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211.人とヒト

211.人とヒト




(前回の続きです)




「ゲームセット、ですね。先生?」


「そ、そんな……」


亜種霊長破壊神ルギ。


彼のその圧倒的な力に、生徒たちは茫然とした声を上げるしかなかったのであった。


しかし、


「危なかったですね!」


「先生、大丈夫でした?」


音速を超えるスピードで俺を背に乗せて、覆いかぶさる影から逃したのは、キュールネーであった。


ドラゴンの姿になり飛翔している。それは人智の到達できない凄まじいスピードだ。


「もちろん、大丈夫だ。というか、お前たちが助けてくれるだろうと分かっていたしな」


「どれだけ楽観的なんですか!」


「そうですわ! こちらは心臓が縮む思いでしたわ! もうほんの一瞬遅れていましたら、影にのまれていましたのよ!?」


「だが、そうはならなかっただろう?」


俺は背にのりながら言う。


彼女の背中にはエルフのソラものっていて、彼女の風魔法によって、キュールネーの飛行速度を飛躍的に向上させていた。


「エルフとドラゴンでなければ出来ないことだな」


「「たまたまうまくいっただけでしょう!」」


二人に怒られてしまう。


「それにラッカライ先生がっ……!」


彼女たちは悔しそうに言うが、


「そっちも安心しろ。ほら、見てみろ」


「「へ? あっ!?」」


彼女たちがラッカライが影に飲まれた地点を見下ろす。


そこにはフェンリルが獣の姿となって、影の中へ頭をつっこんでいた。


そして、


「熱いのう。まるで地獄のようではないか」


「フェ、フェンリルお姉様! す、すみません!」


ドロリとヘドロのような粘液をしたたらせながら、フェンリルが影から頭を引き抜いた。


「フェンリルも地獄の番犬の異名を持つ聖獣だ。異界には耐性がある」


「す、すごいですわ。姫様だって右腕を一瞬で失いましたのに……」


「何を言うのじゃ! もう回復しとるっちゅーのじゃ!」


「えっ!?」


見れば、コレットの右腕が回復して動くようになっている。


「す、すごいどうやって」


「どうやってって、お前……」


俺は当然のように言った。


「何のために斥候職がいるんだ?」


「あっ!?」


忘れていたとばかりに声を上げる。


そう、フィネはダンジョンの罠を解除したり、マッピングをしたりと様々な役割を担う斥候職だが、そのうちの一つに『回復』があるのだ。


「どうだあたしのハイポーションは! ……まぁ、譲ってくれたのはギルドの錬金術師のドワーフだけどな!」


フィネがドヤ顔で言った。


しかし、ルギは嘲笑するように呟く。


「しぶといですね。まるで虫のよう。小さすぎるとつぶすのにも、手間がかかりますもんね」


だが、彼は気づいていないようだ。


「ルギ。虫ではない。ヒトだ」


「おや、癇に障りましたか、先生?」


ルギはやはり嗤うが、俺は微笑みながら、


「そうじゃないさ。お前が今のやりとりで気づいていないようだから、教えてやったまでだ」


「?」


彼は首を傾げる。


「本当に、何を言っているのか、分かりませんね、先生。ですが、戯言はそこまでにしてください。どうせ、これで終わりなんですから」


ルギはそう言って表情を消してから、


影の海に、(フィエット・)飲まれて、(マザーグース)消えろ(・ライム)


空間をすべて塗りつぶすかのような、真っ黒な影が、濁流のごとく俺たち全員に襲い掛かったのだった。


しかし、


「やはり、分かっていないようだな、ルギ!」


俺はキュールネーの背から飛び降りるのと同時に、スキルを詠唱する。


≪神話(マザーグース)創成≫(・リベリオン)


静かに告げるその声は全てを飲み込む影が発する異音の中で、まるで澄んだ鈴の音のごとく、全員の耳に届いた。

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