 何より!」


彼はしぼりだすように言った。


「先生は強化スキルさえまともに使っていない!」


だが、俺はその言葉を聞いて、思わず笑ってしまった。


「ははは、何だそんなことを疑問に思っていたのか。当たり前のことじゃないか」


「あ、当たり前?」


ルギの怪訝な表情に俺は淡々と答えを言った。


「様々な種族、様々な人々《ヒトビト》が協力しているんだ。超えられないハードルなんてないさ。どんな困難も、これだけ色々な奴らが揃えば、そりゃ解決できる。特に今回はな」


「今回は?」


疑問符を浮かべるルギに俺は改めて言った。


「クラスメイトを助けるために奮闘しているんだ。そりゃ、クラス一丸にもなる。世界の行く末などよりも、よほど大事なことだ。気づいているか、ルギ? みんな、お前を助けるためにやってきたんだぞ? みんなお前を敵を前にしたような時の顔をしているか?」


「!?」


俺の言葉に、彼は気づいたようだった。


そう。


これは確かに『星の行く末』をめぐる神々の戦い。


『神とヒト』の関係を巡る神話の一コマ。


だが、そんなことはどうでもいいのだ。


今を生きる俺たちにとってこれは、


「仲の悪かったいろんな種族のクラスメイトたちが神様に逆らってでも友達を取り返すだけの話だ」


その言葉に、俺の仲間たちは深く頷いたのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「仲の悪かったいろんな種族のクラスメイトたちが神様に逆らってでも友達を取り返すだけの話だ」 ……一体何言ってるんだ? そもそもそのクラスメイトが日常でルギをちゃんと友達として、 加え…
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